着物のたたみ方、とくに振袖のたたみ方は難しそうだと思いますよね。ところが着物のたたみ方は、振袖であっても覚えてしまえば意外とカンタン。平面的に裁断されている着物は、コツさえ押さえればキチッと四角に折りたたむことができます。
そこで3分でわかる着物のたたみ方「振袖編」を紹介。失敗しないための5つのコツをマスターしましょう。
目次
振袖をたたむ時には準備が大切!失敗しない5つのコツ
着物類をたたむ時には、まず「準備」をキチンとすることが大切!このプロセスを飛ばして「振袖のたたみ方」に取り掛かってから「やっぱり準備すれば良かった」と思っても、もう遅かった…なんてこともあるんです。5つのコツをしっかりクリアして着物をたたみましょう。
1.着用した振袖は陰干しする
1回着用した振袖等の着物類を、すぐにたたんで保管するのはNG!着用済みの着物には多くの汗等の湿気が含まれているので、そのまま保管するとカビや変色・虫害などの原因になります。
また着用した時のシワ(着ジワ)が残ったままの状態で着物を畳むのもやめましょう。着用した着物は着物専用のハンガーにかけて形を整え、半日~一日以上は通気性の良いところで「陰干し(かげぼし)をしておきます。
2.着物をたたむスペースを作る
振袖等の着物の本式のたたみ方では、洋服類とは異なり「立ったままで畳む」「テーブルの上で畳む」「ヒザの上で畳む」といった方法が取れません。着物をキレイに畳むには、以下のようなスペースが原則として必要なのです。
【着物を畳むのに必要な条件】
・縦横2メートル四方弱程度の空間があること
・平らな床・畳であること(ベッドの上等はNG)
・他の繊維がつかないこと(絨毯やラグの上はNG)
一人暮らしのお部屋等の時には、テーブル・椅子等を動かして作業しやすいスペースを作るようにしましょう。またお部屋の都合上どうしても絨毯の上でしか作業できない…という場合には、後述する衣装敷(いしょうじき)を準備することをおすすめします。
3.部屋を掃除しておく
振袖・着物の素材はデリケートなので、ホコリ等の付着はできるだけ防ぎたいところ。たたんでいる間にホコリ・繊維くず等が付かないように、事前に掃除機はかけておきましょう。なお直前になってから「水拭き」をするのはNG!畳・床に残った水分や湿気を着物が吸ってしまいます。
4.着物をたたむ時に必要・便利なグッズを準備する
着物の種類や今後の使用状況等に合わせて、以下のようなグッズを準備しましょう。
●タトウ紙(文庫紙)
着物や振袖を一枚一枚包んで保管するための紙です。良質な和紙で作られていて吸湿性が高く、湿気等から着物を守る役割も果たしています。
呉服店や百貨店等で着物を買った時には、購入時に店舗の名前入りのタトウ紙に包まれた状態で着物が届くことがほとんど。購入したての着物なら、そのタトウ紙を使って保管をしても問題ありません。
ただし昔からある着物、お母様やお祖母様が着ていた着物等でタトウ紙が古い場合(数年以上経過している場合)には、タトウ紙を新しいものに交換しましょう。タトウ紙は近年ではネット通販等でも購入できます。
●ものさし(定規)
着物・振袖のたたみ方では、特に身頃(みごろ)部分の折り目をキレイにつけられるかどうかが重要になります。折り目正しく畳むには、30センチ程度の「ものさし」があると便利です。和裁に使用する木製の「ものさし」が理想的ですが、同程度のサイズなら定規でも構いません。
●衣装敷(いしょうじき)
衣装敷(いしょうじき)とは、振袖等の着物の着替えや片付け等のために使う専用の敷物です。ほとんどの場合には丈夫な和紙やパルプで作られています。
サイズは小さいもので100センチ×150センチ、大きめのものだと200センチ×150センチ位。「振袖のたたみ方」といった作業等にも使用するのなら、200センチ程度の大型サイズが便利です。特に部屋が絨毯敷きで、繊維くずが付きやすいお部屋の場合には必ず用意しましょう。
衣装敷は呉服専門店等で取り扱っている他、ネット通販等でも購入できます。安いものなら数百円で購入でき、繰り返し使えるので、コスパ的にもオトクですよ。
●綿手袋(コットン手袋)
「5」の「手洗い」の項目でも解説しますが、手に付いている汚れは着物を傷める大きな原因となります。素手での作業が適していない人や、非常に繊細な着物の場合には、作業用に綿手袋を用意した方が安心です。
