しまっていた着物に、知らないうちに黄色や茶色のシミができていた…これは「黄変」という着物のトラブルです。パッと見には黄変は普通のシミのように思えますが、実は着物の一般的なシミと黄変では様々な違いがあります。

着物の黄変に合わせた適切な対処を取らないと、着物をダメにしてしまうこともあるんですよ。今回は着物の一般的なシミと黄変の違いを、5つのポイントに分けて解説していきます。

黄変は「着ない着物」にもできる

一般的な着物のシミと「黄変」の違いとして、まず「ほぼ着ない着物にも発生するかどうか」という点が挙げられるでしょう。普通のシミには食べこぼしや化粧品汚れ、泥はね等がありますが、どれもよく着る着物にほど付くシミですよね。

ところが黄変の場合、一度しか着たことが無い着物・ほとんど袖を通さない着物にも起こってしまうことがあるのです。

黄変は酸化で起こる「変色シミ」

「黄変」は、着物の生地がなんらかの原因で酸化し、変色する(黄ばむ)ことで起こります。この「酸化」が起こる理由としては、大きく分けて以下の2つの原因があります。

1)汗や脂肪(皮脂)等の汚れが時間がたつほどに酸化して黄変する
2)変質しやすい繊維(特に絹)が、時間が経つごとに自然に酸化していく

汗や皮脂等の汚れは目に見えにくいため、多少付いても「汚れていない」と思って着物をそのまま保管してしまう人がほとんど。ところが汗のミネラル成分は徐々に生地の酸化を進ませ、1~3年程度で着物を黄変させます。

また一度も手を通していない着物でも、正絹(シルク)等の酸化をしやすい生地でできている場合には黄変が起こりやすくなります。クローゼットやタンスの中の酸素と触れ合って、少しずつ黄ばみが起こっていくのです。

一般的な着物のシミが「普段着ほど付くシミ」であるのに対し、黄変は「大切にしまっている着物にもできるシミ」と言えるかもしれません。

着物のシミ抜きでは黄変は消えない?

一般的な着物の「シミ」ができた場合、「シミ抜き」を自分でするか、クリーニング店にシミ抜きを依頼する人がほとんどでしょう。この「シミ抜き」とは、着物の繊維についた汚れを取るための作業です。

着物のシミの汚れの元は水に溶ける「水溶性」・油に溶ける「油溶性」、そして「不溶性」のいずれかの特質を持っています。各性質に合わせた溶剤等を使えば汚れが分解でき、シミ抜きできるというわけです。

ところが上記のような着物のシミ抜きでは、「黄変」はキレイにすることができません。黄変には特別な「黄変抜き」という対処が必要になります。

漂白と染色補正をする「黄変抜き」

上でも解説したとおり、黄変は一般的な着物のシミとは違って、繊維を変色させてしまっている状態です。そのため単に汚れを取り除いただけでは変色した部分が元に戻りません。

黄変抜きでは黄ばみ等の変色を取り除きつつ、さらに着物の地色を元に戻す作業も行います。

黄変抜きの手順

1)汚れの除去:黄変の原因がシミである場合、シミの特質に合わせたシミ抜きを行って繊維に付いている汚れを取り除きます。

2)漂白:黄ばみ等の変色を漂白していきます。着物の生地を傷めないための専門知識と高い技術が必要とされる作業です。

3)染色補正(色掛け):剥げてしまった染料の部分を補正して、色味を元の状態に近づけていきます。

一般的な着物のシミの場合、シミ抜きは自宅で済ませるという人もいることでしょう。しかし黄変では上記のように複雑な手順があるため、ご自宅での自己処理はできません。専門のクリーニング店での対処が必要になります。

黄変抜きができないクリーニング店もある?

着物の一般的な「シミ」と「黄変」では、処理ができるクリーニング店舗にも違いが出てきます。一般的な汚れやシミであれば、「きものOK」と書いているクリーニング店ならほぼ受け付けてくれることでしょう。

ところがこれが黄変になると「クリーニングしても落とせないと断られた」「そもそも受け付けてくれなかった」といった経験者の声が一気に増えます。手強いシミである黄変については、処理できないクリーニング店舗も多いのです。

上でご紹介したとおり、黄変抜きは細かな手仕事を必要とする高度な作業であり、着物を傷ませないためには様々な専門知識が求められます。カンタンに言えば「職人さんがいるようなお店でないとムリ」というわけなのです。

着物の黄変シミができた場合には、以下のようなお店にクリーニングを依頼した方が良いでしょう。

黄変抜きのお店選びのポイント

1)着物専門のクリーニング店もしくは悉皆屋であること
2)丸洗い(機械洗い)だけでなくシミ抜き・手洗い(洗い張り等)のメニューがあること
3)事前の詳しい問い合わせができること
4)黄変抜き作業に入るまえに見積もりを出してくれる店であること

着物のシミと黄変抜きはクリーニングの期間も違う?

上でも解説したとおり、一般的な着物のシミと黄変では、クリーニング店での処理内容に大きな差があります。そのため、クリーニングの納期・預ける期間にもかなりの違いが出やすいです。

一般的な着物のシミ抜きの場合

納品期間:1週間~2週間

黄変抜きの場合

納品期間:1ヶ月~2ヶ月以上

着物の黄変の範囲が広い場合や、変色による褪色(色あせ)が酷い場合等には、染色補正業者によるさらに専門的な対処が必要となることもあります。そのため、納期がさらに長くなることも考えられるでしょう。

また成人式前等の繁忙期には、納期が平均の2倍~3倍程度にまで伸びることも珍しくありません。一般的な着物のシミ抜きに比べて、黄変抜きは長く時間がかかると考えておいた方が無難です。

着物の黄変は「処理ができない」こともある

着物についた普通のシミと黄変の違いとして、「黄変は専門店でも対処ができないことがある」という点も覚えておきたいところです。着物の種類・黄変の状態によっては、一切の処理ができないケースもあります。

「着物のシミ抜きなら取り扱ってくれたのに、どうして黄変はムリと言われるんだろう…」と、残念に思う方も多いかもしれません。これには、主に以下の2つの理由が挙げられます。

生地が漂白に耐えられない

そもそもの生地が薄い、古くなって生地がもろくなっている、酸化で生地が傷んでいる等の理由で、漂白をすると生地が破けたり穴が開いてしまう可能性が高い。

黄変抜きができない例
・生地全体が経年劣化している古い着物
・長襦袢の黄変
・裏地(胴裏)の黄変 等

染色補正ができない

糸を先に染めてから織っていたり、細かな模様が入っている等の理由で、漂白で抜けた色合いを再現させることが難しい。

黄変抜きができない例
・先染めの着物
・江戸小紋の着物
・刺繍部分の黄変
・金糸銀糸加工部分の黄変 等

ただし専門的な知識があるクリーニング店舗や悉皆屋ならば、黄変抜き以外の対応を提案してくれることもあります。例えば胴裏(裏地)の黄変ならば、シミ抜き・黄変抜きはできませんが裏地を交換することで着物をキレイにすることも可能です。

黄変抜き以外の対応も含めて多角的に考えてくれるような、キチンとした知識を持つ専門店に相談をすることをおすすめします。

おわりに

着物の「シミ」と「黄変」の違いはいかがだったでしょうか。一般的なシミ・汚れに比べて、黄変は専門店でも扱いが難しいやっかいな存在と言えます。

だからこそ、黄変を見つけた時には「信頼できる店」に頼ることが大切です。クリーニングの料金の安さや便利さだけでなく、安定した技術と知識を持った店舗に依頼をするようにしましょう。