「成人式ではじめて振袖を着るのが楽しみ!」
「アンティーク着物を着てみたい」
着物ブーム到来!とも言われる昨今、着物に初チャレンジする人はどんどん増えているようです。
でも「初めての着物、失敗しないか不安…」という人も多いのではないでしょうか?

確かに私達が毎日着ている洋服と「着物」では、意外と様々な違いがあるもの。
準備するもの、動き方や作法、お手入れの方法…
ほんの少しのポイントに気を配るだけで、着物で過ごす一日は快適で楽しいものになるんですよ。
今回は初めて着物を着る時に注意したいポイントをまとめてみました。

着物用のブラや下着の準備はOK?

振袖を買う時には、中に着る襦袢(じゅばん)や着付け用の小物類はセットで揃えるのが主流。
またバッグや草履・髪飾り等のコーディネートは、早くから考える女性がほとんどです。
そのため直前になって小物が揃わない!というトラブルは意外と少ないと言われています。

ところが一番下に着るアンダーウエアである「ショーツとブラジャー」は、かなり見落とされがち。
いつもと同じ下着で着付けに行って大失敗!というケース、意外と多いのだそうです。
当日になって慌てないように、下着の準備もしておきましょう。

着物向けショーツは浅履きタイプ

振袖等の着物を着る時ショーツは「和服専用」ではなく、普段と同じ洋服用のもので大丈夫です。
ただし、以下のようなものは避けます。

【着物の時に履くショーツのNG例】
・穿き込みの深いショーツ
ウエスト近くまであるタイプの下着は、トイレでおろしにくいです。
腰紐の部分に届くような深さのある下着を脱ぎ履きすると、着崩れの原因にもなります。

・レースやフリル等が目立つもの
着物は薄手のタイトスカートのようなもの。凹凸があるショーツは外に響くことがあります。

【着物のときに履くショーツのOK例】
・ローライズのショーツ
腰骨の下程度までの浅履きタイプが理想的です。
・シームレスタイプのショーツ
縫い目の無いシームレスやノンラインタイプのショーツは、下着の線が出にくく安心です。

ブラはスポーツタイプか着物ブラ

着物の時には、普段付けているワイヤー入りのブラジャーは使えません。
洋服向けのカップ入りインナー(ブラキャミ)も避けた方が無難です。
これらの下着を使うと帯の部分にワイヤーやカップが当たり、着物を着ている間ずっと痛い思いをする可能性も。
また洋服向けのブラは胸を強調するので、着物姿だと太って見えやすいのです。

【スレンダーさんはスポーツブラでOK】
スレンダーな人なら、着物の下は洋服向けのスポーツブラでもOK。
カップがほとんど入らない、ソフトなものを選びます。、

振袖等のしっかりした着物なら、カップ無しのキャミソールだけでも大丈夫ですよ。
着物上から肌襦袢(はだじゅばん)や長襦袢(ながじゅばん)等を重ねて着ていくので「ノーブラだ」とバレる心配はありません。

【グラマーさんは和装ブラを】
洋服の時にはCカップ以上のブラジャーを使っている…という人は、和装用のブラジャーが理想的です。
和装用のブラは胸の形をすんなりと整え、着物姿を美しく見せてくれます。

また和装ブラをつけると、着物の襟元が着崩れをしにくいというメリットも。
振袖や訪問着の時だけなく、夏の浴衣にも使えますから持っておいてソンはありません!

雨や雪…着物の水濡れ対策は?

振袖等の着物を着る時には、できたら雲ひとつ無く晴れて欲しいもの。
でも残念ながら、成人式や結婚式といった予定のある日が必ず晴れるとは限りません。

会場に着いた頃には雨でビショ濡れ…これではせっかくの着物姿も台無しになってしまいます。
また振袖等の正絹(しょうけん・シルク100%)の着物や帯は、雨や雪による水濡れにとても弱いんです。
万一の雨濡れ対策も、早めに準備しておきましょう。

傘は大きめのものを

女性用の長傘のサイズは、一般的に「親骨55cm~65cm」となっています。
着物の時には、親骨65センチ(使用時の直径110センチ程度)のものを準備しましょう。
特に振袖の場合は「帯」のボリューム感があるので、背中がしっかり隠れる大きさが理想的です。

足袋カバーか替えの足袋を

着物の時に履く「草履(ぞうり)」は、靴のようには足元を守ってくれません。
特に雨の汚れが目立ちやすいのが「足袋(たび)」です。
足袋の上に履く「足袋カバー」か、替えの足袋を用意しておきましょう。
トイレ等でササッと取り替えれば、キレイな足元をキープできます。

「雨コート」があると理想的

雨の日の着物での移動は、本来はタクシーや自家用車だけにするのが理想的。
でもどうしても外を歩く時間がありそう…
こんな場合には「雨コート」を用意しておきませんか?

