家紋の入れ替えをすることで、祖父母や両親から譲られた着物を着用することができますが、家紋の入れ替えって何?そもそも自分の家紋がわからない……という方も多いようです。
そこで、家紋の入れ替えとは何か、作業の流れ、皆さんの疑問にもお答えします。
目次
家紋は入れ替えることが出来る
祖母や母親から着物を譲り受けたものの、家紋が違うから着られないと諦めてしまう方も多いのではないでしょうか。
そんな場合に注目してほしいのが、家紋の入れ替えです。
実は着物の家紋は、きものトトノエのような着物専門のクリーニング店や呉服店などで、入れ替えることが出来ます。
家紋を入れ替える場合とは?
家紋が入った着物はほとんどがフォーマル用の着物ですが、どんな場合に、どんな着物の家紋を入れ替えることが多いのでしょうか。
お宮参りの産着(初着)
お宮参りの産着(初着)は新しく仕立てるよりも、パパ・ママや祖父母の着物を利用するというご家庭が増えています。
産着の家紋は、男の子なら父方の家紋を入れて女の子は家紋を入れないのが一般的ですが、男の子の産着には父方の家紋、女の子の産着には母方の家紋を入れる、男の子も女の子も産着には母方の家紋を入れるケースもあります。
また、男の子の着物には五つ紋を入れますが、女の子の場合は小さく一つ紋を入れるところもあるようです。
そのため、祖父母やパパ・ママの産着を譲り受けたとしても、その着物の家紋が地域や各家庭のしきたりなどと違っているため、家紋を入れ替えるケースが見受けられます。
七五三の男の子の着物と羽織
七五三の場合、男の子の着物と羽織には家紋を入れます。
最近は家紋を入れないケースが増えていますが、祖父や父親から譲り受けたものなら家紋が入っていることが多いのではないでしょうか。
そんな譲り受けた着物と羽織の家紋が子どもの家紋と違う場合には、家紋を入れ替えてお子さんに着せることになります。
結婚式などに着る黒留袖
嫁入り道具として持参した留袖は実家の家紋が入っているのが一般的で、そのまま着ていても問題のない場合がほとんどですが、地域によっては結婚式に着る黒留袖には婚家の家紋を入れたほうがよいケースも。
また、母親から留袖を譲り受けたものの、母親が嫁入りする前の母方の実家の家紋になっているため、父親の家紋や婚家の家紋に入れ替えたいというケースもあるようです。
色無地に一つ紋で格を上げる
家紋の入れ替えだけでなく、着物に家紋を新しく入れることもできます。
例えば、家紋のない街着という格付けの色無地に一つ紋を入れるだけで、略礼装のフォーマルな装いとなり、入学式や卒業式、結婚式などにも着用できるようになります。
母や祖母から譲り受けた色無地に家紋がない場合や、もともと紋を入れずに誂えた色無地をフォーマル用にするために、家紋を入れてもらうというケースもあります。
家紋の入れ替えの手順
実際には、どんな手順で家紋の入れ替えが進行するのでしょうか。
きものトトノエの場合を例に取り、家紋の入れ替えの手順を紹介します。
依頼内容を確認
公式ホームページにてお客様のメールアドレス、住所、名前を登録していただき、依頼内容をメールでお送りいただきます。
見積もりを提出
こちらからお送りした専用キットに家紋の入れ替えを行う着物を入れて送っていただき、実際の着物の状態を把握したうえで見積もりを提出。ご納得いただけたら作業をスタート。
納得がいかないという場合には、お客様に着物を返送します。
着物の状態を確認
実際の作業に入る前に、家紋を入れる部分の変色や生地の状態をチェックします。
稀ですが、生地が薄くなっているなど紋の入れ替えができない場合もあります。
縫い糸をほどく
着物の背と袖の縫い目を15cm程度ほどきます。袷の着物の場合には、裏地の縫い目もほどきます。
家紋を落とす
生地を傷つけないように状態を確認しながら、家紋を少しずつ丁寧に落としていきます。
新しい家紋を入れる
家紋の型を使って、新しい家紋を入れていきます。
紋帳に型のない特殊な家紋の場合は、新たに型を作って対応します。
縫い戻し
家紋の入れ替えのためにほどいた背と袖の部分を手作業で縫い戻します。
着物を発送
家紋の入れ替えが完成した着物は、特殊梱包材で梱包してお送りします。
発送が完了したら、メールにてご連絡いたします。
家紋の入れ替え・家紋入れ 料金表
〇抜き紋の入れ替え
お見積り 20,000円〜
※紋帳にない家紋は型代として、別途2,475円(税込)が必要です。
〇抜き紋・石持に五つ紋を入れる場合
黒留 6,105円(税込)
喪服 4,620円(税込)
男性用黒紋付 8,250円(税込)
〇抜き紋・石持がない場合
一つ紋 6,600円(税込)
三つ紋 12,130円(税込)
五つ紋 14,025円(税込)
家紋の入れ替えについてお答えします!
