着物のお手入れはしっかり出来ていますか?
振袖などの着物のお手入れ、中でもアフターケアは重要です。
お手入れの有無や内容で、着物が長持ちするかどうかが大きく変わることに。

そこで、着物のお手入れの正しい方法5つのステップを学んで、大切な着物や振袖はきれいにしてから保管しましょう。

振袖・着物を着た後には「陰干し」をしましょう

振袖・着物のお手入れの基本は「陰干し(かげぼし)」です!陰干しとは、「陰」という名のとおり、直射日光等が挿し込まないところで着物等の衣類を干すこと。「干すだけ?」と思うかもしれませんが、実はとても重要な工程なんです。

一度着用した振袖等の着物の繊維の中には、汗等の水分による湿気がたくさん含まれています。これらは着物に繁殖しやすい「カビ菌」や「虫」の大好物!干さずにすぐに着物を畳んでしまうと、カビや虫害等のトラブルに遭いやすくなるのです。

着用後には「陰干し」をきちんと行って水分を飛ばす--着物のお手入れは、まずここから始めましょう。

「陰干し」のお手入れ手順

1)着物をかける場所を決めます。屋外の場合も屋内の場合も、直射日光が当たらないことが第一。また屋内の場合には、窓を開けて換気をします。
2)きもの専用のハンガーに着物をかけて、形を整えます。
3)3時間~半日程度は空気にあてて、湿気を飛ばします。(雨の日の着用後等には丸一日程度干します)

【注意点】

※室内の湿度が高すぎる場合は、エアコン・扇風機等を使って除湿してください。
※屋外に干す場合は太陽の動きで日光が当たらないよう、着物を時々動かしましょう。直射日光に当たると、短時間でも着物が褪色(色あせ)や変色を起こすことがあります。

「ブラシ」でホコリを落としましょう

陰干しを十分に行ったら、今度は「ブラシ」で着物についた細かなホコリを落としていきましょう。
屋外での着用で付いたホコリや排気ガス等の微粒子をそのままにしておくと、着物を傷める大きな原因になります。虫食いの原因になる「虫」を払うことも大切です。

きもの用の「和装ブラシ」「着物ブラシ」を準備

洋服の場合だと、ホコリ取りとしてテープ式の「コロコロ」や、ホコリを吸着する繊維タイプの「エチケットブラシ」を使う人も多いもの。でも残念ながら、これらの洋服用ホコリ取りは着物のお手入れには向いていません。

礼装用の「振袖」や「留袖」「訪問着」といった着物は、ほとんどが正絹(しょうけん)と呼ばれる繊細なシルク生地で作られています。これらの着物は摩擦等の刺激に弱く、洋服用のお手入れでは毛羽立ち(けばだち)ができてしまうこともあるんです。

以下のような条件を満たす、和装専用のきものブラシを準備しましょう。

【きもの用ブラシの選び方】

1)豚毛・馬毛等の獣毛でできていること
2)毛質がやわらかいこと
3)「シルク対応」であること
4)和装専用と明記されていること

ブラシを使った振袖・着物のお手入れ方法

1)きもの用ハンガーに着物をかけて形を整えます。
2)着物の下側には新聞紙等の大きめの紙を敷いておきます。
3)衿元から肩にかけて、布目に沿ってブラシを一方向に動かします。
4)肩→袖(そで)→身頃(みごろ)の順にブラシを動かしていきます。
5)裾(すそ)はブラシを横方向(ただし一方向)に動かして、砂汚れ等を落とします。
6)裾の裏側も、同様にブラシを横方向に動かしながら汚れを払い落とします。
7)裾の縫い目の部分にもブラシをかけます。
8)下に敷いた新聞紙は丸めて廃棄します。

【ブラシを使う時の注意点】

※ほこりを外に出せるように、ブラシを持つ手に軽くスナップをきかせて払い出すのがコツです。
※ブラシを両方向にゴシゴシ動かしたり、強くこするのは厳禁です。
※ブラシによっては、金箔部分・刺繍部分・レース地等には使用できないことがあります。取扱説明書をよく確認しましょう。

ブラシが手に入らない時には?