「雨コート」とは、着物用のレインコートのこと。
振袖タイプの雨コートもあり、振袖の長い袖もスッポリと雨から守ってくれます。
雨コートの価格は、オシャレで本格的なものだと10,000円~30,000円前後です。
ナイロンのシンプルなものなら、2,000円程度のリーズナブルな製品もあります。

振袖を着付けてもらってお出かけ…でも歩きだしたら歩きにくい!
初めての着物経験では、多くの女性が「上手に歩けない」と感じる傾向があります。
これは洋服の時と着物の時では、適切な歩き方が違うため。
着物向けの「キレイな歩き方」を事前に知っておけば安心です。

歩幅は30センチ以下!

洋服の時の平均的な歩幅(一歩の長さ)は、スカートを履いた女性の場合で50センチ程度となっています。
ジーンズ等の場合だと、歩幅がもっと広い女性も居ます。
でも着物の場合、キレイに見える歩幅は「20センチ~30センチ」なんです。

振袖等の着物を着る時には、歩幅は30センチ以下が目標。
ひとまず日常的に歩いている時の「半分」の歩幅を目安にしてみましょう。

着物の歩き方は「内股歩き」が基本

洋服の時の歩き方では、つま先がまっすぐ前に向いているのが「美の基準」とされています。
モデルさんのウォーキングでも、膝(ひざ)やつま先は正面を向いているのが基本です。
また普段の生活ではつま先が外側を向いている「がに股気味」の人が多いと言われています。

でも着物の時には、「がに股」も「まっすぐ歩き」もNG!
膝もつま先も「内側」に向けた「内股歩き(うちまた歩き)」がベストなんです。

歩幅小さめ・内股歩きを意識すると、着物の裾捌き(すそさばき)もラクになります。
ゆっくりと内股で歩くことで、しとやかな和服美人にも見えますよ。

着物向けの座り方で着崩れを防止

着物を着た時には、座り方にも注意したいもの。
いつも通りの座り方をしていると、着物が着崩れしやすいのです。
また知らないうちに帯が潰れたり、袖(そで)が汚れてしまうことも…。
イスの時・お座敷に座る時、それぞれの座り方を知っておきましょう。

【着物でイスに座る時の座り方】
1)左手で着物お両方の袖(そで)の袂(たもと)を持ちます。
2)右手で裾をおさえながら、浅く腰掛けます。
3)椅子の前側1/2程度にお尻の位置を安定させます。
4)両方の袖は、重ねて膝の上に置きます。

【ザブトンや畳に座る時の座り方】
1)着物の膝の上あたりを軽くつまんで、裾(すそ)を少し持ち上げます。
2)右手で裾を軽く抑えながら、両膝をつきます。
3)着物の合わせを整えながら正座します。
4)袖は左右に流すか、長い場合には膝の上に畳みます。

中でもイスに座る時には、背もたれに背中がつかないことが大切。
特に振袖の時には帯の結び方が大きいので、「浅く座る」を意識して背中をピンと伸ばしましょう!

飲食の時はハンカチで着物をカバー

成人式の後のお祝いの席や、お友達の結婚式の披露宴、お正月のデート…
振袖等の着物を着る時には、お食事をするシーンも多いものです。

でも食事の時にできやすい「食べこぼし」や「お酒のハネ」は、着物の大敵!
特に振袖等の正絹(シルク)でできた着物は、自宅でシミを取るのがかなり難しいです。
シミを付けてから「しまった!」と慌てるより、ハネの予防をキチンとしましょう。

食べこぼしやハネ予防には、直径50センチ前後の大判のハンカチが便利です。
レストランで大きなナフキンが用意してある場合には、それを使ってもかまいません。

ハンカチは膝の上だけに置くよりも、帯の上にかかるように身につけた方が安心。
「着物の生地で滑って落ちてしまう」という場合には、帯や帯締め等に軽く挟んでもOKです。
着物の色に合わせた和柄ハンカチを用意しておくと、見た目にもオシャレ。
大判ハンカチは様々な場面で活躍しますから、2枚程度はバッグにしのばせておくのが理想的です。

食事の時には「袖」にも注意!

