着物についた防虫剤の臭い取りに苦戦していませんか?何年かぶりに出した着物は防虫剤の臭い取りが欠かせませんが、この臭いがなかなか消えなくて、とても着られる状態ではないことも。虫食いから着物を守るのに役立つ防虫剤ですが、臭いが付くのは困りものです。

そこで着物についた防虫剤の臭い取りの方法と、そもそも防虫剤の臭いを着物につけないための予防法について解説します。

スプレーはダメ?防虫剤の臭い取りNG対策

普段着向けの洋服と比べて、着物はデリケートな素材と染め方で作られています。そのため洋服であれば大丈夫な防虫剤の臭い取り対策が、着物ではNGということも。代表的なNG対策をまとめてみました。

消臭スプレーは絶対にNG!

『ファブリーズ』や『リセッシュ』等の消臭スプレーを着物についた防虫剤の臭い取りに使うのはNGです!消臭スプレーは水分が多く、「輪ジミ(水シミ)」や「柄の滲み(にじみ)」等のトラブルを起こす可能性があります。

ちなみに、各消臭スプレー製品の注意書きにも「着物等の和装製品」への使用を禁じることはハッキリと書かれています。

香水や匂い袋は着物のシミになることも

香水類や匂い袋で、着物に付いた防虫剤の臭いを目立たなくする…これも実はNGです。香料の上乗せで確実に防虫剤の臭いを隠せるとは限りません。2つのニオイが混じって、かえってイヤな臭いになってしまうこともあります。

また匂い袋を長期的に着物にくっつけて置いておくと、そこからシミになってしまうことも。リスクが大きく、おすすめできない対策と言えます。

アルコールは変色の原因に?

アルコール類(無水エタノール等)を使った消臭方法も、着物についた防虫剤の臭い取り対策にはあまり向いていません。染色方法によっては変色や色抜け・褪色(色あせ)といったトラブルを起こしてしまうことがあります。

着物の防虫剤の臭いを取る3つの対処法

では着物の防虫剤の臭いを取るには、どのような対処をすれば良いのでしょうか?

1.陰干しで防虫剤の臭いを飛ばす

「陰干し(かげぼし)」は、もっとも伝統的な着物の臭い取りの方法です。染色や箔・刺繍装飾の有無等に関係なく、どの着物でも行いやすい安全な消臭対策でもあります。

陰干しの方法

1)陰干しをする場所を選びます。屋外の場合には直射日光にあたらない場所を。屋内の場合は日差しが入らない窓から離れた場所で、風通しが良く、着物を引きずらない高さがある部屋が理想的です。
2)着物ハンガー(和装ハンガー)に着物をかけて干します。
3)屋外の場合、夜間は湿りやすいので取り込みます。屋内の場合、常に窓を空けるかエアコン・扇風機をかけて除湿をします。
4)2週間~1ヶ月程度陰干しを続けて、着物についた防虫剤の臭いをしっかりと飛ばします。

2.スチームアイロンで手軽に消臭

「陰干しをゆっくりしている時間がない」という時には、スチームアイロンをかけるのも手です。蒸気の力で繊維の奥に隠れている臭いを飛ばし、着物に付いた防虫剤の臭いを目立たなくしてくれます。

ただし、以下のような場合にはスチームアイロンが使えないので注意しましょう。

スチームアイロンがかけられない着物の例

・正絹の着物:正絹(シルク)は水分を縮みやすい素材です。慣れない人が正絹着物にスチームアイロンをかけると着物がはげしく収縮し、縮みシワや型崩れを起こす恐れがあります。
・素材がわからない着物:上記の「正絹(シルク)」の可能性があるので、スチームアイロンの利用はおすすめできません。
・絞り染めの着物:絞り(しぼり)の独特の風合いが損なわれるので、一般的なアイロンはNGです。
・金箔・銀箔加工がある着物:金箔等の箔(はく)がはがれたり変色する可能性があります。
・刺繍加工がある着物:刺繍(ししゅう)部分が変色したり、歪んでしまう可能性があります。
・カビ臭い着物:着物から防虫剤だけでなくカビの臭いがする場合、着物のカビ菌が生息しています。蒸気に含まれる水分でカビ菌が増えやすいので、スチームアイロンは使えません。