白い綿手袋はドラッグストア等で200円~300円前後で販売されている他、100円均一ショップ等でも柄入り綿手袋がガーデニング用・ハンドケア用等で販売されていることがあります。
●和紙
細かな刺繍が入ったり、金箔銀箔等が付いた着物・振袖の場合には、保管中に傷が付くのを防ぐために薄手の「和紙」を使います。和紙は呉服店で取り扱うこともありますが、購入が難しい場合には大きめの文房具店等に相談してみても良いでしょう。
5.しっかり手を洗う
着物・振袖のたたみ方では、着用している時よりも様々な部分に強く手を触れます。そのため手垢・手汗等の汚れが繊維に移ってしまい、これがカビ・変色の原因となることもあるのです。「振袖のたたみ方」の作業に入る前には、いつもよりていねいに手を洗うようにしましょう。
また最近、問題となっているのが「ハンドクリーム」による成分の付着です!ハンドクリームは油分が多く、触れた部分が取れにくい油性のシミとなってしまうこともあります。手洗い後には一切クリーム類をつけないでください。
なお、以下のような場合には素手での作業はおすすめできません。
【着物を素手で畳めない例】
・ハンドクリーム等を付けないと手荒れが起こる人
・ジェルネイル等の「つけ爪」をしている人
・現在「ひび割れ」「あかぎれ」等のトラブルが起きている人
・爪が割れている、ささくれができている人
・刺繍・金箔銀箔・総絞り等の繊細な着物
上記のような場合には、前述した「綿手袋」を着用して着物のダメージを防ぎましょう。
3分でわかる!振袖・着物のたたみ方
準備ができたら、さっそく着物を畳んでいきましょう。振袖・着物のたたみ方には、仮の畳み方である「袖だたみ(そでだたみ)」や「夜着だたみ(よぎだたみ)」等、いくつかの種類があります。ここでは振袖や一般的な袷(あわせ)の着物にも適したたたみ方である「本だたみ」を紹介します。
【本だたみの手順】
1)衿元(えりもと)を左側にして、振袖・着物を平らに広げます。
2)おくみを「おくみ付け」の縫い目に合わせて、手前に折り返します。
3)下前(したまえ:体の右側の部分)のおくみに、上前(うわまえ:体の左側の部分)のおくみを重ねます。
4)裾~腰部分の下前の脇縫い線に、上前の脇縫い線を合わせます。
5)上前の衿を下前の下前の衿に重ねます。
6)衿元を内側に折り、肩山(かたやま)と衿の交点を決めてからさらに半分に折り込みます。
7)衿の両端を持って軽く引き、衿の形を整えます。
8)肩~帯部分にかけての下前の脇縫い線に、上前の脇縫い線を合わせます。
9)背縫いの部分を軽く引き、形を整えます。
10)衣紋(衿の後ろ側)が三角形になるように整えて、折り込みます。
11)下前側の袖(左側の手が入る袖)を、袖付線に合わせて身頃側に折り返します。
12)振袖の袖の長さが丈の1/2以上ある場合には、半分の長さより少し短くなる程度に織り込んで調節します。
13)裾を持ち、身頃の部分(丈)が半分の長さ(二つ折り)になるように折ります。二つ折りにしたい部分に「ものさし」を入れると、さらにキレイにたたむことができます。
14)たたんだ身丈の両端(肩・身頃の下側)を両手で持って、裏に返します。
15)残った袖(下前・右手側の袖)を身頃の上に折り返して、出来上がりです。
※タトウ紙の長さや保管時の箪笥のサイズによっては、9)で身頃を折る時に二つ折りではなく「三つ折り」にすることもあります。
※刺繍(ししゅう)や箔(金箔・銀箔)等がある振袖の場合には、模様の部分に和紙をあてます。また9)で身頃を折る時には、折山部分に和紙を軽く巻いたものを挟み込みましょう。二つ折りになった時の摩擦が減り、刺繍や金箔が剥がれることを防いでくれます。
<<おわりに>>
振袖・着物のたたみ方はいかがでしたか?キチンと着物を畳んでおけば、シワや折れ等の心配なく、キレイな状態で着物姿を楽しめます。
なお「しばらく振袖を着ない」という時には、たたんだままで長期保管せず、一度クリーニングに出した方が良いでしょう。また「着物のシワが取れない」「どうしても上手に畳めない…」という時にも、変なシワが残ってしまう前に、クリーニングに出した方が安心ですよ。