着物のお手入れは着た後の自宅でのケアだけでなく、保管前に専門店にお願いする着物のお手入れも重要です。
お手入れの有無や内容で、着物が長持ちするかどうかが大きく変わってしまいます。

そこで今回は、着物を着た後の自宅でのお手入れ方法と、着物専門のクリーニング店でどんなお手入れをお願いすればよいのかを紹介します。

着物を着た後のお手入れの方法

着物を直用したあとのお手入れとして行って欲しいのが、陰干し(かげぼし)ホコリを落とす汗抜きです。

着物全体をしっかりチェックして、シミを発見した場合には、早めに着物専門のクリーニング店で染み抜きをしてもらいましょう。

陰干しをする

陰干しとは、直射日光等が挿し込まないところで着物等の衣類を干すこと。
「干すだけ?」と思うかもしれませんが、実はとても重要なお手入れ方法です。

一度着用した着物の繊維の中には、汗等の水分による湿気がたくさん含まれています。
これらは着物に繁殖しやすい「カビ菌」や「虫」の大好物!
干さずにすぐに着物を畳んでしまうと、カビや虫害等のトラブルに遭いやすくなるのです。

着物の着用後には陰干しをきちんと行って、水分を飛ばすことから始めましょう。

陰干しの手順

1)着物をかける場所を決めます。屋外の場合も屋内の場合も、直射日光が当たらないことが第一。
また屋内の場合には、窓を開けて換気をします。

2)きもの専用のハンガーに着物をかけて、形を整えます。

3)3時間~半日程度は空気にあてて、湿気を飛ばします。(雨の日の着用後等には丸一日程度干します)

【注意点】

※室内の湿度が高すぎる場合は、エアコン・扇風機等を使って除湿してください。
※屋外に干す場合は太陽の動きで日光が当たらないよう、着物を時々動かしましょう。
直射日光に当たると、短時間でも着物が褪色(色あせ)や変色を起こすことがあります。

ホコリを落とす

陰干しを十分に行ったら、今度はブラシで着物についた細かなホコリを落としていきます。

屋外での着用で付いたホコリや排気ガス等の微粒子をそのままにしておくと、着物を傷める大きな原因になります。虫食いの原因になる「虫」を払うことも大切です。

とはいえ、洋服用のホコリを吸着するタイプのエチケットブラシは着物には不向き。

礼装用の振袖や留袖、訪問着といった着物は、ほとんどが正絹(しょうけん)と呼ばれる繊細なシルク生地で作られています。
これらの着物は摩擦等の刺激に弱く、洋服用のお手入れでは毛羽立ちができてしまうことも。

まずは次の条件を満たす、和装専用のきものブラシを準備しましょう。

【きもの用ブラシの選び方】

1)豚毛・馬毛等の獣毛でできていること

2)毛質がやわらかいこと

3)「シルク対応」であること

4)和装専用と明記されていること

ブラシを使った着物のお手入れ方法

1)きもの用ハンガーに着物をかけて形を整えます。

2)着物の下側には新聞紙等の大きめの紙を敷いておきます。

3)衿元から肩にかけて、布目に沿ってブラシを一方向に動かします。

4)肩→袖(そで)→身頃(みごろ)の順にブラシを動かしていきます。

5)裾(すそ)はブラシを横方向(ただし一方向)に動かして、砂汚れ等を落とします。

6)裾の裏側も、同様にブラシを横方向に動かしながら汚れを払い落とします。

7)裾の縫い目の部分にもブラシをかけます。

8)下に敷いた新聞紙は丸めて廃棄します。

【ブラシを使う時の注意点】

※ブラシを両方向にゴシゴシ動かしたり、強く擦るのは厳禁です。

※ブラシによっては、金箔部分・刺繍部分・レース地等には使用できないことがあります。取扱説明書をよく確認しましょう。

汗抜きを行う

着物の着用中に汗をかいた場合、陰干しだけでは水分を飛ばしきることができません。残った汗の成分が「汗ジミ」となってしまうことも。こんな時には汗抜きで着物のお手入れをして、汗の成分を取りましょう。

