着物でのトイレの行き方を知っていますか?とくに初めての着物体験が振袖の場合、着物でのトイレの行き方は覚えておくことが必須!トイレ後の着崩れの直し方も覚えておけば、キレイな振袖姿を長時間キープすることができます。

そこで今回は着物でのトイレの行き方や利用したいお役立ちグッズ、着崩れ対策などを5つのポイントにまとめて紹介します。

クリップ必須!着物トイレ用の便利グッズを準備

振袖でのトイレに失敗しないために、まずは3つの便利なアイテムを準備しておきましょう。これらのグッズがあるのと無いのとでは、「着物でトイレ」のラクさがまったく変わってきます。

きものクリップor大型クリップ(3個~4個以上)

着物でトイレに行く時に絶対に必要なのが、袖(そで)や裾(すそ)をまとめて止める「クリップ」です。着物の生地を傷めない作りの「着物専用クリップ」も販売されているんですよ。「振袖の生地にクリップの跡をつけたくない!」という人は、この着物専用クリップを用意するのが理想的です。

でも「わざわざ専用クリップを買うのは面倒…」という人も多いはず。そんな時は、以下のようなクリップでも代用できます。

【代用できるクリップ例】

・大型のペーパークリップ
・洗濯バサミ

洗濯ハサミならどのご家庭にもありますから、カンタンに用意できますね。着物でのトイレ用にこれから洗濯バサミやペーパークリップを用意する場合には、できるだけ挟み方が柔らかいものを選びましょう。

また以下のようなクリップは、着物でのトイレ用にはあまり向いていません。

【代用できないクリップ例】

・小さな銀色のペーパークリップ
・髪用のクリップ(ヘアクリップ、ダッカールクリップ等)

小型ペーパークリップや髪クリップは挟む面積が小さく、滑りの良い着物の生地をまとめきれないことがあります。万一トイレの途中でクリップが外れたら大変です!100円均一ショップのものでも良いので、大型クリップ等を準備しましょう。

ローライズのショーツor和装用ショーツ

ウエストまでゴムが来るタイプのショーツだと、下着の上げ下ろしのために着物をおヘソのあたりまでまくらなくてはなりません。着付けた腰紐がズレて、トイレ後に着物が着崩れをしやすくなります。

着崩れを防ぐためには、穿き込みが浅い「ローライズのショーツ」を準備しましょう。腰骨程度にゴムが来るもので、ノンラインのボクサータイプかビキニタイプがおすすめです。

「それでも着崩れが不安…」という人は、和装専用のショーツを用意するのも手。クロッチの部分が股割れになっているので、着物をまくっただけでトイレを済ませることができます。

大判のハンカチorバンダナ

トイレや手を洗う時には、あごを引いて下を向くことが多いもの。そのため、フェイスラインのファンデーションが着物や半襟(はんえり)に付きやすいです。ファンデーションは一度付いてしまうと、応急処置ではほとんど落とすことができません。

着物・振袖の襟汚れを防ぐために、ハンカチやバンダナを準備しましょう。首にクルリと巻いて使える直径50センチ以上の大きめサイズが便利!ハンカチは手拭き用・シミ取り対策用等に2枚以上は用意しておくと良いですよ。

振袖・着物でのトイレの行き方・仕方をマスター

着物・振袖姿の時には、トイレは以下のように行います。

1)襟元にハンカチを巻く
ハンカチかバンダナを三角に畳んだものを襟元に巻き、フェイスラインを保護します。この段階では、トイレの便器のフタは閉めたままにしておきます。

2)クリップを用意する
クリップを胸元か帯に一度全部挟んで、いつでも付けやすいように準備します。

3)袖をクリップでまとめる
袖(そで)の袂(たもと・袖の下側の端のこと)を持って、帯の部分でクリップに挟んで止めます。両袖を合わせて、中央で一つにまとめてもOK。もしくは片袖ずつを帯に止めます。振袖のように長い袖の場合には、三つ折り程度に折ってまとめましょう。

4)裾を分けて持つ
着物の裾(すそ)の部分を、自分から見て左側(上前)→右側(下前)の順に一枚ずつめくって、左右の手に分けて持ちます。上から順に「振袖(着物)の左右」→「長襦袢(ながじゅばん)の左右」→「裾よけ(すそよけ)の左右」という順番です。

5)筒状にめくってクリップで止める
両手の裾を持ち上げ、着物を筒状に裏返すようにめくります。体の前で左側(上前)・右側(下前)をそれぞれ帯(もしくは胸元)の部分でクリップではさみ、止めておきましょう。

