いまや私達の生活に欠かせない存在となった「ファブリーズ」等の消臭スプレー類。手軽に消臭ができて便利ですから、着物の消臭対策にもファブリーズを使いたい…と思っている人も多いのではないでしょうか?

今回はこのファブリーズ等の消臭スプレー類が着物に使えるのかどうか、そしてファブリーズ以外での消臭対策についても解説していきます。

「きものSalone」の編集長がオススメする着物クリーニングはここ。 きものtotonoe 


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着物にファブリーズは使えない?その理由とは

結論から言うと、残念ながら着物にはファブリーズ等の消臭スプレー類は使えません。ファブリーズを販売しているP&Gの公式ページや、製品裏の注意書きにも「和装品には使えない」とハッキリと書かれています。
メーカーから表明されているだけでなく、呉服店や着物の専門家達からも「着物にファブリーズは避けたほうが良い」と言われることが多いようです。これはなぜなのでしょうか?

ファブリーズの「水」で縮みやシミができる?

ファブリーズは、トウモロコシ由来の成分で匂いの元となる分子を取り込み、繊維を消臭する仕組みになっています。この消臭成分を届けるために必要なのが「水」。布用ファブリーズには、全タイプで「水」がベースとなっています。

消臭成分を繊維に届けるには、着物にファブリーズをしっかりスプレーし、湿らせた状態にしないといけません。つまり着物が一時的に濡れた状態になるのです。ところが以下のような着物は、濡れること・湿ることを苦手としています。

・正絹・シルクの着物
・ウールの着物
・刺繍(ししゅう)加工がある着物
・金箔・銀箔加工がある着物
・金糸・銀糸加工がある着物
・レース類が使われた着物
・一度も洗ったことが無い木綿着物・浴衣 等

これらの素材・加工の着物にファブリーズを使うと、以下のような様々なトラブルが起きる可能性があるのです。

水濡れによるトラブル例

・素材が縮む
・型崩れを起こす
・縮みジワができる
・水ジミ・輪ジミができる
・柄の部分が滲む(にじむ)
・刺繍部分が歪む 等

ファブリーズを着物にかけたことで輪ジミができてしまうと、自宅では直すことができず、着物クリーニング専門店等に依頼をしなくてはなりません。また万一はげしく生地が縮んでしまった場合には、専門店でも元に戻せなくなります。

特に正絹(シルク)はとても縮みやすい素材です。振袖・留袖・訪問着等の礼装用着物はほぼ正絹でできていますから、ファブリーズをかけるのはやめましょう。

水洗いできる着物にもファブリーズは不向き?

ではポリエステルや木綿着物・浴衣等の水洗い可能な素材の着物ならファブリーズは使えるか?というと、これもおすすめができません。ファブリーズには消臭成分のほか、除菌成分やその他添加物が多く含まれているためです。

着物には、藍染めや草木染め等の天然染料が多く使われています。これらの染料はデリケートで、ファブリーズの成分によって変色や褪色をする可能性があるのです。また、人工香料が繊維に染み付く恐れもあります。

そもそもニオイの原因が「汚れ」の場合、ファブリーズの効果が弱いことは公式サイトにも明記されています。水洗いができる着物なら、ファブリーズするよりも洗濯をしてニオイの元を取り除いた方が効果的なのです。

ファブリーズを使わない!着物の4つの消臭対策

上で解説したとおり、着物や帯等にはファブリーズによる消臭対策が行なえません。では着物についたタバコやペット等のニオイはどうやって取れば良いのでしょうか?代表的な4つの方法を紹介します。

1.風をあてて着物の臭いを飛ばす

様々な着物のニオイ対策に使えるのが風をあてる方法です。ファブリーズを着物にかけるのに比べて安全性が高く、幅広い着物に使うことができます。

こんな時の消臭対策におすすめ

・保管していた着物のホコリ臭さ
・タバコの匂い
・ペットのニオイ 等

陰干しで着物のニオイを飛ばす方法

1)屋外の直射日光の当たらない場所、もしくは室内の日の当たらない場所を選びます。
2)着物を和装ハンガーにかけて形を整えます。
3)数日から2週間程度、陰干しを続けてニオイを飛ばします。屋外の場合、夜間は湿気がたまりやすいので室内に取り込みましょう。屋内の場合は窓を開けて換気をし続けます。

ドライヤーで着物のニオイを飛ばす方法

1)和装ハンガーに着物をかけて、形を整えます。
2)部屋の窓を開けて換気をします。
2)ドライヤーを冷風設定にして、着物に全体的に風をあてていきます。
4)短時間ではニオイが飛ばない場合、扇風機で風を当て続けるのも手です。

