成人式や結婚式等で着物を着る時には、美容院やホテルに着物を持ち運びする必要がありますね。この時「どうやって着物の持ち運びをしよう」と悩む人も多いのではないでしょうか?
着物の持ち運び方法としては、「風呂敷」「きものバッグ」「スーツケース(キャリーバッグ)」のどれかを使うのが一般的です。ここではこの3つの方法の着物の入れ方・持ち運び方や、特徴を比較していきます。
目次
伝統的な着物の持ち運び方法「風呂敷」
風呂敷(ふろしき)とは、日本古来のモノを包んだり運んだりするために使う布のこと。江戸時代中頃に「銭湯」が発展し、着物や入浴道具を布に包んで持ち運びをしたため「風呂敷」という名前が根付いたとも言われています。
風呂敷には様々なサイズがありますが、着物を持ち運びするための風呂敷は「三巾(一片約100センチ)」以上のものがおすすめです。
風呂敷で着物を持ち運びする方法
1)風呂敷を広げます。
2)一番下に畳んだ帯を対角線上に置きます。
3)三つ折りにした長襦袢を同じ向きに置きます。
4)三つ折りにした着物を重ねます。
5)帯揚げ・帯地げを上に重ねます。
6)対角線の角を取って、本結びにします。(布が余る場合は中に少し折込みます)
7)反対の対角線の角を取って、もう一度本結びにします。
8)両手で底の両端を持って持ち運びます。
※結び目が縦結びにならないように注意しましょう。縁起が悪く、特に結婚式等の席ではタブーとされています。
※濃い色の風呂敷は一度水洗いをして、色落ちしないように対策しておきましょう。
安価で省スペース!気軽さが魅力の風呂敷
風呂敷を着物の持ち運びに使うメリットには、以下のようなものが挙げられます。
風呂敷のメリット
・平均価格が安め(1,000円台から探せる)
・家にあるものを使ってもOK
・畳んでしまえば幅をとらない
・風呂敷バッグとしても使える
・他の収納にも使用可能
大きな魅力は、畳めば薄くコンパクトになる点でしょう。着物の持ち運びに使わない時には幅を取らずに収納しておけます。洋装にも合う柄のを選べば、バッグの形に結んで「風呂敷バッグ」として使うことも可能。また価格帯も比較的安めです。
風呂敷の運搬力はちょっと残念?
風呂敷のデメリット
・両手で持たないといけない
・小物類を持ち運びしにくい
風呂敷で包んだ着物は、水平に持ち運びをしないといけません。片手で持ったり結び目をつまむように持つと、中の着物が片寄ってシワになってしまうのです。運搬中には常に両手がふさがるので、遠い場所への着物の持ち運びには向いていません。
また、草履やかんざし・衿芯・帯板等のその他の小物類も風呂敷に全部ひとまとめ…というのは残念ながら難しいところ。そのため一人で着付けに必要な着物一式を持ち運ぶのはやや大変になってしまいます。
風呂敷での着物の持ち運びはこんな人におすすめ
着付けをする美容院やホテルまで車で移動する人なら、風呂敷での着物の持ち運びでも大丈夫でしょう。またご家族やお友達と一緒に手分けして荷物を持つ場合も、どなたか一人が「風呂敷係」として両手で着物の持ち運びを行えばOKです。
着物好きなら必須?「きものバッグ」
「きものバッグ」とは、着物一式の持ち運び用に作られた専用のバッグのことです。呉服店や呉服コーナーのある百貨店、またインターネットでも販売されています。
きものバッグで着物を持ち運ぶ方法
1)着物バッグのベルトやバーがある側に、畳んだ帯・着物・長襦袢を入れます。折返しをした時の支えになるように棒の位置を調節しておきます。
2)肌着類やタオル等をなだらかになるように詰めて、ベルトで固定をします。
3)大きめサイズのきものバッグでは、下側になる方に草履を入れておきます。
4)帯紐等の小物類を小物専用のポケットにしまいます。
専用バッグは身軽でシワにもなりにくい!