食事の時にもうひとつ気をつけたいのが、「袖(そで)」のトラブルです。
着物と洋服の違いと言えば、袖(そで)の長さ。
特に成人式の時に着る振袖では、袖の長さは1メートル近くもあります。

このボリュームのある着物の袖で、「テーブルの奥の皿を取ろう」等と手を伸ばすと…
袖がテーブルの上のお皿やグラスを引っ掛けて、大変なことに!
この手の大惨事、実は披露宴会場等の着物の方が多い食事会では珍しくないのだとか。
困ったトラブルが起きないように、以下の2つのポイントを意識しておきます。

片手で袂を抑えましょう

少しでも手を伸ばしたい時には、必ず反対側の手で袖の袂(たもと)を抑えます。
右手を伸ばす時には左手を添えて抑え、左手を伸ばす時には右手で抑えてください。
軽く袖を抑えてあげると、腕がニョキッと出ることもありません。
こまめに袖を抑えることで、見た目にも優雅さが生まれますよ。

肘より先は手を伸ばさない

いくら片手を添えても、ピーンと遠くに手を伸ばしたら袖を抑えきれません。
基本的には、肘がテーブルの上に乗るほど手を伸ばすのはNGです。
「肘まで伸ばさないと手が届かなそう…」という時には、店員さんや会場のスタッフ、周囲の人をどんどん頼りましょう。

着物のお出かけ後は「陰干し」が大切

着物でのお出かけが終わって帰宅して、帯をほどいて…
楽しかったイベント後の後片付けは、ちょっと面倒に感じる人も多いのではないでしょうか?
でも、振袖等の着物は着た後のお手入れがとても大切!
正しいお手入れをしないと、一度着ただけで着物がダメになることもあるんです。

【着物を着た後はどうする?】
・着物脱いだままで畳まず、丸めて置いておく
・ザッと畳んで置いておく
・脱いだらすぐにキレイに畳んで、しまう

上記の「着物の後片付け」、実はどれも不正解。
着物は一日着用しただけでも、多くの汗等の水分を吸い込んでいます。
すぐに着物を畳んでしまうと、皮脂等を含んだ水分が繊維の中に残ることに…。
すると保管をしている間に雑菌が繁殖し、カビや変色等の元になってしまうのです。

着物の着用後のお手入れでは、まず水分をしっかり飛ばすことが大切。
そのためには、着物の「陰干し(虫干し)」をするのが正解ということになります。

【着物の陰干しの方法】
1)着物を「きものハンガー(着物専門ハンガー)」にかけて、形を整えます。
2)直射日光の当たらない外か、室内に干します。
3)室内の場合は窓を開けて、よく換気します。
4)湿度により半日~一日程度干します。

※着物の日焼けを防ぐため、室内でも日光の当たらない場所を選んでください。
※梅雨時等で室内の湿度が高い場合には、エアコン・扇風機を使いましょう。

着物の陰干しをしている間には、着物に汚れが付いていないかもしっかり確認しましょう。
特に着物の襟(えり)・裾(すそ)や裏側、帯の正面側に当たる部分等は汚れやすい場所。
雨による泥ハネや水の輪ジミ、食べ物・飲み物のシミがないか、汗ジミになっていないかを細かくチェックします。

汚れた着物・しばらく着ない振袖はクリーニング

着物に汚れが付いているのを見つけた場合には、早めのシミ抜きが必要。
また「次にいつ着るかわからない…」というほど長く着物を保管する時にも、着物をキチンと洗っておいた方が安心です。

ご家庭で着物の洗濯やシミ抜きができるかどうかは、着物の素材や染色方法・シミの原因によっても変わってきます。

【ご家庭で洗濯ができる着物の例】
・ウォッシャブルウール
・木綿着物の一種
・ポリエステル着物の一種
・東レ「シルック」の着物 等

上記のような「洗濯表示で水洗い表示がある着物」なら、自宅で手洗いするのもOK。
特にシミの種類がジュース等の水溶性のものなら、家庭で汚れを落とすこともできるでしょう。

【ご家庭で洗濯できない着物の例】
・正絹(シルク)でできた着物
・刺繍が入っている着物
・天然素材での染色が行われている着物
・金箔・銀箔等の特殊加工がある着物 等

なお振袖や留袖・訪問着等、フォーマル向けの着物の多くは正絹(シルク製)となっています。
とても繊細な繊維で、水洗いをすると縮んでしまうため、ご家庭での洗濯はできません。

・着物が洗えない素材でできている
・着物の素材がわからない
・汚れの原因がわからない
・油分の多いシミをつけた
・雨・水による輪ジミがある
・インク等のガンコなシミがある
・フォーマル着物を長期保管したい

上記のような場合には、クリーニング店にお手入れをお願いしてみましょう。

おわりに

初めて着物・振袖を着る時の注意ポイントはいかがでしたか?
歩き方や座り方等のお作法は、初めのうちは「難しい」と感じられるかもしれません。
でも少し続けていくだけでも、意外と体が慣れていくもの。
着物に合った仕草や動き方が、あなたを何倍にも優雅に見せてくれることでしょう。

また着物のお手入れをキチンとしておけば、美しい着物でのお出かけをこれから何度も楽しめます!
着物独特のポイントをしっかり抑えて、着物のお洒落を楽しんでみてくださいね。