着物に黄ばみが起こる原因をご存じですか?「着物が黄ばんだ」「いつの間にかシミができた」など、着物の黄ばみや古いシミのトラブル「黄変」で困っている人は多いのに、その原因を知る人は意外と少ないようです。

今回は着物の黄ばみが起こる原因を解説するとともに、今から始められる黄変の予防対策を紹介します。

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お手入れのせい?着物が黄変する原因4つ

着物が黄変する原因は、大きく分けて4つあります。お手入れの不足によるものもあれば、自然現象的に起こってしまうものもあるのです。

汗の成分による変色

着物の黄変が起こる原因のひとつが、「汗」の成分によるものです。汗の中には、マグネシウム・カリウム・亜鉛・鉄・重炭酸イオン等の様々なミネラルや老廃物が含まれています。

これらの成分は時間が経つと徐々に衣類(絹や木綿等)の繊維を変質させ、酸化を促進させます。黄変とは「酸化による繊維の変色」なのです。汗の成分は、おおむね3~6年で着物を黄変させます。

汗による黄変の特徴

・ワキや背中等に黄変が激しく見られる
・不定形のシミのような形に変色する
・着用回数の比較的多い着物に起こりやすい
・夏場に着用した着物に起こりやすい
・表地にも起こるが、裏地(胴裏)に特に起こりやすい

上記のような特徴が見られる場合、着用後の「汗抜き」(あせとり:汗の成分を取るお手入れ)が十分でなかったために着物が黄変した可能性が高いと言えるでしょう。

カビによる変色

意外と知られていないのですが、着物が黄変する原因には「カビ」も関連しています。カビ菌は発生直後にはほとんど目には見えず、カビ臭いニオイがする程度。また白カビ等の場合、表面のカビは払えばすぐに落ちます。

ところが一度発生したカビは、衣類の奥深くにまで根を張って潜んでます。そして徐々に生地を酸化させて「黄変」のシミを作ってしまうのです。

カビによる黄変の特徴

・ポツポツと斑点のようにシミがある
・斑点の色はオレンジ色~茶褐色
・着物からカビ臭い(ホコリ臭い)ニオイがする
・着物の表地にも裏地にも起こる
・長期保管していた着物に起こりやすい

着物のカビは、湿気の多い場所に保管されていたり、虫干しが少ない場合等に発生しやすくなります。また保管前にクリーニングをせず汚れが衣類に残った場合も、着物の黄変の原因となる「カビ」が増えてしまいがちです。

絹地の自然な黄ばみ

白かった胴裏(どううら:着物の裏地のこと)がなんとなく黄ばんだ、真っ白だった花嫁衣装がクリームがかってしまった…このような「白系からの黄ばみ」という着物の黄変の原因は、絹地そのものの酸化です。

絹は元々、真っ白い糸ではありません。元々の色は卵の殻のような黄色みの強いクリーム色なのです。このクリーム色の原因は「セリシン」という成分で、これを取り除いて糸を白くすることを「精錬(せいれん)」と呼びます。

精錬後に織り上げられた新しい布地は、雪のように真っ白な状態に。しかし空気に触れることで時間が経つ毎に再度酸化し、黄色っぽいクリーム色へと戻っていきます。

着物の黄変の原因には、このような天然繊維ならではの自然現象も混じっています。必ずしも「お手入れの不足」ばかりで黄変が起こるとは限りません。

繊維の酸化黄変の特徴

・正絹(シルク)の着物である
・生地全体が薄く黄ばんでいく(クリーム色になる)
・胴裏(裏地)に特に起こりやすい
・昔の着物に特に起こりやすい

ただし近年では精錬後に黄変防止の加工を糸に施しているため、白い裏地が一気に黄ばむというような現象は少なくなってきています。

増量剤による酸化

絹の自然な酸化等に比べてさらに激しい着物の黄変をもたらす原因が、増量剤(ぞうりょうざい)による酸化です。増量剤とは、生地の表面に使用している糊(のり)等の薬剤を意味しています。

40年~50年前頃までは、「着物の重さ」が着物の品質の高さを示すひとつの要素として重視されてきました。そのため中には増量剤を不必要に増やして、どっしりとした重い着物を作る業者もあったのです。

