振袖の脱ぎ方にはコツがあるってご存じですか?振袖を汚したりシワを作らないように、正しい振袖の脱ぎ方や脱ぐ場所の選び方を押さえておきましょう。

着付けは美容院でやってもらえたとしても、振袖を脱ぐ時には自分ひとり。「脱ぎ方がわからない、どうしよう」と困らないように、振袖を着る前に必ず覚えておきたい、振袖の脱ぎ方の4つのポイントを紹介します。

振袖を脱ぐ場所は「広さ」「キレイさ」が大切!

振袖を脱ぐ場所としては、以下のようなところが理想的です。

【振袖を脱ぐ場所の例】

・ご自宅の居間・仏間等のスペースが広い部屋(和室が理想的)
・ホテルの専用の更衣室(結婚式参列者用の控室)
・旅館の個室(畳の部屋)
・会議室やレンタルスペース等、広く平らな床面がある場所

反対に以下のような場所は、振袖を脱ぐ場所には向いていません。

【振袖を脱ぐのに向いていない場所】

・トイレの個室やメイクルーム:床が汚くて狭い
・カラオケボックス:平らな床の面がほとんど無い
・ネットカフェの個室:スペースが狭い

洋服の場合だと、少し広めの個室があれば衣装の着替えはできるもの。でも振袖の場合には、脱ぐ場所に一定の「広さ」と「キレイさ(清潔さ)」が求められます。
スペースとしては二畳以上、縦横2メートル以上は平らな面があり、畳・フローリング等でできている床面があることが理想的です。これには以下のような理由があります。

脱ぐ時に振袖や帯が必ず床にさわる

振袖等の着物は、私達の身長以上に長い丈(たけ)で作られています。着付けの時にはウエスト部分を重ねて持ち上げ紐(ひも)で縛り、「おはしょり」を作って長さを調整しているのです。また振袖の「帯」も、とても長く作られています。

そのため振袖を脱ぐ時には、どんな脱ぎ方をしても必ず振袖の裾(すそ)や帯が長くたれさがり、広い範囲が床に着いてひきずります。脱いだ時に床の汚れが付かないように、専用のシート等を敷いて汚れが付くのを防止しないといけません。

そのためマットやシートが敷けるような一定の広いスペースを確保できる場所を選ぶことが大切なのです。また振袖に汚れが付くのを避けるため、脱ぐ場所はできるだけキレイで、土足(靴)で入らない空間を選ぶことをおすすめします。

外出先だと「振袖をたたむスペース」が必要

自宅以外の外出先の場合、脱いだ振袖はたたんで持ち運ぶ必要があります。洋服とは違い、振袖・着物は平らな場所にピシッと広げないと、キレイにたたむことができません。

振袖をキチンとたたむには、縦横2メートルくらいの完全に平らなスペースが必要です。ベッドの上等では、振袖をキレイにたためないのです。

また振袖・着物は洋服のように「立ったままで適当にたたむ」「丸めておく」ということができません。衿(えり)等に付いた折れシワが取れなくなり、次回にキレイに着られなくなります。振袖を脱ぐ場所選びでは、脱いですぐに振袖をたためるスペースがある場所を選びましょう。

振袖・着物を脱ぐ前の準備

振袖・着物の脱ぎ方の作業に入る前に、振袖を汚さないための準備をしましょう。

衣装敷をしいて振袖汚れをカバー!

衣装敷(いしょうじき・いしょうしき)とは、振袖等に着替える時やたたむ時に使う着物専用の敷物です。衣装敷は不織布(ふしょくふ)や丈夫な和紙で作られていて、コンパクトに折りたたんで持ち運ぶことができます。

衣装敷を下にしいておけば、慣れない脱ぎ方でも振袖の裾(すそ)に汚れ・ホコリ等が付く心配がありません。衣装敷は小さいサイズだと縦横1.5メートル、大きいサイズだと2メートル×1.5メートルといったものがあります。価格は500円~800円位です。

衣装敷はホームセンターや呉服店(きもの販売店)の他、Amazon等のネット通販でも買うことができます。

なお「脱いだ後にはしばらく干しておく(たたまない)」という場合は、衣装敷ではなく大きな風呂敷やキレイなブルーシートを代わりに使ってもOK。ただし振袖・着物をたたむには、風呂敷やブルーシートは不向きです。振袖がズレやすく、シワの原因になります。

口紅はティッシュで軽くオフ

脱ぐ作業の間に口紅やグロスが振袖に付いてしまわないように、口元をティッシュでぬぐって、できるだけ口紅をオフしておきましょう。

着物ハンガーを準備する

振袖の着付けでは、様々なひもや小道具が使われています。全部を外してからまとめて片付けようとすると、衣装敷の上がモノでゴチャゴチャになる可能性大です!