3.置型タイプの消臭剤で防虫剤の臭い取り

スプレータイプの消臭剤は、上で紹介したとおり着物には使えません。でも冷蔵庫や室内用の「置型タイプの消臭剤」をうまく使えば、着物に付いた防虫剤の臭い取りができます。

用意するもの

・無香料タイプの消臭剤(置型の冷蔵庫用もしくは室内用)
・大型のビニール袋(着物を畳んだ状態で平らに入れても余裕があるサイズ)
・ガムテープ

着物についた防虫剤の臭い取りの手順

1)着物をたたんだ状態でビニール袋に入れます。
2)同じビニール袋に消臭剤を少し離して置きます。
3)ビニール袋をガムテープで密閉します。
4)数日~1週間程度置いておき、袋を空けて着物の臭いをチェックします。
5)着物の防虫剤の臭いが取りきれていない場合は、さらに数日程度置きます。

※着物と消臭剤は少し離して置きましょう。密着させると、その部分が変色・色抜け等を起こす可能性があります。
※香りがあるタイプの消臭剤は使用できません。匂いがさらに混じって悪臭となることがあります。
※1ヶ月以上着物をビニール袋に入れ続けないようにしましょう。着物が蒸れてカビ・虫害等が起こりやすくなります。

再発させない!着物につく防虫剤の臭いの予防法

「着物の防虫剤の臭いが消えた!」と安心して、対策を取るのを終わりにしていませんか?使っている防虫剤や保管方法がそのままでは、また同じトラブルが起きてしまうかも。今後のための予防対策もしておきましょう。

着物用防虫剤は「無香料タイプ」を!

着物を保管する際の防虫剤は、金糸・銀糸や絹等にも使える「きもの専用」を選ぶことが大切です。ただし「樟脳(しょうのう)」「ナフタリン」等の昔ながらの着物用防虫剤は、独特の臭いが強いのでおすすめできません。

着物用防虫剤はかならず「無香料タイプ」「無臭タイプ」を選びましょう。特に以下のような臭いが付きにくい防虫成分を使った防虫剤だと安心です。

着物の防虫成分の例

・フェノトリン
・エムペントリン

年に2回は虫干しをしよう

タンスやクローゼットの中の空気が動かず蒸れた状態だと、着物に防虫剤の臭いが付きやすくなります。1年~2年以上も着物を保管したままだと、無臭タイプでも防虫剤の臭いが着物に目立つことがあるので注意が必要です。

年に1~2回は虫干し(陰干し)をして、着物の繊維の中にたまった空気を飛ばす習慣を付けましょう。虫干し(陰干し)の方法は上でもご紹介しましたが、防虫剤の臭いが付く前の予防対策なら干す期間は1日~2日程度でOKです。

着物についた防虫剤の臭いが取れない時は専門店へ

着物に付いた防虫剤の臭い取り対策をしてみても、ニオイがまったく改善されない…これには以下のような理由が考えられます。

・着物にカビが生えている(カビ臭さと防虫剤の臭いが混じっている)
・樟脳とナフタリン・パラジクロルベンゼン等の併用で、化学反応を起こしてしまっている
・防虫剤の入れすぎ等で気化した物質が着物に付着している(見えないシミになっている) 等

防虫剤の臭い取り対策(陰干し等)を1ヶ月程度行っても着物の状態の改善が見られない場合には、それ以上のセルフケアをムリに続けず、着物クリーニングの専門店に相談をしましょう。

おわりに

着物に付いた防虫剤の臭い取り対策・予防法はいかがでしたか?防虫剤等の着物の臭いを自宅で取るには、一週間~1ヶ月程度の時間がかかることもあります。

イベント間際になってから着物を出して「防虫剤臭い!」と慌てないよう、早めに準備をする習慣をつけることも大切です。