振袖等の着物を着た後、忘れてはいけないお手入れが「汗抜き(あせぬき)」。汗抜きをしないと、着物の「汗染み」等のトラブルが起きやすくなります。自分で行う汗抜きのお手入れも大切ですが、クリーニングに出す時にも注意する点があるんですよ。

今回は振袖や着物を自分で汗抜きする方法や、着物丸洗いと汗抜きの違い等、着物の汗染みを予防するための「よくある疑問」にお答えしていきます。

目次

【Q】着物の汗抜きとは何?

【A】「汗抜き」とは、振袖等の着物の繊維に含まれる「汗」の成分を取るためのお手入れです。

私達がかく「汗」には、水分の他に皮脂や塩分、ミネラルといった様々な成分が含まれています。着物を着用した時に汗をかくと、長襦袢(ながじゅばん)や振袖等の着物にも汗の成分が残ります。

すると残った成分が酸化して、着物の生地を傷める原因となるのです。特に汗の成分に弱いのが「正絹(しょうけん)」というシルク100%の生地。振袖や留袖・訪問着等の礼装用着物は多くが「正絹」で作られていますから、着用後にはていねいに汗抜きをする必要があります。

【Q】振袖・着物の汗抜きをしないと汗染みになる?

【A】振袖・着物の汗抜きをしないと「汗染み」による変色の他、カビ等の原因にもなります。

汗染み・汗ジミとは?

汗ジミとは、汗の成分による繊維の変色(黄色~茶色いシミ)を指す言葉です。白いTシャツやYシャツに「黄ばみ」が起きたことがありませんか?あれは繊維の中に残った汗汚れが酸化して起こる「黄変(おうへん)」という変色です。着物・振袖の場合も、汗抜きをしないと同じような変色が起こります。

汗ジミは、着用後すぐにできるとは限りません。汗で濡れた部分は乾くとどこが汚れていたかわからなくなりますが、成分は繊維の中に残っています。これが数ヶ月~年単位と少しずつ時間をかけて酸化し、黄色から茶色へとシミの色が濃くなっていくのです。

着物の汗ジミは主に「脇(わき)」や「背中の中心」、「ウエスト周り」等、汗をかきやすい部分に広くあらわれます。

カビの繁殖による匂いトラブルや変色も

汗に含まれる皮脂は「カビ菌」の大好物です。そのため汗抜きをせずに保管すると、着物・振袖にカビが繁殖しやすくなります。一度カビが生えると、カビ菌を根絶するのは大変。青黒いシミができて取れなくなったり、着物がカビ臭い状態になってしまいます。

【Q】「汗抜き」は夏だけすればいい?

【A】振袖・着物の汗抜きは夏場の着用後だけでなく、汗ばんだ時には年間を通して必ず行います。

「汗は暑い時にかくもの」と思い込んでいませんか?実は私達は一年中、様々なシーンで汗をかいているのです。

【汗の種類や汗をかくシーン】

・緊張した時(精神的な汗)
・急いで歩いた時や階段の上り下り等の軽い運動後
・お酒を飲んだ時
・辛いものを食べた時
・暖房のきいた場所に居る時 等

特に振袖等の着物は、ふだん着ている洋服に比べて体温がこもりやすく、体が「暑い」と感じがち。そのため着物で少し歩いただけでも、体は知らず知らずに汗をかいています。

また冬場の汗はナトリウムやカリウム・クロール成分の濃度が高い、匂いの強い汗になる傾向があります。そのため「少量の汗だから」「冬だから」と油断せず、一年中ていねいに汗抜きをした方が安心です。

【Q】汗抜きは自分でできる?汗抜きの方法は?

【A】軽い汗ばみ程度の汗なら、日常的なお手入れの一環として自分で着物の汗抜きができます。

【準備するもの】

・霧吹きかスプレーボトル(霧が細かく出るもの)
・タオル2~3枚(パイルが柔らかいもの)
・着物用ハンガー

【汗抜きの方法・手順】

1)振袖等の着物は和装専用ハンガーにかけるか、広げて裏にタオルを敷いておきます。
2)脇・ウエスト部等の汗を多くかいた部分に、霧吹きで軽く水を含ませます。
3)すぐにキレイなタオルで軽くトントンとシミを叩いて、水分を取ります。
4)通気の良い場所で1日程度陰干しし、水分をよく飛ばします。

【汗抜きをする時の注意点】

・着物の生地が正絹(シルク)等の場合、水を含ませすぎると生地が縮みます。霧吹きは細かく水が出るものを使用し、水を吹きかけすぎないように十分に注意しましょう。
・タオルで生地をゴシゴシこすったり、強く叩くのは厳禁です。タオルが当たる部分をこまめに替えながら、やさしく叩いていきましょう。

【Q】振袖・着物は専門店で汗抜きした方がいい?

【A】汗の量が多い場合や、しばらく着ない振袖・着物は専門店で汗抜きをしましょう。

自分での汗抜きでは汗が取れきれない?

