着物の汗対策は夏だけでなく一年を通して必要です。
吸汗性や通気性の高い肌着や着付け小物が着物の汗対策の強い味方となります。

では、なぜ着物に汗対策が必要なのか、また具体的にはどんな汗対策ができるのかを紹介します。

着物には汗対策が欠かせない理由

着物の汗対策は夏だけでいいと思っていませんか?
実は気がついていないだけで、人は一年中汗をかいています。

例えば、冬の暖かい室内の中でも汗をかくことがありますよね。
遅刻しそうで小走りしたことで、目的地に着いた瞬間、どっと汗が噴き出すことも。
また、最近は暑くなるのが早いため、5月に袷の着物では汗をかくこともあるでしょう。

とくに着物は帯を巻いているお腹のあたりや、膝の裏、脇の下などに汗をかきやすく、その汗が着物にまで染みこんでしまうことがよくあります。

しかも、汗は乾いてしまうと見た目にはわからないため、お手入れせずにそのままにしてしまいがちですが、シワの原因になったり、時間がたつとシミやカビとして現れることも。

クリーニングに出せばキレイになると思いがちですが、長期間放っておくと着物にシワが寄ったままになってしまったり、落ちにくいシミに変色してしまう可能性大。
お手入れにかなりの時間と費用がかかることになります。

また、レンタルの着物に汗がひどくしみ込んでしまうと、別途クリーニング代金を請求されたり、弁償になってしまうことも考えられます。

汗はそれほど着物にとって厄介な存在なのです。
そのため着物を着たときには、できるだけ汗を着物に染み込ませない工夫が必要です。

季節を先取りする装いで汗対策を

単衣の着物は6月と9月に着るものといわれていますが、気温の高くなる時期が早く、猛暑が長く続く最近は、春単衣なら5月から6月、秋単衣なら9月から10月中旬までは着る方が増えています。

結婚式などのフォーマルな場やお茶会などではマナー違反になるためオススメできませんが、おしゃれ着や普段着なら、実際の気候に合わせて暑いと感じ始めたら単衣を着ることで、汗をかくことを予防することができます。

盛夏(7月・8月)に着る薄物も、前倒して6月中旬くらいから着用してもいいでしょう。

一般的に単衣の着物には単衣の長襦袢を合わせるものといわれていますが、単衣の着物にも盛夏用の麻や絽の長襦袢を合わせましょう。

とくに麻の長襦袢は吸水性と速乾性にすぐれているので、着物を涼しく着こなすことができるだけでなく、汗が着物に移るのを抑えることにつながります。

補正のタオルも汗対策になる

着物を着るときには補正をすることが多いと思いますが、補正は体型を整えるだけでなく、実は汗対策にもなります。

補正で使用しているタオルが汗を吸収してくれるため、着物に汗が移るのを防いでくれるのです。

着物を着るときに補正はしないという人も、帯を巻いているため汗をかきやすい腹部などにはタオルを巻きましょう。

夏場は熱をためこまない大判のガーゼもオススメです。

吸汗性にすぐれた肌着を利用する

吸水性と通気性にすぐれた肌着を利用しましょう。

暑い時期には肌着を利用しない方がいますが、汗対策としては逆効果です。
暑い時こそ、汗をしっかり吸い取ってくれるインナーの存在が必要なのです。

吸汗作用のある肌着には、イグサの芯で織ったあしべ織の汗取り襦袢や、吸湿・速乾にすぐれたドライ生地を使用したもの、汗が気になる脇の下や背中に防水布の付いたものなどがあります。

お茶会のように脚の汗が気になる場合は、膝の裏などの汗を吸い取ってくれるステテコを履くのもひとつの方法です。

暑い時期ほど汗を吸収してくれる肌着をしっかり着用すること。
これだけでも着物に汗を移すのを防ぐことになります。

通気性の良い着付け小物を使う

通常の帯枕よりも通気性の高いへちま枕や麻枕を使うことで、背中が軽くて涼しくなります。

メッシュのゴムベルトやメッシュの帯板を使用するのもオススメです。
通常の帯板は熱がこもりますが、通気性の高いメッシュの帯板にすることで涼しくなるため、汗を抑えることになります。

夏はカラダを冷やすことで汗対策を

夏の着物の汗対策には、吸汗性にすぐれた肌着や通気性の高い着付け小物を使用することに加えて、直接、カラダを冷やす工夫が必要です。

制汗剤や冷却シート、保冷剤を使用

制汗剤や冷却シート、保冷剤を使用して、汗をかかないように工夫しましょう。

汗が気になる部分には、着付けの前に制汗剤を使用しておくと、しっかりと汗を抑えることができます。

着付けの前に冷却シートを貼っておいてもいいですし、ボディ用の冷却シートならはがれにくいため、そのまま長時間使用できます。
保冷剤の場合はガーゼなどに包んで、使用しましょう。

日傘や扇子は必ず持参する

着物の袖口から仰いで風を入れられる扇子や、直射日光を遮ってくれる日傘は夏の必需品です。
忘れずにバックの中に入れておきましょう。

自装するなら冷房を効かせた場所で

ご自分で着付けをされるなら、着付けの前にカラダと部屋を冷やしておきましょう。

着物でもっとも汗をかくのは、着付けをしているときだという声があります。
慣れない着付けに七転八倒、うまく帯が結べないと焦ってしまうと、さらに汗をかくことになってしまいます。

まずはたっぷりと時間のゆとりを持つこと。さらに、着付けを行う部屋はいつもよりも冷房を強めにしておくといいでしょう。
冷水に腕を浸ける、ガーゼを巻いた保冷剤を首筋や脇の下にあてたり、長襦袢の胸元にしばらく入れておくと、カラダを冷やすことが出来ます。

着付ける際には、顔や頭から流れ落ちる汗が着物につかないように、半衿はいつもより少し多めに出しておくといいでしょう。

汗が着物に染みたと感じたらクリーニングへ

どんなに気をつけていても、想像以上に汗をかいてしまうこともあります。
着物に汗がついてしまったと感じたら、クリーニング店で「汗抜き」をお願いしましょう。

応急処置として自宅で汗抜きをする方法もありますが、慣れない方がやると、却って輪ジミが広がって被害が大きくなります。
夏場に大汗をかいて広範囲に汗が染みている場合も、自宅での応急処置では限界がありますから、早めにクリーニングに出すことを優先したほうがよいでしょう。

一般的な着物のクリーニング「丸洗い」だけでは汗は落ちないため、「丸洗い」に加えて必ず「汗抜き」もお願いすることが大切です。

着物の汗抜きはなぜ必要?丸洗いだけでは不十分な理由とは

まとめ

着物で汗をかくのは、夏場だけとは限りません。
普段から汗をかきやすい体質の方なら、なおさらです。

吸汗性や通気性にすぐれた肌着や着付け小物を利用するなど、見えない部分で上手に工夫しましょう。
夏場は直接、カラダを冷やす工夫で汗を抑えるといいでしょう。

それでも、着物に汗が染み込んでしまったと感じたら、クリーニング店で「汗抜き」してもらうことをオススメします。