きものバッグで着物の持ち運びをするメリットには以下が挙げられます。
きものバッグのメリット
・サイズが着物にピッタリ
・固定用のバーやベルトでシワになりにくい
・小物類までひとまとめにして持ち運べる
・バッグが軽く女性でも片手で持ちやすい
ベルトがしっかり着物を固定するので、着物一式を片手でスイスイ持ち運びできるのが最大のメリットです。「着物の三つ折り」という畳み方さえ練習しておけば、初めての人でもシワを作らずに安心して着物の持ち運びができるでしょう。
小物類専用のポケットがある製品も多く、着付けに必要な一式をコンパクトに収納できるのも嬉しいポイント。バッグ自体が軽量だったり、薄く畳んでしまっておける製品も登場しています。
着物を着ない人は登場回数が少ない?
着物の持ち運びには最適と言えそうなきものバッグですが、デメリットもあるのでしょうか。
きものバッグのデメリット
・キャスターは付いていない
・風呂敷より平均価格は高い(3,000円~10,000円)
・普通のバッグとしては使いにくい
着物の持ち運びの専用バッグとして作られている分、その他のシーンで使い勝手があまり良くないのがデメリットと言えそうです。着物を着る頻度が少ない人の場合、なかなか使用するシーンが出てこないかもしれません。
ただ現在では「洋服もしまえるきものバッグ」も登場しています。普段はガーメントバッグ(スーツやドレスを運ぶためのバッグ)として使うのも手です。
きものバッグでの着物の持ち運びはこんな人におすすめ
出先で着物を着ることが多い人、自分では着付けできない振袖(ふりそで)を着ることが多い人は持っておいた方が安心です。また、着物の扱いに慣れない人も持ち運びによるシワが付きにくい着物バッグを選んだ方が良いでしょう。
旅にも使える「キャリーバッグ・スーツケース」
キャスターの付いたキャリーバッグやスーツケース、中でも2泊~3泊用程度の小型タイプは着物の持ち運びにも向いています。
スーツケースで着物の持ち運びをする方法
1)スーツケースの固定ベルトがある側に、風呂敷やスカーフ等で包んだ帯・長襦袢・着物を入れます。
2)肌着類やタオル等を平坦になるように詰めてからベルトで固定します。
3)上下の隙間がある部分に、タオルや新聞紙を入れてピッタリに調節します。
4)小物類等はひとつひとつポーチや袋等にまとめて、反対側にしまいます。草履等の重いものは下になる側に入れましょう。
丈夫で汎用性もあるのが魅力
キャリーバッグやスーツケースで着物の持ち運びをするメリットには以下のようなものがあります。
スーツケースのメリット
・キャスターがあり重くても持ち運びやすい
・ベルトである程度は着物の固定ができる
・国内旅行や出張にも使える
・現在持っているスーツケース類を活用できる
・衝撃に強く遠出でも安心
着物や長襦袢、その他の荷物をひとまとめにすると、かなり重くなるものです。キャスターがあるスーツケースなら、遠い場所でもラクラク持ち運びができますね。すでにスーツケースを持っている人なら、コストを抑えることにも繋がります。
詰め方や運び方ではシワになる?
一見すると着物の持ち運びには理想的に思えるスーツケースですが、意外とデメリットもあるので注意が必要です。
スーツケースのデメリット
・価格が比較的高い(10,000円台以上~)
・車内持ち込みができない場合がある
・詰め込みに失敗すると着物にシワができやすい
・ベルトがキツすぎてもゆるすぎても着物にシワができる
・使わない時にかさばる
スーツケースはきものバッグとは違い、バッグのサイズやベルトの形状・ゆるさは着物に合わせたものではありません。そのためタオルや新聞紙等で隙間をしっかり調整しておかないと、持ち運びの間に着物がかたよってシワになってしまいます。
また移動手段によっては、スーツケースを車内・機内に持ち込めません。荷物の運搬中に乱暴にスーツケースを扱われた結果、中身がかたよる恐れも考えられます。「強く揺さぶっても動かない!」という位、万全な対策を取っておくことが大切です。
スーツケースでの着物の持ち運びはこんな人におすすめ
礼服やドレス・スーツ等を持ち運ぶ旅行に慣れた人、もしくは着物の扱いに慣れている人の方がスーツケースでの着物の持ち運びには向いています。これからスーツケースを購入をするのであれば、着物の持ち運び以外に旅行等の予定がある場合が良いでしょう。
おわりに
風呂敷、きものバッグ、スーツケース…代表的な着物の持ち運び方法には、それぞれ異なる良い点・悪い点があります。必ずしも「これが一番」とは言い切れません。自分が着物を着る頻度や移動方法等に合わせて、一番合った着物の持ち運び方法を選んでみましょう。