汗抜きのお手入れ方法

1)大きめのタオルを下に敷き、着物を広げます。

2)別のタオルを水に浸して、固く絞ります。

3)汗をかいた部分を2)のタオルで軽く叩いて、汗の成分をタオルに移します。

4)十分に汚れを取ったら、乾いたタオルで叩き、水分を取ります。

5)長めに陰干しをして、含ませた水分を飛ばします。

【汗抜きの注意点】

※タオルで着物の生地をゴシゴシとこすらないように注意しましょう。

※金箔や刺繍のある部分には汗抜きを行わないでください。

※触った時に濡れたように感じるほど汗を吸い込んでいる場合は、自宅での汗抜きでは不十分です。早めに専門店に相談しましょう。

シミを見つける 

陰干しやブラシで着物のお手入れをしている間に、着物全体の汚れを丁寧にチェック。汚していないはずと思っていても、意外なところに汚れが付着していることがあります。

【着物の汚れやすいポイント】

・衿・衿元:ファンデーション汚れが付きやすい

・袖・袖口:手洗い時の水ハネ等が飛びやすい。袖の裏側も確認を

・前身頃・胸元:食事のハネが飛びやすい

・裾・裾まわり:泥ハネが飛びやすい

シミや汚れを見つけた場合には、忘れないようにシミのある箇所をメモしておきます。またシミの原因を思い出せる場合には、合わせてメモをしておきましょう。

着物に付いたシミは原因によって対処法が異なります。また、汚れの原因によってミ抜きの方法等も異なるため、自宅で染み抜きを行うのは難しいかもしれません。

【自分で処理できないシミとは】

・シミが大きい(直径2~3センチ以上ある)

・シミの原因がわからない

・いつ付いたかわからない古いシミである

・着物が正絹(シルク)でできている

・金箔・刺繍・レース等の特殊加工のある場所にシミがある

上記のようなシミの場合には、ひとまず他の部分に汚れが広がらないように、キッチンペーパー等を重ねておきます。できるだけ早く専門店に「シミ抜き」を依頼しましょう。

シーズンが終了した着物はクリーニングへ

陰干しやホコリ取り、汗抜きを丁寧に行い、シミもついていないようなら、自宅での着物のお手入れは完了です。

シーズン中には再度キレイな状態で着物を着ることができるでしょう。

ただし、「しばらく着用の予定が無い」という場合には、必ず着物をクリーニングに出しましょう。基本的な着物のお手入れだけでは、繊維の中に残る汚れを取り除けません。

半年~1年以上の長期保管の間に、カビの繁殖や変色等が起こる可能性があります。

とくに「カビの繁殖」は、着物にとって大問題。現代の日本のマンションや一戸建ては昔の家屋に比べて密閉性が高く、それだけカビが生えやすいのです。保管中の通気に気を使うことも大切ですが、「カビの元」を取り除いておくことも重要になります。

【クリーニングに着物を出した方が良い場合】

1)着用中に汗をたっぷりかいた場合

2)着物にシミ・汚れが付いているのが見つかった場合

3)シーズン中にはもう着物を着る予定が無い場合

上記の3つにあたる場合には、振袖・着物はクリーニングに出しましょう。

着物専門のクリーニング店で行うお手入れとは

着物専門のクリーニング店に出した着物には、どんなお手入れが施されるのでしょうか。

着物クリーニングの基本は「丸洗い」

着用した着物は、保管する前に必ず「丸洗い」に出すことが大切です。

「丸洗い」とは、着物を仕立て上がった状態のまま、ドライクリーニングする方法のこと。

クリーニング店によっては洗濯機で洗ってしまうところもあるようですが、きものトトノエでは手作業による丁寧な「丸洗い」を行っているため、金箔・刺繍・螺鈿などの加工部分を傷める心配がありません。

しかも汚れがひどい部分は専用の洗浄液で下洗いをして、油性のシミや汚れは予め落としておきます。

下洗いが済んだら、きものトトノエ専用の洗浄溶剤で着物を丁寧に洗浄し、仕上げのすすぎを行っていきます。きものトトノエで使用している洗浄液には消臭効果、除菌効果があるため、とても衛生的に仕上がります。

着物を保管する前に必要な「汗抜き」

着用した着物を保管するときには、「丸洗い」に加えて「汗抜き」も必要です。

汗は乾いてしまうと目に見えないため、「汗なんて染み込んでいないのでは?」と思う方もいるかもしれません。ですが、想像以上に人間は汗をかいていますし、それは着物にもしっかりとしみ込んでいます。

暑い時期はもちろんのこと、冬の寒い屋外から暖房の効いた室内に入ることで、汗をかくことも考えられます。

繊維に染みついた汗の成分をそのまま放っておくと、数年でカビや黄ばみなどの変色の原因になりなるため、予防しておくことが大切なのです。

シミを見つけたら早めに「染み抜き」を

一度着用しただけでも、着物には気がつかないうちに、さまざまな汚れがついています。もしもシミを見つけたら「丸洗い」と「汗抜き」に加えて、「染み抜き」もお願いしましょう。