6)さらに着物をめくって腕で挟む
次の行程で便器に腰かけるので、フタを開けておきます。裾をさらに両手で裏返すように腰のあたりまでめくり、両腕の脇に挟みます。

7)腰掛けて下着をおろす
便器に浅く腰掛けて、両脇を動かさないように固定したまま下着を下ろします。位置が固定できたら、用を足します。

8)フタを締めてから洗浄
用を足したら便器のフタを締めて、水を流します。フタを開けたままだと水ハネが起きる恐れがあるので、必ずフタは事前に閉めてください。

9)裾を元に戻す
クリップで止めておいた裾を外して、両手に持ち替えます。先程の反対で、「裾よけ」→「長襦袢」→「振袖(着物)」の順番に裾を下ろします。

10)手を洗う
袖と襟元のハンカチはそのままにして個室を出て、手を洗います。手を洗う際にも水ハネが起きやすいので、不安な場合には袖をさらに後ろ側にクリップでまとめましょう。袖のクリップや襟元のハンカチは、次の「3.」の項目で紹介する「着崩れ」を直す際に外します。

振袖+袴の場合のトイレの行き方は?

卒業式等に着る「袴(はかま)」の場合、トイレはどのように行けば良いのでしょうか?女性だと、袴はすべて脱がないとトイレに行けなそうに見えますよね。

ところが実は女性が穿く現在の袴は、ほとんどが「行灯袴(あんどんはかま)」という足の仕切りが無い形。つまりロングスカート・マキシスカートと形としては同じなので、袴単体のトイレの行き方は意外とカンタンなんです。

振袖+袴の場合でも、トイレの仕方は「振袖・着物のトイレの行き方」とほぼ同じ方法となります。着物の裾を分けて持つ前に、袴の裾を持ち上げてクリップで止めておけば大丈夫です。

なお袴の生地は少し重いので、他の着物と一緒にまとめるとズリ落ちてくることがあります。袴は袴だけで別のクリップで止めた方が安定するので、クリップを全部で6個位持っておくと安心です。

トイレ後も大切!着物・振袖の着崩れをチェック

洋服の時であれば、トイレ後にはメイクの崩れを直すだけ。でも着物の場合には、メイクだけでなく着物の「着崩れ」も直します。

着物の衿元の着崩れを直す

しばらく着ていると、どうしても歪みやすいのが衿元(えりもと)です。人から見た時、アルファベットの「y」の形がキレイに見えるように形を整えましょう。

1)鏡の前に立ちます。
2)左手を身八つ口(みやつくち・袖の根本の開口部)に入れます。
3)着物の下前(自分の体の右側の部分)を軽く引っ張って、衿の形を整えます。
4)左手で上前(自分の体の左側の部分)の衿を整えつつ、右手で衿とつながる「おはしょり」の部分を引いて調整します。

裾のたるみを直す

座ったり立ったりしていると、帯の下の「おはしょり」が少しずつゆるんで裾(すそ)やお尻の部分がたるみます。「おはしょり」を引っ張って、裾を調整しましょう。

1)帯のタレ部分を上げて、クリップで固定します。
2)おはしょりの中に両手を入れて、腰紐(こしひも)の上側の部分を持ち、上にほんの少し引き上げます。
3)鏡を見ながら裾の状態を確認し、もう一度おはしょりを引いて長さを調整します。
4)おはしょりの形を下に向けて整え直します。
5)クリップを外して、帯を元に戻します。

帯の位置ズレを調整する

動いているうちに、帯は徐々に下に向かって下がりやすくなります。特に振袖の場合は帯結びに重さがあるので、帯がズレがち。最初の位置を覚えておいて、上に引き戻します。

1)袖はまとめてクリップで止めておきます。
2)両手をできるだけ後ろに回し、お腹に力を入れて両手を帯の下に入れます。
3)両腕で帯を上に向かって強く持ち上げます。
4)両手を前に回して、帯の下に手を入れて帯を引き上げます。
5)帯のゆるみが起きている場合は、後ろの帯結びの下に薄いタオルを挟んで調整します。

「事前準備」で振袖でのトイレも安心!

