雨の日の当日・翌日のお出かけだと着物に付きやすいのが「泥はね」。振袖の裾に泥シミを発見して「しまった…」となるケースは多いようです。この「泥汚れ」、一般的なシミとは対処法が違うって知っていましたか?

大切な着物を守りつつキレイにするために、キチンとしたお手入れ方法を知っておきましょう。今回は振袖等の着物に付いた泥はね・泥汚れについて、正しい汚れの落とし方をご紹介します。

着物の泥汚れは外出先では落とせない?

成人式や結婚式・式典等で振袖を着た時に、移動中に泥ハネが付いた・・・こんな時は、一刻も早く泥汚れを取りたくなるもの。でも残念ながら、着物の泥汚れは外出先で応急処置をするのが難しいんです。

泥汚れは水にも洗剤にも溶けない

泥ハネの黒っぽい汚れの元は、細かな「砂」の粒です。砂は岩石等がとても小さく砕けたもの。砂場の砂や海岸の砂と同じで、「水」や「お湯」にはまったく溶けません。また「油」や「洗剤」「溶剤」でも溶かせない「不溶性」という性質を持っています。

そのため着物の泥はね・泥汚れは、以下のような方法ではまったく薄くなりません。

【泥汚れの応急処置・NG例】

・おしぼりや濡らしたタオルで拭く
・水道水で濡らす
・石けん水を含ませる
・焼酎等のアルコールを使う 等

水分を与えれば与えるほど、砂は溶けずに繊維のあちこちに移り、泥汚れが広がってしまいます。

乾いたハンカチで拭くのもNG

着物に付いた泥汚れの「砂」は、ジュースや水とは違ってハンカチ等の布で吸い取れません。そのため「濡れている泥ハネ」を乾いたハンカチで拭いても、汚れは着物の繊維の奥に押し込まれるばかりです。

また泥汚れを無理に拭くと、着物の生地を傷めることも。とても小さな砂粒は、よく見るとそれぞれが尖った形をしています。ジャリジャリとした砂粒を押し付けてこすったことで、生地が毛羽立ちや色ハゲを起こし、元に戻らなくなる可能性もあるのです。

着物の泥汚れは「直後は触らない」が基本!

振袖等の着物に付いた泥汚れは、上記のような理由から「付いた直後は一切さわらない」というのが原則です。ただ、どしゃ降りの雨や自動車の「泥はね運転」の被害でビッショリ濡れた・・・という場合、着物の水分は取る必要があります。

この場合は、乾いたタオルやハンカチをシミの部分にソッとあてて、水分だけを吸い取るようにしましょう。タオルやハンカチを動かしてこすらないよう、十分に気をつけてください。

帰宅したら着物の泥ハネを総チェック!

着物でのお出かけから帰宅したら、泥汚れを落とす前に「他にも泥ハネができていないか」を確認しましょう。意外なところにもハネが飛んでいることがあります。

裾~膝裏の部分を重点的に

振袖等の泥汚れがもっとも付きやすいのは、着物の裾(すそ)の部分です。また草履(ぞうり)で後ろに蹴り上げた泥が、ヒザの裏側からお尻位の高さまで飛んでいることがあります。特に着物の後ろ側は重点的に確認をしましょう。

着物の裏面もしっかり確認

泥はね・泥汚れは、着物の「裏側」にまで飛んでいることがあります。特に雨の日に着物を着て歩いた場合には、裏地の確認をていねいに行いましょう。

長襦袢のチェックも忘れずに

着物の裏側についた泥汚れが、着物の中に着ている長襦袢(ながじゅばん)の裾に移っていることもあります。着物・振袖だけでなく、長襦袢の汚れも確認した方が良いです。

着物・振袖の泥汚れは「ブラシ」で落とす

着物や振袖についた泥汚れは、前述のとおり「水」や「洗剤」、またベンジン等の「溶剤」でも溶かすことができません。そのため着物の泥汚れを落とすには、汚れの元である砂を「ブラシ」で外に掻き出す方法を取ります。

作業前には着物を十分に乾かして

泥汚れの中の砂は、少しでも水分を含んだ状態だと繊維に強くくっついて離れません。そのため汚れた部分が濡れていたり「生乾き」の状態だと、着物の泥汚れをキレイに落としにくいのです。

作業前には振袖・着物は専用の和装ハンガーにかけ、風とおしの良い場所で十分に乾かしておきましょう。

着物の汚れ落としに使うブラシは?

