ベンジンは自宅で着物のシミ抜き等ができる便利なアイテム。「着物のケアにはベンジンがおすすめ」と、呉服屋さんや着物好きな人から聞いたことがあるという人も多いのではないでしょうか?

ただこのベンジン、使い方にはちょっとコツも必要なんです。今回は着物のシミ抜きでのベンジンの上手な使い方や注意点、ベンジンのおすすめ製品等を初心者向けにわかりやすく解説していきます。

「きものSalone」の編集長がオススメする着物クリーニングはここ。 きものtotonoe 


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そもそもベンジンとは何?

ベンジンとは、石油を精製して作った液体のこと。揮発性(きはつせい)が非常に高く、液体の状態からすぐに蒸発して気体になる点が特徴となっています。

ベンジンは着物等の衣類の汚れ落としの他、機械製品の洗浄やカイロ用等、様々な使い方をされています。ただ用途により精製度や成分が違うので、ご家庭での着物のケアには「シミ抜き用」と書かれているベンジンを使うのがおすすめです。

着物のシミ抜きにベンジンが活躍する2つの理由

着物のシミ抜きや汚れ落としには、昭和の時代からベンジンが重宝されてきました。なぜ着物のシミ抜きにはベンジンがおすすめなのでしょうか?

油系の汚れを溶かして落とせる

着物だけでなく洋服のお洗濯でも、「油シミ」や「皮脂汚れ」に困った経験がある人は多いはず。油分が多いシミは「油溶性(油に溶けやすい)」という特徴を持ち、反対に水にはなかなか溶けません。そのため水洗いや一般的な洗剤では、汚れを落としにくいのです。

でも「ベンジン」は石油から生まれた液体ですから、油溶性のシミを溶かすのは大得意!以下のようなガンコなシミも溶かし出してくれます。

油溶性の汚れの例

・油分を含む食べこぼしのシミ:マヨネーズ・ドレッシング・揚げ物のシミ等
・化粧品のシミ:口紅・ファンデーション等
・皮脂による汚れ:衿元の皮脂汚れ・袖口の皮脂汚れ等

「これは落ちないかも」と諦めていた着物の汚れも、ベンジンの上手な使い方を覚えればキレイにできるかもしれない!というわけですね。

水洗いできない着物にも使える

正絹(しょうけん・シルクのこと)やウールで作られた着物は、基本的に「水洗い」による洗濯やシミ抜きができません。シルクやウールは水分で収縮しやすく、着物がはげしく縮んだり、風合いが失われる可能性があるためです。

でも揮発性が高いベンジンなら、液体は繊維の中に残らず、空気中に蒸発してしまいます。そのため水でのすすぎ洗いをする必要がありません。水洗いができない着物の汚れ落としにも、ベンジンはおすすめなのです。

ベンジンの使い方を覚えよう!

ベンジンの使い方は、一般的な洗剤類とはかなり違います。着物のシミ抜きでベンジンはどのような使い方をするのか、しっかり覚えておきましょう。

ベンジン以外に準備するもの

・白いタオルかサラシ2~3枚:色が移って汚れても良いものを2~3枚準備しておきます。
・ガーゼ数枚:白い綿のハンカチでも代用可能です。
・作業用手袋:手荒れ防止のために、ゴム手袋等をしておくと安心です。
・マスク:揮発性の高いベンジンを吸い込まないよう、マスク着用がおすすめです。
・着物ハンガー:着物専用のまっすぐな形をしたハンガーです。乾燥用に使用します。

着物シミ抜きでのベンジンの使い方・手順

1)着物を広げて、シミ・汚れがある箇所の下にタオルまたはサラシを敷いておきます。
2)ガーゼにベンジンを適量染み込ませます。
3)シミ・汚れがある部分を、ガーゼでスタンプを軽く押すようにトントンと叩き、ベンジンを染み込ませていきます。
4)汚れが浮いてきたらガーゼの位置をずらして、常にガーゼのキレイな面で汚れを移し取るようにします。
5)汚れが落ちたら、新しいガーゼにベンジンを少量含ませます。
6)ベンジンで濡れている部分と濡れていない部分の境目がわからなくなるように、優しく叩きながらボカしこんでいきます。
7)十分にボカシてなじませたら、着物ハンガーにかけて半日程度陰干しします。

