着物の輪染みは、よく起こるトラブルのひとつ。ところが有名なわりに、原因や対処法を知らない人が多いシミでもあります。

中にはクリーニングに出さずに自己処理した結果、着物に輪染みができた…なんてケースも。着物をいつまでもキレイに着るために、輪染みの正しい知識も知っておきましょう。

今回は着物の輪染みについて、原因やクリーニングで取れるのかどうか等、よくある4つの疑問に回答します。

「きものSalone」の編集長がオススメする着物クリーニングはここ。 きものtotonoe 


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1.そもそも着物の輪染みとは何?

着物の「輪染み(輪ジミ)」とは、その名前のとおり輪っか(リング)のような形に付いてしまったシミのことです。円の中心部には汚れがほぼ見られず、環状部分のみ色が変わったように見えます。

「円」という言い方をしましたが、輪染みは必ずしも「丸」の形とは限らず、実際には不定形です。シミが付いた範囲がとても広い場合(袖が大幅に濡れた場合等)には、半円形やイチョウ型にシミの線が残ることもあります。

洋服の場合、輪染みはご自宅での洗濯や漂白の失敗で起こるのが一般的。また再度洗濯をすれば、比較的簡単に直せます。ところが着物では雨濡れ等でも輪染みができる他、クリーニング店ですら対応が難しいシミになることもあるのです。

2.着物の輪染みができる原因は?

着物に輪染みができる原因はひとつとは限りません。また一般的な「シミ(汚れ)」とは、原因が大きく異なることもあります。代表的な原因を見ていきましょう。

水濡れによる糊・ホコリの流れ出し

着物に輪染みができ、クリーニングに持っていくべきなのか迷うことになる…そんなトラブルが起こる大きな原因のひとつが「水濡れ」です。

水濡れの例

・雨・雪等で着物が濡れる
・傘の水滴が着物に飛ぶ
・手を洗う時等に水滴が飛ぶ
・コップの下についていた水滴が落ちる 等

「水濡れ」というと、雨等でグッショリと濡れることばかりを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか?ところが実際には上のような「ほんの少しの水濡れ」でも、着物に輪染みができてクリーニングが必要となるケースはあります。

これは着物の生地の表面にかかっている糊(ノリ)が、水によって浮いてから環状に片寄り、乾いて定着するためです。特に正絹(シルク)等の新しい着物の場合、ほんの少しの水濡れでも糊が剥がれて着物に輪染みができることがあります。

また長い間クリーニングをしていない着物の場合、糊とホコリが一緒になって水に流れ、固まってしまっているケースも珍しくありません。

水濡れによる染料の流れ出し

水濡れの状態や染料の種類によっては、表面の糊ではなく着物の地色や柄を染めている「染料(せんりょう)」が流れ出し、着物が輪染みになったり柄がにじむことがあります。特に以下のような着物は水濡れでの輪染み・色落ちが起きやすいです。

水に弱い着物の例

・藍染(あいぞめ)の着物
・草木染めの着物
・箔押し加工の着物
・刺繍(ししゅう)加工がある着物 等

水濡れによる繊維の縮み

着物の輪染みとしてクリーニングに持ち込まれるトラブルの中には、厳密には「シミ」とは言えないものも混じっています。水濡れによって繊維が部分的に縮み、シミのように見えている…というケースもあるのです。

雨・水等の水滴が付いた部分の繊維が局部的に縮むと、その面(特に輪郭部分)は光沢感が大きく変わります。そのため実際には汚れてはいないのに、色が変わった(変色した)かのような見え方をしてしまうのです。

この現象は「ウォータースポット(水滴)」とも呼ばれています。特に以下のような素材や織り方では、着物に輪染みが起きやすいです。

着物の輪染みが起きやすい素材・織り方

・正絹(シルク)
・ウール
・一越ちりめん
・古代縮緬(こだいちりめん)等

ベンジンによるシミ抜きの失敗

着物の輪染みは「クリーニングに出さずに自分で着物のケアをしよう!」と頑張ったためにできてしまうことも。その代表格が、石油溶剤の一種「ベンジン」を使ったシミ抜きの失敗です。

ベンジンは油溶性のシミを溶かし出す力を持つため、食べこぼしや化粧品のシミ等のシミ抜きに適しています。ただ着物の場合は最後に水洗いによる仕上げができないため、シミ抜きをした後の「輪郭(りんかく)」の部分をていねいにボカさなくてはいけません。

この「ボカし」の工程が不十分だと、溶け出した汚れが輪のように広がったまま残って乾いてしまい、着物の「輪染み」になってしまうのです。

色素の多い汚れのシミ抜きの失敗

水洗いができない着物で起きやすいとイメージされがちな「輪染み」。しかし実際には洗えるポリエステル着物や木綿着物等でも輪染みが起こることはあります。

特にワインやコーヒー等、色素の多い汚れを付けてしまった場合等にはご自宅でのシミ抜きが行いにくく、着物に輪染みが残ってしまいやすいです。

3.着物の輪染みは自宅でシミ抜きできる?