上記でご紹介した「自分でできる汗抜き方法」では、振袖や着物の表面の汗の成分しか取ることができません。汗の量が多い時には成分が生地の内側にまで滲みており、後から「汗ジミ」となる可能性が高くなります。

また振袖や着物を着ないで保管する期間が長い場合、保管中に汗の成分の酸化にによる黄変(黄ばみ)や茶色への変色が酷くなる可能性が高まります。そのため、専門店でキチンと汗抜きを行った方が安心です。

こんな時には専門店に汗抜きを!
【汗の多さの目安】

・着物・振袖が濡れて色が変わるほど汗をかいた時(脇汗・背中の汗等)
・着用中・着用後に触れた時に「汗で湿っている」と感じた時
・着用後、一日ハンガーにかけて吊るしておいてもシワが取れない時

特にシワが取れない場合は要注意です。着物のシワが取れない理由は、「汗」という水分を含んだ繊維が「体温」で乾かされつつ体重でプレスされたため。つまりシワがしっかり付いている部分は、今は乾いていても汗をたっぷり含んでいる可能性が高いのです。

【その他の目安】

・礼装用の着物(振袖・留袖等)で次回の着用予定が無い場合
・今後6ヶ月は着る予定が無く保管する場合
・着用シーズンの終わり頃

特に振袖・留袖・喪服着物等の礼装用着物は、一度着た後はしばらく長期保管となる可能性が高いもの。
長くしまう前に、本格的な汗抜きをしておいた方が無難です。

【Q】「着物丸洗い」ではダメ?丸洗いと汗抜きの違いは?

【A】クリーニングの「着物丸洗い」だけでは、汗の成分が取りきれません。振袖の汗染み予防をするなら「汗抜き」を追加しましょう。

着物丸洗いは「ドライクリーニング」

「着物丸洗い」とは、石油系の溶剤を使って着物の全体的な汚れを落とす方法です。カンタンに言えば、洋服の「ドライクリーニング」と同じということになります。

石油系の溶剤を使うので、着物丸洗いは「油溶性」の汚れを分解するのは比較的得意です。例えば「食べこぼし」や「メイクの汚れ」等は油溶性の汚れ。ですから「着物丸洗い」でもシミをある程度キレイにできます。

ところが汗染みの原因となる「汗の汚れ」は、水に溶けやすい「水溶性」。そのため「着物丸洗い」では汚れをなかなか分解しきれません。成分が繊維に残り、汗染みの元となってしまうのです。

「クリーニングに出したのに、翌年には振袖の脇が黄ばんだ」–こんなトラブルが起きる理由には、保管前のお手入れが「着物丸洗い」のみで、「汗抜き」が行われなかった可能性が考えられます。

職人の手作業で行う着物の「汗抜き」

専門店の着物の「汗抜き」では、高圧蒸気をかけて繊維に染み込んだ汗を飛ばす方法が用いられることが多いです。着物の生地は繊細で縮みやすいので、専門技術のある職人が手作業で汗を抜いていきます。

蒸気を使う「汗抜き」であれば、汗染みの元となる水溶性の汗の成分も取りやすくなります。水洗いが行いにくい振袖等の着物には、専門店での「汗抜き」は最適な汗染み予防となるのです。

汗抜きの料金の値段は?相場はいくら?

クリーニング店では、「汗抜き」は「着物丸洗い」等の追加メニューとして用意されていることが多いです。汗抜きの追加料金の値段は、2000円台~4,000円台前後となっています。

なお汗抜きの料金は「汗染みの状態」「着物の種類や状態」によっても価格が変動することが多いです。留袖等の高価な着物だと、汗抜き料金が上がることもあります。作業前に見積もりを出してもらうと良いでしょう。

【Q】「汗抜き」で振袖の古い汗染みも落ちる?

【A】古い「汗染み」の場合、別途「シミ抜き」や「洗い張り」が必要となることがあります。

すでに濃い色に変色した着物の古い汗染みの場合、「汗抜き」だけでは繊維の変色を戻せないことがあります。このような場合、特殊な溶剤を使って酸化した成分を取り除く「シミ抜き」の工程も行わなくてはなりません。

また汗染みの範囲が広い場合等には、一度着物をほどいて水洗いをする「洗い張り(あらいはり)」の作業をしないとシミが取れないこともあります。振袖・着物のシミの状態によっても必要となる作業が変わるため、着物の扱いに詳しい専門店に相談をしましょう。

おわりに

振袖・着物の汗抜きの方法や、汗染みの予防対策はいかがでしたか?洋服向けの一般的なクリーニング店の場合、着物のクリーニングを受け付けてはいても、「着物丸洗いしかできない」というケースが珍しくありません。

「大切な振袖や着物だから、汗染み予防をキチンとしたい!」という時には、「汗抜き」がメニューにある着物クリーニングの専門店を選ぶようにしましょう。