失敗も多い?着物にベンジンを使う時の注意点

ベンジンの使い方は一見するとカンタンそうなのですが、実は失敗をする人が少なくありません。せっかくの着物をダメにしてしまった…というケースも多いのです。

またベンジンは揮発性・引火性のある危険な物質であることも忘れてはいけません。着物シミ抜き中にベンジンの使い方を誤ると、大きな被害となる可能性もあります。ベンジンを使う時には、以下のような点に十分に注意しましょう。

着物が変色するかも?事前テストは必須

着物の染料によっては、少量のベンジンをつけただけでも色落ち・変色が起こることがあります。特に天然染め(草木染め等)の場合には変色等の危険性が高いです。

初めて着物にベンジンを使う時には、事前のテストを強くおすすめします。裏側等の目立たない部分、もしくは購入時に付いてきた共布等にほんの少量のベンジンを付けて、変色や色落ちが起きないか確認しましょう。

ゴシゴシこするのは絶対NG!

「汚れが落ちないから…」と、ベンジンを付けたガーゼで着物を強くこするような使い方をするのはNGです。着物の色がハゲたり、毛羽立ち(けばだち)が起こる可能性があります。毛羽立ちが起きた場合、風合いを元に戻すのは専門店でも難しいです。

ぼかしこまないと輪ジミになる

「汚れが落ちたからもう終わり!」と、ベンジンで濡れた着物をそのまま乾かすような使い方をするのも厳禁です。濡れている輪郭(りんかく)がクッキリ見えている状態だと、そのスジが「輪ジミ」になって残ります。

ベンジンの使い方を誤って着物に輪ジミができると、自宅ではシミ直しができません。輪ジミを作らないように、ていねいに境界線をぼかしましょう。

使用中も乾燥中も必ず「換気」を!

ベンジンは空気中にどんどん蒸発する石油溶剤です。お部屋の中にベンジンの成分が溜まって吸い込んでしまうと、吐き気・頭痛・めまいを起こすことがあります。作業中や着物の乾燥中は必ず窓を開けるか、換気扇を回しましょう。

またお年寄りや小さなお子様・体の具合の悪い人等がいる部屋では、着物のシミ抜きのためにベンジンを使うのは避けることをおすすめします。

ライターやストーブは使わないで!

ベンジンは引火性の高い物質です。使用中にはストーブやライター等の火器類は使えません。またベンジンを染み込ませた着物やガーゼ類も、火器類のそばには置かないようにしましょう。

着物ケアにおすすめのベンジン製品は?

ベンジンは薬局・ドラッグストアの他、ホームセンター等でも販売されています。ここでは着物のシミ抜きとしての使い方におすすめのベンジン製品をピックアップしてみました。

リグロイン/試薬リグロイン :平均価格500ml 1,000円~1,600円

「リグロイン」はベンジンの一種なのですが、日本で販売されている一般的なベンジン(工業ガソリン1号)とは分子構造が違い、揮発性がやや低いという特徴を持っています。カンタンに言うと、すぐには蒸発しないのです。

そのため初めて石油溶剤を使う人でも、マイペースなスピードで「ぼかし」の作業を行うことができます。「ベンジンの使い方に不安がある、着物に輪ジミができたらどうしよう」と心配な人は、リグロインを選ぶと良いでしょう。

Aベンジン(大洋製薬):平均価格500ml 360円~500円

シミ抜きの他、シールはがし等にも使えるベンジンです。大容量なのに価格が安く、着用毎の着物の衿・袖口のケア等もこまめに行うことができます。ただリグロインに比べると揮発が早いので、着物の扱いやベンジンの使い方に慣れた人におすすめです。

おわりに

着物の汚れを落とす「ベンジン」の使い方やおすすめ製品はいかがでしたか?ベンジンは上でもご紹介したとおり、使い方にコツがある溶剤です。いきなり留袖や振袖等の高級な着物には使わず、まずはベンジンの使い方に慣れることをおすすめします。

普段着着物や洋服類等で十分に練習をしてから、大切な着物のケアにベンジンを活用するのが良いでしょう。


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