日常的に使われる筆記具の代表格である「ボールペン」。手帳にメモしたり記名をしたり…様々なシーンで使う分、「振袖にボールペンの汚れが付いた!」といったトラブルも多いようです。

着物にボールペンの汚れが付いたら、どのような対処が正解なのでしょう?今回は振袖に付いたボールペン汚れの応急処置や着物のシミ抜き方法等、大切な着物をキレイにするコツをご紹介していきます。

着物のボールペン汚れ、応急処置は「品番チェック」!?

外出先で振袖にボールペンの先端が触れて、インクの汚れが!…こんなトラブルが起きると、「とにかく早く汚れを取りたい」と考える人が多いはず。でも着物に付いたボールペン汚れの場合、残念ながら一般的な応急処置は一切できないんです。

ボールペン汚れに「水」「拭く」は絶対にNG

ボールペンのインクは吸着力が強く、乾いたティッシュ等では吸い取りきれません。またボールペンのインクは「水」だけではまったく分解できないばかりか、インクの染料が水滴に乗って広がることも。誤った応急処置で、振袖のシミが拡大しやすいんです。

【ボールペン汚れの応急処置・NG例】

・乾いたティッシュやハンカチでこする→×
・水で濡らして拭く→×
・おしぼりで拭く→×

着物のボールペン汚れが付いた箇所は、外出先ではできるだけ触らないことが基本。ただ「ペンが壊れてインクが多量にこぼれた!」といった場合にだけは、ティッシュペーパーでその部分を軽く抑え、インクを吸い取っておきます。

ボールペンの種類・品番をチェックしましょう

外出先で着物にボールペンの汚れを付けてしまったら、その後に正しい対処をするために「ボールペンの種類」をチェックすることが大切。自分の筆記具なら「どのペンを使ったか」を覚えておくだけでもOK。外出先で借りたもの等の場合には、その場で以下の情報をメモしておきます。

【ボールペンのチェックポイント】

・メーカー
・商品名
・品番:替芯型の場合は替芯の品番も
・油性インクか水性インクか:明記がある場合
・ゲルインクボールペンかどうか:明記がある場合

ボールペンは「水性」?「油性」?「ゲルインク」?

振袖等の着物についたボールペン汚れを自分でシミ抜きできるかどうかは、ボールペンの「インクの種類」によって変わってきます。ボールペンの商品名や品番等から、インクの種類を調べてみましょう。

【インクの種類でわかるシミ抜き対処法】

・油性ボールペンの場合→インクの着色剤が溶剤に溶ける「染料」なので、少量のシミ・新しいシミであればご家庭でシミ抜き対処ができる場合があります。
・水性ボールペンの場合→インクの着色剤は溶剤に溶けない「顔料」である可能性が高いです。家庭にあるものではシミが分解できないので、ご家庭ではシミ抜きができません。
・ゲルインクボールペンの場合→インクの着色剤は溶剤に溶けない「顔料」です。ご家庭ではシミ抜きをすることができません。

※油性ボールペンでも、「にじみ・裏写りしにくい」といった特性をもたせた特殊インクの場合、自宅でのシミ抜きがうまくできない場合があります。

ボールペンの種類がわからない場合は?

「振袖を着た時に使ったボールペン、どんな種類だったかわからない…」という場合には、無理に自宅でシミ抜きを行うのはNG。万一インクが顔料系だった場合、無理なシミ抜きで汚れが広がる可能性が高いです。早めに専門店に相談しましょう。

着物のボールペン汚れを「アルコール」でシミ抜き!

着物に付いたシミが「油性ボールペン」によるものである場合、インクの色素成分は「アルコール」で分解できます。ここではアルコールの一種である「エタノール」を使ったシミ抜き方法をご紹介しましょう。

エタノールとは何?売っている場所は?