着物の汚れ落としには、豚毛・馬毛等の獣毛で作られた小さい「きものブラシ」を使うのが理想的。でも着物の汚れ落としのために、専用ブラシをわざわざ買うのは大変ですよね。

こんな時には「歯ブラシ」で代用してもOK!ただし、歯ブラシを使う場合には以下のポイントを必ず守りましょう。

【汚れ落としに使う歯ブラシの選び方】

・新しいブラシを使う:古い歯ブラシは毛先が広がっており、汚れ落としにはNG。また雑菌繁殖の原因にもなるので、使い古しではなく新しいものを使用します。
・細い毛のブラシを使う:「極細毛」等、毛が細いタイプが適しています。
・毛質は「やわらかい」ものを使う:硬い毛質は絶対に厳禁!生地を傷めてしまいます。

また汚れが付いた箇所の大きさや生地によっては、「綿棒」が活躍することも。特に赤ちゃん向け綿棒等の小さいタイプがあると便利です。

着物・振袖の泥汚れ・泥ハネを落とす方法

【用意するもの】

・ガーゼ等の柔らかい布
・獣毛ブラシまたは歯ブラシ
・綿棒
・新聞紙・包装紙等の大きな紙

【汚れ落としの手順】

1)泥汚れの部分が十分に乾いていることを手で触って確認します。
2)汚れが落ちても良いように、着物の下に新聞紙等を敷いておきます。
3)ガーゼ等の柔らかい布で、軽く汚れを払います。
4)ブラシを軽く生地にあてて、一方向に向かってごく優しく掻き出します。
5)場所によって綿棒に切り替え、優しく一方向に向かって砂を取り出します。

【作業の注意点】

・ブラシをゴシゴシと両方向に動かすのはNGです。着物の毛羽立ち・色ハゲ等の原因となります。
・繊維の織りによっては、砂が取り出せない場合があります。奥に入り込んだ砂は無理に掻き出さないでください。
・金箔や銀箔等の特殊加工がある場所には、ブラシを使用するのはやめましょう。
・刺繍がある場所にはブラシは使用できません。

泥まみれの振袖・ひどい汚れは専門店に相談を

上記の方法で軽くブラシで払っても汚れが薄くならない場合には、作業を続けずにすぐに中止しましょう。例えば車道の泥ハネ等の場合、泥の中に油汚れも混じって固まっており、ブラシで払うだけでは汚れを落とせないこともあります。

また以下のような場合にも、ブラシで汚れを落としきることは難しいです。

・泥汚れの範囲が大きい(直径5センチ以上のシミがある、振袖が泥まみれである等)
・泥ハネの箇所が多い(大雨・どしゃ降りによる泥ハネ等)
・古い泥ハネである(汚れが付いてから時間が経過している)
・泥汚れがいつ付いたかわからない(古い振袖、アンティーク着物等の泥汚れ・裾汚れ等)

このような時には、無理に自宅で対処をせず、早めにクリーニング専門店に相談することをおすすめします。

泥汚れは「着物丸洗い」では落とせない?

泥汚れは「油」では溶けないため、油剤を使う一般的なドライクリーニング(着物丸洗い)だけでは汚れをなかなか落とせません。より専門的な「シミ抜き」でないと汚れが落ちない場合があります。

また着物・振袖の状態によっては、「洗い張り(あらいはり)」という一度着物を解いて洗う作業が必要となることも。泥汚れが付いた着物をクリーニングに出す場合には、「シミ抜き」や「洗い張り」等にも対応できる専門店を選ぶようにしましょう。

おわりに

振袖・着物に付いた泥汚れの落とし方はいかがでしたか?泥汚れは洋服・子ども服等では「よくある汚れ」なので「カンタンに汚れが落ちる」と思われがち。ところが着物の場合には、かなり手強いシミとなります。

「ブラシを軽くかけても落ちないな」と思ったら、無理せずに専門家に相談をしてみてくださいね。