着物・振袖でのトイレの行き方は、慣れてしまえば意外とカンタンなもの。でも初めての着物でトイレに行く時には、ちょっと手間取る人も多いです。当日になって慌てないように、事前の準備をしておきましょう。

長襦袢での練習がおすすめ

「説明だけだと、着物でトイレがちゃんとできるかわからない…」こんな時、ご自宅に着物がある場合には、中に着る「長襦袢(ながじゅばん)」だけを着てイメージトレーニングをしてみるのも手です。

長襦袢は「おはしょり」を作らずに着ますので、着物が初めての人でも比較的カンタンに着られます。そこまでキチンと着られなくても「あわせ」さえ合っていれば、「裾がこうなる」「袖をクリップでまとめる」というイメージがつかみやすいです。

また実際にトイレで練習をしなくてもOK。着物をめくってイスに座る練習をするだけでも、イメージはかなり掴めますよ。

ショールに要注意!サブバッグを準備しよう

上記の「着物・振袖でのトイレの行き方」でご紹介したとおり、着物や振袖でトイレに行く場合には、着物の各部を汚さないよう細かく気を使う必要があります。洋服の場合なら「上着もマフラーもそのまま」でトイレを使う人もいますが、着物ではそうはいきません。

・成人式のショール
・羽織
・道行(みちゆき)
・和装コート等

上記のようなショールや上着の類は、トイレの際にはすべて外すのが基本です。レストラン等でトイレに行く場合には、上着・ショール類は席に置いて、同席の人に見ていてもらいましょう。

とは言え店舗以外での場所や一人の時には、ショール等の置き場に困ってしまうケースが少なくありません。ショール等の荷物をサッと個室の中でまとめておけるように、サブバッグも準備しておいた方が安心です。

洋式トイレ・広いトイレをチェック

着物・振袖でトイレに行く場合には、以下のようなトイレであることが理想です。

【着物・振袖でも行きやすいトイレとは】

・洋式トイレであること
・清潔であること
・清掃直後ではないこと(床が濡れていないこと)
・個室が広いこと
・全身が映る大きな鏡(姿見)のコーナーがあること
・手洗い場とメイクコーナーが独立していること

特に「洋式トイレ」はとても重要です。着物・振袖で和式トイレに入る場合、裾や袖はさらに短くまくりあげなくてはなりません。また和式トイレは「フタ」ができないので水の飛沫が飛び散りやすく、裾等に水シミができる恐れもあるのです。

結婚式場や大きなホテルなら、「和式だけ」「鏡がない」といった心配はほとんどありません。しかし会食の店舗によっては、十分なトイレが無い場合もあります。「近隣にキレイなトイレがあるか」「大きな鏡のコーナーがあるか」といった事前のチェックはしっかり行った方が安心です。

「着物でトイレ」に失敗しない!当日の注意点

着物でのトイレに失敗しないよう、当日には以下のような点にも注意しましょう。

着物を着た日のトイレは早めに!

着物や振袖の場合、「トイレに行きたい」と感じてからトイレに向かうのでは遅すぎです!前述のとおり、着物でトイレに行く場合には用を足すまでにアレコレ準備をする必要があります。「ガマンできない」と焦っている状態だと、着物を汚してしまうかもしれません。

トイレは余裕がある時に、早めに行くようにしましょう。なお女性の場合、トイレに行く回数は平均1日4回~7回程度。一般的には3時間~4時間おきにトイレに行く計算ですが、緊張状態や飲酒をした時はトイレの頻度がさらに高まります。「まだ大丈夫」というガマンは禁物です。

時間の余裕をもったスケジュールを

洋服の場合、1回のトイレ(公衆トイレ)にかかる所要時間は女性でも3分~5分以内と言われています。ところが着物・振袖の場合、トイレにかかる時間はこの3倍~4倍以上ともなるのです!

単純にトイレを済ませるだけでも、着物が初めての人なら10分~15分程度は見ておいた方が良いでしょう。着崩れ・メイク直しの時間も入れれば、1回のトイレで20分以上かかることも考えられます。特に着物の女性が集まる成人式会場等では、トイレが混み合う可能性大です。

「式場についてから、一度トイレに行って…」と予定していても、10分前の式場到着ではトイレ中にイベントが始まる可能性も考えられます。十分に余裕を持った計画で行動しましょう。

おわりに

振袖・着物でのトイレの行き方や失敗しないためのポイントはいかがでしたか?着物での上手なトイレの仕方を覚えておくと、着物関連のイベントの日も一日中リラックスして楽しめますよ。

また振袖・着物で一日楽しくイベントを終えたら、着物のお手入れも忘れずに。袖を通した着物はクリーニングに出して、一日の汚れをきちんと落としてあげましょう!