振袖に付いたコーヒーのシミは、かなりガンコでやっかいなシミになりがちです。Tシャツ等の洋服に付いた場合にはすぐにサッと洗えば落とせることも多いですが、振袖についたコーヒーのシミは正しいシミ抜き方法で、早めに着物の汚れを取りましょう!今回は振袖等の着物に付いたコーヒーやカフェラテ等のシミの応急処置法やシミ抜き方法を解説していきます。

着物に付いたコーヒーのシミはハンカチで応急処置!

披露宴の食事の席や成人式の集まり等で、コーヒーを着物にこぼしてしまった…こんな時には、気持ちが焦ってとにかく着物を拭いてしまいがち。でも応急処置ではできるだけ落ち着いて、「汚れを吸い取る」と「汚れを落とす」の工程を分けましょう。

コーヒーという液体型のシミは、ていねいに吸い取ることで汚れの多くを取り去れます。またコーヒーのシミは原則としては水にとける水溶性。そのため、少量の水を含ませると色素による汚れも分解しやすくなるのです。ハンカチやタオルを使って、振袖・着物の応急処置をしてみましょう。

応急処置の方法と注意点

【用意するもの】

・ハンカチかタオル(汚れても良いもの):3枚以上
・ティッシュペーパー:できるだけたくさん

【シミ抜きの手順】

1)ティッシュペーパーで優しく着物にシミがある部分を抑えて、コーヒーの水分を吸い取ります。ペーパーは何度も替えること。絶対にこすらず、軽く抑えるだけにしましょう。
2)乾いたハンカチかタオルをシミにあてて、トントンと軽く叩き、シミの水分をさらに吸い取ります。
3)ハンカチかタオルを水で濡らして固く絞り、シミ部分を軽く叩いて汚れをタオルに移します。
4)コーヒーの色素がほとんど目立たなくなったら、別の乾いたタオルでシミ部分を叩き、3)で着物に吸わせた余分な水分を取ります。

【注意点】

※レストラン等の「おしぼり」や「ウエットティッシュ」は使わないでください。これらに含まれる洗浄液成分やアルコールによって、着物に二次的なシミができる可能性があります。
※ティッシュペーパーやハンカチでゴシゴシと強くこするのはNGです!振袖等の着物の生地が毛羽立ち、元に戻らなくなることがあります。
※濡れタオルは「水」で作りましょう。温かいお湯・ぬるま湯の使用はNGです。ミルク等の成分が凝固し取れなくなることがあります。

コーヒーのシミ対処は応急処置だけではNG!

上記の応急処置で「コーヒーのシミが目立たなくなったから」と言って、着物のシミ抜き処理をこれだけで終わらせるのは絶対にNG!繊維に残った成分が後から変色したり、カビの原因にもなります。必ず帰宅後にその後のシミ抜き処理を行うか、専門店に依頼をしましょう。

コーヒーのシミ抜き方法は2ステップ!

振袖等の着物に付いたコーヒーのシミは、前述のとおり原則としては「水溶性」。そのため色素の汚れは水には溶けやすいのですが…実はコーヒーは、意外と多くの「油」も含んでいます。

【コーヒーに含まれる油分】

1)ミルク類の脂肪分
コーヒーにミルクを入れている場合、このミルクの成分(乳脂肪分)は水だけではなかなか落ちません。カフェオレ・カフェラテ等、牛乳が多量に入っているコーヒーのシミも同様です。

2)コーヒー自体が持つ油脂分
コーヒーに油が浮かんでいるのを見たことがある人も多いのではないでしょうか?あの油は、コーヒー豆の種子自体が持っている油(コーヒーオイル)です。そのためブラックコーヒーのシミにも、多少の油は含まれています。

つまり振袖等の着物についたコーヒーのシミをキレイに落とすには、「油分を落とすシミ抜き」と「水溶性の色素を落とすシミ抜き」の2ステップが必要ということになります。

ステップ1:「ベンジン」でミルクとコーヒーの油脂を分解

油の汚れを分解するために、溶剤である「ベンジン(揮発油)」を使います。

【準備するもの】

・ベンジン:クリーニング用のもの)
・ガーゼ:薄い白タオルや柔らかに布でも代用可能
・白か薄色のタオル:2~3枚(汚れても良いもの)
・マスク
・作業用ゴム手袋
・着物用のハンガー