Q 家紋の入れ替えにはどれくらいの期間が必要ですか?
A 家紋の入れ替えは最低でも2週間以上はかかります。匠の診断やクリーニングなども行う場合や、繁忙期には1カ月以上かかることもあります。
Q 自分の家紋がわからない場合、どうすればいいですか?
A 家紋は着物以外なら仏壇や袱紗(ふくさ)に入っていることが多いため、確認してみましょう。先祖代々のお墓なら、墓石にその家の家紋が彫られていることも。
また本家があるなら本家に確認したり、親戚などに確認してみると家紋を知ることができます。
Q 同じ絵柄だけど丸がある家紋、丸のない家紋。同じものですか?
A 同じ絵柄でも、「丸がある紋」と「丸がない紋」は別の家紋として扱う地域が多いようです。また、男性の着物なら丸あり、女性の着物(女紋)には丸なしという考え方や、本家と分家で丸のあるなしを変えるというケースもあります。
どちらにしても違う紋という考え方なので、どちらが自分の家の家紋なのかしっかり確認しておきましょう。
Q フォーマル用の着物に入れる抜き紋とは?
A 家紋には抜き紋(染め抜き紋・日向紋)と縫い紋がありますが、家紋としての格が高いのが「抜き紋」です。染め抜いた家紋「抜き紋」は、留袖や喪服などの冠婚葬祭に着用する着物に入れます。色無地に抜き紋を入れることで格が上がり、結婚式や七五三、入学式などの式典といったフォーマルなイベントに着用できるようになります。
一方、刺繍で入れた家紋「縫い紋」は、略式の礼装に使用できるカジュアルよりの家紋です。金糸・銀糸で入れた場合は小さいパーティーや結婚式の二次会、大寄せの茶会には着られますが、その他の色を使った縫い紋は「洒落紋」となり、着物はおしゃれ着扱いとなります。
Q 家紋を入れ替えたことは周囲にもわかりますか?
A 見た目では家紋を入れ替えたことはわかりません。
Q 家紋の入れ替え時に一緒に行った方がよいお手入れはありますか?
A 丸洗いは一緒に行いましょう、さらに、きものトトノエの匠の診断を行っておくと、着物のシミや汚れ、ほつれや傷みなども熟練の職人がチェックし、必要なお手入れを提案してくれます。この機会に紋の入れ替えと併せて、必要なお手入れをしておくといいでしょう。
まとめ
祖父母や両親の着物を受け継いで、できるだけ利用したいと考える方が増えていますが、その場合、ネックになるのが家紋です。
家紋には各地域や先祖代々のしきたりなどがあり、何が正解かは各家庭で異なります。
そのため、まずは自分の家紋が何かを知り、せっかく譲っていただいた着物を無駄にしないように家紋を入れ替えることをオススメします。