着物の保管方法がわからないという声をよく耳にします。実は着物を保管するには、湿気の少ない保管場所を選ぶ、吸湿性の高い桐のタンスや衣装ケースを使用する、年に2~3回は虫干しをするなど、押さえておきたいポイントがあります。

また、実際に着物をタンスや衣装ケースに収納するときの4つの注意点も併せて紹介します。

着物を保管する前には必ずクリーニングへ

一度でも袖を通した着物は、保管前には必ずクリーニングに出すことが大切です。

着物を着たあとは、陰干しをして汗や湿気を取り除き、着物ブラシでホコリを払い、汚れやシミをしっかりチェック。軽いシミなら自宅で対処する方も多いでしょう。

これは着物を着た後には欠かせないお手入れですが、そのまま長期間保管するのはNGです。

一度しか着ていない着物だから、陰干しをして汚れやシミも落としたからと、そのまま長期間タンスで保管してしまうと、目に見えないため取り切れていなかった汗や汚れが、カビやシミ、虫食いなどの原因になってしまいます。

長期間保管する前には、必ず着物専門のクリーニング店で丸洗いと汗抜き、シミがあるなら染み抜きをお願いすることが、着物を長期間、キレイな状態で維持することにつながります。

着物を保管するには保管場所の環境が大切

着物を保管するうえで大切なのが、収納する環境です。ただタンスにしまうのではなく、湿気に注意して保管することで、着物に起こるトラブルを予防することができます。

そのため、高温多湿の部屋で保管しないように気をつけましょう。

とくにマンションは気密性が高く、戸建てよりも湿気が溜まりやすいので注意が必要です。

例えば、お風呂場やトイレに隣接したクローゼットや押し入れは避けて。南向きや西向きなど、直射日光が当たるため高温になる部屋も避けた方がよいでしょう。

着物は桐のタンスで保管するのがオススメ

クリーニングから戻って来た着物は、桐のタンスに保管するのが最適です。

では、なぜ桐のタンスが着物の保管に向いているのでしょうか。

実は桐には湿度が高くなると水分を吸収し、湿度が低くなると水分を放出する性質があります。そのため着物を湿気から守り、カビの発生を予防することができるのです。

さらに、桐の香りには虫をよせつけない防虫効果もあるため、着物を長期間保管していてもキレイな状態を維持することができます。

とはいえ、天然の桐タンスは高級品ですし、最近の住宅事情からも桐のタンスを家に置く人は少なくなっています。そのため、押入れやクローゼットにそのまま収納できる、桐の衣装ケースなどを利用している人もいるようです。

プラスチックの衣装ケースで保管するには

着物の保管には桐のタンスや衣装ケースが良いといわれても、価格や置き場所などを考えると、簡単には購入できないですよね。

とくに着物を1~2枚しか持っていない人にとっては、桐のタンスをわざわざ購入する選択肢はないはずです。

そこで、プラスチックの衣装ケースを上手に利用する方法を紹介しましょう。

プラスチックの衣装ケースの問題点は、湿度を調整してもらえないこと。通気性が悪いので、どうしてもカビや虫が発生しやすくなります。そこで、衣装ケースを押し入れなどに直に置くのではなく、下にすのこを敷くなど通気性を良くしてから置きましょう。

また、押し入れやクローゼットには湿気がこもりがちですから、衣装ケースの底に除湿シートを敷くことも忘れずに。

プラスチックの衣装ケースの中には、気密性の高いタッパーウェア型のものがあります。

密封力が強く、湿気や光、埃や虫を防いでくれるので、利用してみるのもひとつの方法です。

できるだけ大きなサイズのものを用意するのもポイント。たとう紙に入れた着物をしまう際に、折らずに入れられるサイズを選べば、着物がシワになるのを防ぐことができます。

着物を保管するときの4つの注意点

着物を保管する場所が整ったら、実際に着物を収納していきましょう。

(1)着物は本畳みにして、1枚ずつたとう紙に包み保管します。

たとう紙とは着物を保管するための紙で、湿気を吸収し、カビが生えるのを防いでくれます。さらにシワになりにくく、重ねて保管する時も着物同士の摩擦を防いでくれます。

ただし、着物の湿気を吸ってくれるたとう紙は時間が経つにつれて、毛羽だったり、ヨレヨレになったり、シミや変色を起こすことも。そのまま着物を包んでいると、着物にも悪影響になるため、年に数回はたとう紙を確認して、状態が悪いようならすぐに交換しましょう。

(2)タンスや衣装ケースにぎゅうぎゅうに詰め込まない。

着物を無理に詰め込んではいけません。重ね方が悪いとシワの原因になりますし、型崩れする危険性も。

1枚ずつたとう紙に丁寧に包んだ着物は、5枚程度重ねたら、次の引き出しやケースに保管しましょう。

(3)正絹とウールの着物は分けて保存します。

着物を保管する時に、ウールの着物と正絹の着物は一緒に入れないことも重要です。

ウールの着物は虫食いが起こりやすいため、正絹と一緒に保管していると、正絹の着物にも虫がつく可能性があります。

同じタンスやクローゼットにウール素材のニットやマフラーなどがある場合にも、正絹の着物は衣装ケースに入れるなど必ず分けて収納しましょう。

(4)防虫剤を入れるなら1種類だけを使用します。

数種類の防虫剤を併用してしまうと、化学反応を起こし、シミや変色の原因になることがあるため、欲張らず1つに決めることが大切です。

防虫剤の影響で着物が変色したり、シミができることがあるので、防虫剤は着物に直接触れないように入れること。半年に一度は交換することが必要です。

除湿剤を入れている場合も、水分が溜まりすぎるとカビの原因になるため、こまめに状態を確認して交換を。

昔から防虫剤として使用されている樟脳を入れたまま、長期間タンスに保管したままにしていると、着物に匂いが移ってしまい、取るのが難しくなってしまいます。こまめに風を通しておくことも必要です。

着物は保管中も年に数回、虫干しが必要に

着物の保管はタンスや衣装ケースに収納すればおしまい、というわけではありません。

着物には年に2~3回ほど虫干しが必要です。

虫干しとは着物が吸収してしまった水分やカビ、ホコリ、折りジワなどを取るために、風通しのよい場所で年に最低でも1回、できれば3回ほど干すことをいいます。

虫干しを行うのは、雨が少なくて湿度の低い時期が適しているといわれ、関東~中部地方周辺では、次の時期が行われています。

土用干し 梅雨明け後の7月下旬~8月上旬

秋干し 秋晴れの続く10月上旬~11月上旬

寒干し 冬晴れの続く1月下旬~2月上旬

2~3日晴天が続いた後の天気のよい日の10時から14時までがベストタイム。

普段使っているハンガーでもかまいませんが、できれば着物用ハンガーにかけて、直射日光の当たらない風通しのよい場所に、2~3時間程度干すことがポイントです。

まとめ

着物を長期間保管するには、クリーニングをすること、湿気の少ない環境を作ること、たとう紙に包んで丁寧に保管することが大切です。

また、保管してしまえば終わりではなく、たとう紙や防虫剤を取り替える年に2~3回は虫干しをするなど、こまめに状態を確認することも必要です。

手間がかかるので驚いている方もいるかもしれませんが、大切な着物をカビやシミ、害虫から守り、未然にトラブルを防ぐための作業ですので、ぜひ続けてくださいね。