シミには水溶性や油溶性、水溶性と油溶性の混合など、いくつも種類があるうえ、それらが混ざり合っていることもあり、自分でシミの原因を見分けて自宅で落としきるのは難しいといえます。

また、振袖や留袖、訪問着など、出番の多い着物のほとんどが、水に濡れると縮んだり色落ちしてしまう正絹(シルク素材)で出来ていることもあり、自宅での染み抜きはやめたほうがよいでしょう。

シミを見つけたら出来るだけ早く着物専門のクリーニング店へ。早く対応するほど、キレイにシミを落とすことができます。

久しぶりに出した着物にカビが発生していたら

長期間タンスで眠っていた着物。久しぶりに出してみたら、カビ臭い、全体的に茶色く変色している、柄の上にもシミが広がっているなど、悲しい状態のことも。

これらのシミや変色は、汗や汚れを長期間放っておいたために生地が酸化してしまい、「黄変(おうへん)」という古いシミになってしまった状態です。

保管前にクリーニングに出していなかったり、クリーニングには出したけれど「丸洗い」だけで「汗抜き」と「染み抜き」はしなかったことが原因といっても過言ではないでしょう。

では、カビやシミ、変色だらけの着物はもう着られないのかといえば、そんなことはありません。

一般的なクリーニング店では、黄変を落とすのが難しいため断られてしまうことも多いと思いますが、きものトトノエではカビや黄変にも対応しています。

「丸洗い」と「カビ処理」で対応

何年もタンスに保管していた着物は、着用する前に必ず「丸洗い」に出しましょう。

カビ臭さを感じる着物には「カビ処理」も必要になります。

着物の表面にカビや変色が見えなくても、カビ臭いのであればカビ菌は繊維の奥に必ず潜んでいます。また、着物地と裏地の間にカビやシミが広がっていることも考えられます。

まずは保管中に溜まってしまったホコリや汚れを「丸洗い」で取り、カビ菌は「カビ処理」をして清潔な状態にしておくことで対応します。

変色や黄変には「黄変抜き」を

もしも茶色いシミや変色が広がり、すでに黄変を起こしている場合は、熟練の職人が生地の状態を見ながら、専門の溶剤でシミを抜いていく「黄変抜き」を行います。

着物を傷つけることなく「黄変抜き」を行うためには、専門の職人が長年培ってきた着物に対する知識と技術が必要となります。

「染色補正」や「柄足し」でカバー

シミや変色の状態がひどくて「黄変抜き」ではシミを取りきれない場合には、細かな金箔を吹き付けてシミを自然に隠す「箔ぼかし」、色を掛けたり柄を足すことでシミを隠す「染色補正(色掛け)」や「柄足し」などのシミを目立たなくする方法もあります。

縫い目部分は「洗い張り」で対応

縫い糸にまで黄変が出てしまった場合は、着物をほどいて「洗い張り(水洗い)」を行ってから、仕立て直します。こうすることで、縫い目やその周辺部分の変色にもしっかりと対応することができます。

匠診断と見積もりを依頼しよう

一見すると着物にシミや汚れは見つからず、実際にはどの程度、着物に汚れがついているかわからない場合。反対に、久しぶりに出した着物のカビや黄変が激しくて、着られるかどうかわからない場合にも、まずは、きものトトノエのような着物専門のクリーニング店に相談しましょう。

例えば、きものトトノエの「匠診断」なら、熟練の職人が着物の隅々までチェックするため、見えない部分の着物の汚れやシミ、生地の傷み具合まで診断することができます。

どの程度のお手入れが必要なのか、生地の痛みがひどい場合には、どんなお手入れができて、どこまで修復できるかなども診断。

そのうえでお客様と相談しながら、見積もりを出していきます。

残念ながら修復が難しい場合はそうお伝えすることもありますし、お客様の判断で不要と感じたお手入れを、こちらで勝手に行うこともありません。

着物のお手入れについてのお悩みを抱えているなら、まずは着物の状態を知ることが大切です。

せっかくクリーニングに出して保管したのに、数年たったらカビやシミにやられてしまい悔しい思いをしないためにも、クリーニング前には必ず「匠診断」を受けることをオススメします。

まとめ

着物のお手入れ方法はいかがでしたか?

着物を着た後の自宅でのお手入れは、初めて行う時には難しく感じられるかもしれませんが、一度慣れてしまえば意外とカンタンです。

お手入れをこまめに行うこと、保管前には必ず着物専門のクリーニング店に出して着物の状態に合ったメンテナンスしてもらうことが、お気に入りの着物を長く楽しめることにつながります。