※作業を始める前に、必ず「作業の注意点」をチェックしましょう。

【シミ抜きの作業の手順】

1)振袖・着物を広げて、コーヒーのシミがある部分の裏側にタオルをあてておきます。
2)ガーゼにベンジンを染み込ませます。
3)汚れのある部分を2)のガーゼで軽くトントンと叩き、汚れを移し取ります。
4)常にガーゼのキレイな面が布地にあたるように、ガーゼを動かしていきます。
5)色素が完全に取れなくてもOKです。ある程度汚れが目立たなくなったら、新しいガーゼにベンジンかアルコールを含ませ、濡れた部分と濡れていない部分の境目部分をよく叩き、輪郭(りんかく)をぼかします。
6)着物用ハンガーに振袖・着物をかけて、一度よく乾かします。

【作業の注意点】

・ベンジンは、着物を変色・色落ち・褪色させることがあります。必ず裏面等の目立たない場所に付けて事前にテストをしましょう。
・ベンジンを含ませた布でシミを強く叩く・こするのは厳禁です。生地の色が抜ける原因になります。
・着物のコーヒーのシミがある程度取れたら、輪郭(りんかく)をぼかす作業をていねいに行いましょう。ぼかさずに乾かすと「輪ジミ」ができることがあります。
・空気中に蒸発したベンジンの成分を吸い込むと危険です。作業中はかならず窓を明けるか換気扇を回し、よく換気をしましょう。
・ベンジン・アルコールは引火性です。作業中には調理器具(コンロ等)・ストーブ・湯沸かし器・ライター等は一切使わないでください。火事や爆発を招く恐れがあります。

ステップ2:残ったコーヒー色素を「水」で落とす

コーヒーの色素汚れはベンジンでは溶かしきれないことがあります。振袖等の着物に残ってしまったコーヒーのシミは、中性洗剤で対処しましょう。

【準備するもの】

・水
・タオル3枚以上(汚れても良いもの)
・綿棒(シミが小さい場合)
・洗面器等の容器
・きもの専用ハンガー

※作業に入る前に必ず注意点をよく読みましょう。

【着物のシミ抜きの手順】

1)着物を広げ、シミがある部分の裏側にタオルを敷いておきます。
2)別のタオルを水に浸して、固く絞ります。
3)絞ったタオルでシミの部分を軽くトントンと叩き、汚れを下のタオルに移していきます。シミが小さい場合には、綿棒で行います。水を多く含めすぎないようにしましょう。
4)水だけで色が落ちない場合、中性洗剤を加えます。洗面器に水を張り、中性洗剤を少々垂らして、洗剤を20倍~30倍以上に薄めます。
5)再度タオルを浸してよく絞り、シミ部分を軽く叩いていきます。
6)シミが取れたら別のタオルを水に浸して固く絞り、さらにシミ部分を叩いて洗剤の成分を吸い取ります。
7)乾いたタオルでさらに布地をポンポンと叩き、水分を吸い取ります。
8)きもの専用ハンガーに着物をかけ、半日~1日以上干してよく乾かします。

【作業の注意点】

・着物の生地・染色方法によっては、水を使うことで色落ちや変色が起きるケースがあります。必ず着物の裏側等の目立たない部分を使い、事前に色落ちテストを行いましょう。
・作業にはお湯・ぬるま湯を使用しないでください。シミに残っている脂肪分が凝固する恐れがあります。
・振袖等に使われる正絹(シルク素材)は、水分を多量に含むと縮む性質を持っています。「シミが落ちにくいから」とたくさん水を含ませたり濡らすのは絶対にやめましょう。
・生地を強くこすると毛羽立ちの原因になります。ごく軽く叩きましょう。
・金箔・銀箔・刺繍等がある部分にはシミ抜きができません。

コーヒーのシミが取りにくい時は早めにクリーニングへ

コーヒーは「コーヒー染め」という天然染めの染色剤に使われるほど、強い色素を持つのが特徴。そのため、上記のような「振袖のシミ抜き」を行っても、自分ではコーヒーのシミが取りきれないケースも考えられます。特に以下のような場合は色素が繊維にくっついており、自宅での対処が難しい可能性が高いです。

【着物のコーヒーのシミが取りにくい例】

・シミの範囲が大きい(直径3センチ以上ある)
・シミが付いてから時間が経っている(古いシミになっている)
・応急処置を終わらせてからシミ抜きを行うまでに時間が経過している
・コーヒー色のシミが完全に乾いている
・ベンジンでのシミ抜きをしておらず、油分のシミ(テカリ)が残っている 等

コーヒーのシミが上記のような状態だったり、自宅でのシミ抜きを行う時間が取れそうにない場合には、早めにクリーニング専門店に相談することをおすすめします。

おわりに

振袖・着物に付いたコーヒーのシミ抜き方法はいかがでしたか?コーヒーのシミは、通常の着物丸洗い(ドライクリーニング)だけでは落とせないことが多いほどのガンコな汚れです。クリーニング店に依頼をするときには、きちんとした職人が在籍し、メニューに「シミ抜き」があるお店を選びましょう。