「エタノール」(エチルアルコール)とは、デンプン等を発酵させたり、エチレンを科学合成して作った成分です。お酒にも含まれる成分なので「酒精」とも呼ばれます。揮発性が高く、空気中に蒸発しやすいのが特徴です。

エタノールは通常、消毒用・医療用として使われることが多いですが、ご家庭の掃除やシミ抜き等にも用いられます。エタノールは薬局・ドラッグストア等の消毒用品コーナー等で購入可能です。

ボールペン汚れのシミ抜き方法

【準備するもの】

・エタノール
・綿棒
・タオル3枚~4枚(汚れても良いもの)
・ゴム手袋もしくはビニール手袋
・洗濯用洗剤(液体・中性タイプ)
・洗面器
・きもの専用ハンガー

※必ず注意点をすべてチェックした上で作業を始めましょう。

【着物のシミ抜き手順】

1)着物を広げて、裏側に乾いたタオルをあてておきます。
2)綿棒にエタノールを染み込ませて、ボールペンのシミがある部分をトントンと軽く叩きます。
3)汚れが綿棒に移ったら、綿棒を新しいものに取り替えます。常にキレイな面が着物の生地にあたるようにします。
4)汚れが取れたら、洗面器に水を張って洗剤を少量たらし、20倍~30倍に薄めた溶液を作ります。
5)洗面器に作った溶液に別のタオルを浸して、固く絞ります。
6)絞ったタオルでシミがあった箇所をトントンと叩きます。
7)水に浸して固く絞ったタオルでさらに軽く叩いて、洗剤の成分を取ります。
8)中性の液体洗剤を使用して、着物全体を手洗いして仕上げます。
9)着物専用のハンガーに着物をかけて、形を整えて乾かします。

【シミ抜きの注意点】

※アルコールの使用後には、原則として水洗いによる仕上げが必要です。正絹(シルク)等の水洗いができない素材の場合には、このシミ抜き方法は使用できません。
※振袖・着物の染料や素材によっては、エタノールによる変色や褪色、色抜けが起きることがあります。必ず裏面等の目立たない箇所で、変色が起きないかどうかの事前テストを行いましょう。
※シミのある箇所をゴシゴシ強くこする、ドンドンと強く叩くのは絶対にNGです。生地の毛羽立ちや色抜け等が起きる原因になります。
※1~2度エタノールを付けてもボールペンのインクが溶解しない場合は、すぐに作業を中止して専門店に相談しましょう。
※刺繍や金箔のある箇所にはエタノールは使用しないでください。変質の原因になります。

取れないボールペン汚れは専門店で「シミ抜き」を

振袖に付いた水性ボールペンやゲルインクボールペンのシミは、前述のとおり自分ではシミ抜きすることができません。またボールペンの汚れが以下のような状態の場合にも、自宅では汚れがなかなか取り切れず、着物を傷めてしまう可能性が高くなります。

【落ちにくいボールペンシミの例】

・シミが付いてから時間が経っている
・インクのシミの箇所が多い(いくつもシミが付いている)
・シミが大きい、長い(線を引くように汚れが付いている)

上記のような場合には、専門店に依頼をした方が無難です。またクリーニング専門店に依頼をする際には、以下の点に注意しましょう。

「着物丸洗い」ではボールペン汚れは落ちない?

一般的な振袖・着物のクリーニングというと、「着物丸洗い」を選ぶ人が多いもの。でも「着物丸洗い」では、ボールペンの汚れはなかなか落としきれません。

ボールペンのインクは「字を書く(色をつける)」ために作られていますから、ほんの少量のインクの中にも多量の色素成分(染料・顔料)が含まれています。さらに「顔料(がんりょう)」は岩石の粒子を原料としているため、水にも油にも溶けません。

そのため、石油溶剤を使ったドライクリーニングである「着物丸洗い」だけではボールペンの汚れを分解することが難しいのです。振袖・着物のボールペン汚れを落としたい場合には、別途「シミ抜き」を追加して依頼するようにしましょう。

おわりに

振袖等の着物に付いたボールペン等のインク汚れは、数あるシミの中でもかなり手強い汚れです。「小さなシミだから」と放置しておくと、専門店でも落ちにくいシミとなってしまうことも。シミが付いたらできるだけ早く対処をすることが大切ですよ。