風をあてる方法は臭いが気になる時だけでなく、普段の着物のアフターケアにもピッタリです。帰宅後に洋服にファブリーズをかけるように、着物には風をあてる習慣をつけましょう。

2.蒸気で着物の臭いを飛ばす

油っぽい臭いの場合、風だけではなかなか臭いが取れないことも。こんな時にはスチームアイロン等の「蒸気」を使うと繊維の奥の臭いも取れます。着物にはもちろん、今までファブリーズしていた洋服類の消臭にも使える方法です。

こんな時の消臭対策におすすめ

・食事の臭い
・汗っぽい臭い
・ペットの臭い 等

スチームアイロンを使う方法

1)和装ハンガーに着物をかけて形を整えます。
2)窓を開けて換気をします。
3)スチームアイロンを着物から2センチ程度浮かせるように近づけ、蒸気を着物全体にあてていきます。
4)1枚あたりの蒸気を当てる時間は10分程度が目安です。
5)最後に十分に陰干しをして、衣類に残った蒸気を飛ばします。

スチームアイロンを使う場合の注意点

・正絹着物は縮みやすいので、上記の方法ではなくあて布を使いアイロンでしっかりと伸ばす方法を取ります。
・金糸・銀糸や金箔・銀箔加工部分、その他刺繍(ししゅう)等の特殊加工部分にはアイロンをあてないでください。
・カビの臭いが少しでもする場合にはスチームアイロンは厳禁です。蒸気によってカビ菌の繁殖がさらにひどくなる可能性があります。

3.「お茶っ葉」を使ってナチュラルに消臭

ファブリーズ等の化学製品は使えない着物でも、天然製品を使った消臭対策なら行えます。そのひとつが緑茶を飲むための「お茶っ葉」を使った方法です。

「茶葉」には強い消臭効果があり、鎌倉時代頃から着物や倉庫等の消臭対策に用いられてきました。ちなみにファブリーズ等、現代の消臭製品にも茶葉エキスを使っているものが登場しています。

こんな時の消臭対策におすすめ

・カビの臭いの一時的な対策
・タバコの臭い
・ペットの臭い 等

お茶っ葉で着物を消臭する方法

1)緑茶用のお茶っ葉(煎茶や茎茶)をフライパンに3つかみ~4つかみ程度入れます。
2)コンロを中火にして、お茶っ葉を乾煎り(からいり)します。
3)徐々に火を弱くして、茶葉が焦げないようにします。
4)お茶っ葉がカラカラに茶色くなったら、お皿等に取っておきます。
5)しばらく冷まして粗熱を取ります。
6)3~4枚の和紙を用意して、一枚ずつお茶っ葉を包みます。
7)着物を包んである「たとう紙(文庫紙)」の中に、6)の和紙を3~4箇所に分けて置きます。
8)数日間放置しておきます。
9)臭いの状態を確認して和紙の位置を少し動かし、さらに数日間置いておきます。

お茶っ葉で着物を消臭する時の注意点

・和紙は習字用のものでもOKです。ティッシュペーパーやキッチンペーパー等は使用できません。
・茶葉がこぼれださないように、きっちりと包みましょう。
・テフロン加工のフライパンでは乾煎りで加工が取れる恐れがあります。鉄フライパン等が理想的です。

4.着物クリーニング店で根本的な臭い対策

上でご紹介した「ファブリーズを使わない着物の消臭対策」は、万能とは言えません。臭いの原因によっては対策がほとんど効果を発揮しなかったり、一度おさまった臭いが何度も繰り返すことがあります。

しつこい着物の臭いの例

・カビの臭い:カビ菌はご自宅では除去できないため、臭いが繰り返し発生します。
・防虫剤の臭い:ナフタリン等の臭いは繊維に染み込みやすく、ご自宅では取れにくいです。
・匂い袋のかおり:長期間の保存中に香料が繊維に染み込んでいるため、根本的な対策が必要になります。

このような場合、「着物にファブリーズ」はもちろんのこと、ムリに自宅での消臭対策を続けるのはおすすめできません。着物クリーニング店等の専門店に相談をして「臭いの原因」を除去してもらいましょう。

おわりに

日常生活ではとても便利なファブリーズですが、着物に使ってしまうと大きなトラブルの原因となってしまうこともあります。着物のアフターケアではファブリーズに頼らず、陰干し等の素材に負担をかけにくいお手入れを心がけましょう。


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