ところが増量剤が増えるほど、生地はカビの発生や酸化をしやすくなります。そのため、絹がゆっくりと酸化しクリーム色になるスピードに比べてはるかに早く激しく着物が黄変をする場合、増量剤が原因とも考えられるのです。

増量剤による黄変の特徴

・生地全体の黄変とシミのような黄変が両方起こる
・胴裏(裏地)で特に起こりやすい
・カビの発生も併発していることが多い
・40年~50年以上前の昔の着物で特に多い

着物の黄変を防ぐには?今日から始める予防対策

着物の黄変の原因の中には、上でご紹介したように様々なものがあります。絹の自然な黄変を止めるのは難しいですが、着用後や保管中のお手入れに気を配り、汗やカビ等による黄変を予防していきましょう。

汗をかいた時には「汗取り」を!

着物を黄ばませないために、着物が黄変する主な原因「汗」をこまめに取る習慣を付けましょう。夏の着用後にはもちろん、緊張した時や着物で動く時間が長かった時にも汗取り習慣をつけると安心です。

汗取りの方法

●用意するもの
・ガーゼタオル 2~3枚
・バスタオル
・着物ハンガー

●汗取りの手順
1)バスタオルを敷いて、その上に着物を広げます。
2)ガーゼタオルを水に浸して、固く絞ります。
3)ワキやウエスト部分等の汗をかいた場所を、2)のタオルでトントンと軽く叩き、汗の成分を吸い取っていきます。
4)乾いたガーゼタオルで再度トントンと叩き、与えた水分をよく取り除きます。
5)着物ハンガーにかけて丸一日以上は陰干しをして風にあて、水分をよく飛ばします。

●汗取りの注意点
・正絹(シルク)やウールは水を含ませすぎると縮みます。タオルは固く絞って使用しましょう。
・金糸・銀糸・金箔・銀箔・刺繍加工等の特殊加工部分には汗抜きをしないでください。
・生地を強く叩いたりこするのは厳禁です。色抜け・色落ち・スレ・毛羽立ちの原因になります。

長期保管の前には「丸洗い+汗抜き」で汚れ落とし

着物をしばらく着ない時には、クリーニングで汚れを全体的に落とした方が安心です。皮脂汚れ等をクリーニングでしっかり取っておくことで、カビの発生の予防にも繋がります。

ただし水溶性である「汗」の成分は、石油溶剤を使う着物丸洗い(ドライクリーニング)では取り去ることができません。ですから丸洗いのオプションとして「汗抜き」も一緒に依頼すると良いでしょう。

専門店ならではのていねいな汗抜きを行なっておけば、長期的な保管中の汗による黄変を予防できます。

定期的な虫干しでカビを予防

いくらしっかりと着物のクリーニングをしていても、タンスやクローゼットに何年も着物を入れたままにしておくのはNGです。着物が湿気を含み、カビが発生して黄変ができる原因になります。

できれば年に2回、少なくても年に1回は着物を広げて、虫干し(陰干し)をする習慣をつけましょう。着物に風を通すことでカビの発生率は大きく下がります。

着物の黄変を見つけたらクリーニング専門店で対策を!

「虫干し等の予防をしたけれど、着物が黄変してしまった…」そんな時には、できるだけ早めにクリーニングの専門店に着物を持っていって相談をしましょう。

着物が黄変した場合、自宅でのケアではほぼ効果は出ません。また上でご紹介したとおり着物が黄変する原因には様々なものがあるため、専門店でも実物を見ないと「対応が可能か」「どんな対処ができるか」の判断が難しいのです。

なお、黄変した着物をキレイにするには、一般的なクリーニング(丸洗い等)よりも高度なクリーニング技術が必要です。着物専門のクリーニング店、もしくは悉皆屋(しっかいや)を選ぶことをおすすめします。

おわりに

着物が黄変する原因と予防対策はいかがでしたか?薄黄色いシミ・軽い黄ばみに見える黄変は、放っておくと徐々に薄茶に、そして焦茶色いシミへと状態が悪化してしまいます。

黄変が酷い状態になると、専門店でも着物を元に戻せません。しっかりと黄変予防をしつつ、黄変を見つけたら早めに専門店に相談をしましょう。


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