「着物にできた輪染み、クリーニングに出さずになんとか自分でケアしたい」と考える人も多いことでしょう。しかし残念ながら、輪染みについてはご自宅でのシミ抜き等の対策が一切おすすめできません。

上でご紹介したとおり、着物に輪染みが起こる原因には様々なものがあります。輪染みの原因に加えて着物の素材・染色を照らし合わせて最適な対策を取らないと、さらに輪染みが広がってしまう可能性が高いのです。

また素材や染色によっては、繰り返してのセルフケアによって生地の収縮がさらに起こり、専門店でも生地を元に戻せない状態になってしまうことがあります。自分で無理に着物の輪染みを直そうとせず、早めに専門家に頼りましょう。

4.着物の輪染みはクリーニングで取れる?

着物の輪染みは、一般的なクリーニングである「着物丸洗い(ドライクリーニング)」ではほとんど直すことができません。着物丸洗いは石油溶剤を使った全体的な汚れ落としで、水濡れ等が原因の輪染みに対してはほぼ効果を発揮しないのです。

着物の輪染みに対して、クリーニング店では「シミ抜き」「プレス」等の様々な対策で着物を元の状態へと戻していきます。ただし「着物の輪染みはクリーニング(シミ抜き)で必ずすぐに直せる」とは言い切れません。

着物が以下のような状態であある場合には、さらに専門的な対処をしたり、職人さんの手を借りて着物を直す必要が出てきます。

染料の滲み

染料が流れ出してしまっている場合には、一般的な「シミ抜き」等の作業だけでは着物を元に戻せません。この場合、染め直し・色掛け(いろかけ)等の染色補正での対策が必要です。

生地のスレ・毛羽立ち

濡れた状態の生地をゴシゴシ拭いたり、ベンジンで強く生地をこすったことで毛羽立ちや色のスレが起こってしまっている…このような場合も、染料の流れ出しと同様、色直し・色掛けの対策が必要となる可能性が高いです。

水濡れによる大幅な縮み・大きな水シミ

水濡れの範囲や輪染みの状態によっては、着物を一度反物(たんもの)の状態に戻して水洗いする「洗い張り(あらいはり)」が必要となることもあります。

洋服向けの一般的なクリーニング店では、色補正・洗い張り等の専門的な対応はできません。着物の「輪染み」ができた場合には専門的対処が必要となる可能性が高いため、悉皆屋(しっかいや)や着物専門のクリーニング店等に相談することが大切です。

5.着物の輪染みを直すクリーニング料金はいくらくらい?

着物の輪染みを直すためのクリーニング料金は、輪染みに対してどのような対処をするかによって大きく変わってきます。

シミ抜きの場合:数千円~2万円前後

シミの大きさや状態によっても値段が変動します。大きいシミになるほど価格が上がります。また出来てから時間が経過している古い輪染みの場合、取り除くのが難しくなるため、より料金は高くなります。

洗い張りの場合:40,000円~80,000円

洗い張りでは反物(生地)の状態にほどいてから洗いをかけ、さらに再度着物に仕立て直す必要があります。そのため料金が非常に高くなってしまいがちです。

色掛け・色補正・染め直し:20,000円~100,000円

着物の形のままで色補正が行える場合には、価格が比較的抑えられます。しかし状態によっては、一度洗い張りしてからの染め直しが必要となることもあるため、着物の輪染みを直すための料金が高額になります。

着物の輪染みのためにクリーニング店に持ち込む場合には、一度着物の状態を見てから見積もりを提示してくれるタイプのお店を選んだ方が良いでしょう。

おわりに

着物の輪染みについてのよくある疑問と解説はいかがでしたか?着物の輪染みの原因には色々なものがありますが、どの場合でも共通するのは「時間が経つほど着物を元に戻すのが難しくなる」という点です。

着物の輪染みは放っておいて直りません。輪染みができたら、着物に強いクリーニング店にできるだけ早く相談することがもっとも重要と言えるでしょう。


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