「和装ブラシが手元に無い」「今から買うのだと、お手入れに間に合わない」…そんな時には、ブラシを「タオル」で代用してもOK。ただしタオルの場合には、以下のようなものを必ず使いましょう。

【タオルで代用する場合】

1)白もしくは薄い色のタオルを使う
2)事前に何度か洗濯をして、パイルの抜けを防ぐ
3)できるだけ柔らかい品質の製品を使う
4)使い古しの固くなったパイルのものは避ける

汗をかいた時には着物の「汗抜き」を

着物の着用中で汗をかいた場合には、陰干しだけでは水分を飛ばしきれないことが多いです。残った汗の成分が「汗ジミ」となってしまこともあります。こんな時には「汗抜き(あせぬき)」で着物のお手入れをして、汗の成分を取りましょう。

汗抜きのお手入れ方法

1)着物を広げておきます。
2)別のタオルを水に浸して、固く絞ります。
3)汗をかいた部分を2)のタオルで軽く叩いて、汗の成分をタオルに移します。
4)十分に汚れを取ったら、乾いたタオルで叩き、水分を取ります。
5)長めに陰干しをして、含ませた水分を飛ばします。

【汗抜きの注意点】

※タオルで着物の生地をゴシゴシとこすらないように注意しましょう。
※金箔や刺繍のある部分には汗抜きを行わないでください。
※触った時に濡れたように感じるほど汗を吸い込んでいる場合は、自宅での汗抜きでは不十分となる可能性が高いです。早めに専門店に相談しましょう。

着物の「シミ・汚れのチェック」も大切

陰干しやブラシ等で着物のお手入れをしている間には、着物全体の汚れをていねいにチェックしましょう。「汚していないはず」と思っていても、意外なところに汚れが付いていることがあります。

【着物の汚れやすいポイント】

・衿(えり)、衿元:ファンデーション汚れが付きやすい箇所です。
・袖(そで)、袖口:手洗い時の水のハネ等が飛びやすい箇所です。袖の裏側もよく見ておきます。
・前身頃(まえみごろ)・胸元:正面側には、食事のハネがよく飛びます。
・裾(すそ)、裾周り:泥ハネが飛びやすい箇所です。

陰干し中・ブラシ中に汚れを見つけた場合には、忘れないようにシミのある箇所をメモしておきます。またシミの原因を思い出せる場合には、合わせてメモをしておきましょう。

シミを発見!着物の「シミ抜き」は自分でできる?

着物・振袖に付いたシミは、原因によって対処法が異なります。汚れの原因ごとのシミ抜き方法等のについては当サイトでも詳しくご紹介していますので、あわせて参考にしてみてください。

なお以下のような場合、自分でシミ抜きをするのはかなり難しいところです。

【自分で処理できないシミとは】

・シミが大きい(直径2~3センチ以上ある)
・シミの原因がわからない
・いつ付いたかわからない古いシミである
・着物が正絹(シルク)でできている
・金箔・刺繍・レース等の特殊加工のある場所にシミがある

上記のようなシミの場合には、ひとまず着物のその他の部分に汚れが広がらないように、キッチンペーパー等を重ねておきます。そして早めに専門店に「シミ抜き」を依頼しましょう。

しばらく着ない着物・振袖はクリーニングへ

陰干しやホコリ取り・汗抜きをていねいに行って、シミも特についていなかった…この場合には、着物のお手入れは以上でOKです。きちんと畳んでしまっておけば、シーズン中には再度キレイな状態で着物を着ることができるでしょう。

ただし「しばらく着用の予定が無い」という場合には、着物を一度クリーニングに出した方が安心です。基本的な着物のお手入れだけでは、繊維の中に残る皮脂等を取り去れません。半年~1年以上の長期保管の間に、カビの繁殖や変色等が起こる恐れも高いのです。

特に「カビの繁殖」は、着物の大きな問題。現代の日本のマンションや一戸建ては昔の家屋に比べて密閉性が高く、それだけカビが生えやすいのです。保管中の通気に気を使うことも大切ですが、「カビの元」を取り除いておくことも重要になります。

【クリーニングに着物を出した方が良い場合】

1)着用中に汗をたっぷりかいた場合
2)着物にシミ・汚れが付いているのが見つかった場合
3)シーズン中にはもう着物を着る予定が無い場合

上記の3つにあたる場合には、振袖・着物はクリーニングに出しましょう。

おわりに

振袖等の着物のお手入れ方法はいかがでしたか?初めての時にはお手入れが難しく感じられるかもしれませんが、一度慣れてしまえば意外とカンタンです。お手入れをこまめに行なっておけば、シーズン中に何度も着物のおしゃれを楽しめますよ。