帯をほどいたら帯をハンガーにかけて…というように、少しずつハンガーにかけながら脱いでいった方が、スペースを広く取らずに済みます。手が届きやすい場所に着物ハンガーや小道具をかけるハンガー数個を準備しておきましょう。

手を洗うか綿手袋で振袖の汚れ対策

振袖の脱ぎ方に入る前には、必ず手を洗いましょう。手汗や手垢が振袖に付くと、その部分が「カビ」「皮脂汚れの黒ずみ」等の原因となることがあるためです。また手を洗った後にはハンドクリーム等は塗るのはNG。クリームの油も、振袖のシミの原因になります。

指輪をしている場合には、すべて外してから振袖を脱ぎます。また長いジェルネイルやネイルアクセサリーをしていたり、爪の形がとがっている場合には、綿の手袋をした方が安心です。アクセサリーやネイルの先を振袖の生地にひっかけてキズになると、専門店でも元に戻すことができません。

意外とカンタン!振袖・着物の脱ぎ方

準備ができたら、さっそく振袖を脱いでいきましょう。振袖の脱ぎ方は上から順番通りに脱いで行けば良いので、意外とカンタンですよ。

<<振袖・着物の脱ぎ方>>

1)帯の一番上の帯締め(おびじめ)をほどいて、帯揚げ(おびあげ)も取ります。
2)帯の形を整える帯枕(おびまくら)を使っている場合には、帯枕の紐をほどきます。
3)帯の飾り結びをしている場合には、三重仮紐(かりひも)をほどきます。
4)結び目が体の前に来るように帯を時計回りに回し、飾りヒダ等を取ります。
5)帯の結び目をほどき、帯をはずします。
6)腰紐(こしひも)や伊達締め(だてじめ)等をほどいて、振袖を脱ぎます。
7)長襦袢の紐をほどいて、長襦袢を脱ぎます。
8)肌襦袢・腰巻き等をはずして、洋服に着替えます。

※帯の飾り結びの形によっては、仮紐が前側から外せない・結び目が前に回せないことがあります。この場合には、仮紐・帯の結び目は背中側からご友人やご家族にほどいてもらいましょう。

※外出先等で一人だけで振袖を脱ぐ予定がある場合には、着付け前に着付師さんに相談をしておきましょう。仮紐を前から外せるようにしてもらったり、帯を前に回しやすい変わり結びにしてもらうこともできます。

振袖・着物を脱いだ後には?

振袖や着物の脱ぎ方は意外とシンプルですが、「脱いだら脱ぎっぱなし」はNGです。シワにならないように、振袖をきちんと干すかたたみましょう。

自宅で振袖を脱いだ場合には「陰干し」を

ご自宅で振袖を脱いだ場合には、すぐにたたまずに振袖を陰干し(かげぼし)します。陰干しとは、直射日光のあたらない場所で着物を干して空気にあてること。着用した時の湿気を飛ばして、カビの発生等を防ぎます。

振袖は着物専用のハンガーにかけて形を整え、屋外もしくは室内の直射日光のあたらない場所で干しましょう。室内の場合には、窓を開けて換気をするかエアコンをかけて部屋を除湿してください。

外出先からは「本だたみ」で持ち歩きを

ホテル等の外出先で振袖を脱いだ場合には、振袖を「本畳み(ほんだたみ)」にたたみます。「振袖のたたみ方」は当サイトでもくわしくご紹介していますので、合わせて参考にしてください。

腰紐等の紐は、シワを伸ばして一本ずつまとめます。帯板(おびいた)・帯枕(おびまくら)等の小物類はまとめて、風呂敷等に包んでおきます。草履(ぞうり)はティッシュペーパー等で汚れを軽く取っておくと良いでしょう。

振袖の持ち運びには、専用の「着物バッグ」がシワになりにくく便利です。着物バッグが無い場合には、着物を大きな風呂敷等に包み、平らに持ち運びます。帰宅したらすぐに振袖を広げて、陰干しをしましょう。

<<おわりに>>
振袖・着物の脱ぎ方・脱ぐ場所のポイントはいかがでしたか?振袖は着付けのための小物類が多く、片付けや持ち運びにはかなり手間がかかります。

成人式等の自宅に近いイベントでは、振袖を脱ぐ場所は「自宅」をおすすめします。結婚式では、式場・ホテルに更衣室があるか確認しておくと安心ですよ。

また万一振袖の脱ぎ方・たたみ方等に失敗して汚したりシワになった場合には、早めにクリーニング店に相談しましょう。