長く保管した着物、古い着物等に出やすい「黄変(おうへん)」。これは名前の通り「黄色」や「茶褐色」等に着物の色が部分的に変わる現象です。

黄変を直す対策は「黄変直し」等と呼ばれ、クリーニング店や悉皆屋等で行えます。ただ、依頼をする際には注意をした方が良いことも。今回は着物の黄変直しでクリーニングに出す時に知っておきたいポイントを解説します。

「きものSalone」の編集長がオススメする着物クリーニングはここ。 きものtotonoe 


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着物の黄変直しは「シミ抜き」ではない?

ほとんどの着物クリーニング店・悉皆屋では、黄変直しは一般的な「シミ抜き」とは別の扱いをします。「黄変直し」もしくは「古いシミ抜き・変色シミ抜き(古染み直し)」と呼ぶことで区分けしますし、料金体系も違います。

これはなぜか?というと、「黄変」は汚れが付いた「シミ」ではなく、着物の生地が「変色」している状態であるため。ですから着物を元に戻すために必要な工程が、シミ抜きとはまったく変わってくるのです。

一般的なシミ抜きの工程

繊維に汚れが付いている

油溶性の溶剤や水溶性のソープ等で汚れを分解する(シミ抜きする)

黄変直し・古染み直しの工程

汚れの成分が酸化して繊維を変色させている

汚れの部分は洗って落とす(一般的なシミ抜き)

薬剤等を使って変色部分を漂白・脱色させる

漂白によって地色が剥がれる場合には、染料をかけて染色を修正する

織物の状態を元へと戻す「地直し」をして仕上げる

着物の黄変直しの場合、着物の生地をできるだけ傷ませないために、漂白・脱色の作業には非常に専門的な知識と高い技術力が求められます。その後の染色補正(色掛け)も同様です。

着物の黄変直しができないクリーニング店もある

上でご紹介したとおり、着物の黄変直しは一般的なシミ抜きよりも専門的で高度な技術力が必要とされるクリーニングの技法です。

そのため、黄変がある着物を一般的なクリーニング店(洋服向けの店舗)に出すのはおすすめできません。また例え着物対応アリでも、「着物丸洗い(ドライクリーニング)」しか受け付けないようなお店も避けた方が良いです。

これらの店では着物の黄変直しができず、一般的なシミ抜き対応だけを行って「シミが落ちなかった」と返されるケースも珍しくありません。「着物の黄変直しはとにかくクリーニングに出せば直る!」というのは、大きな誤解なのです。

着物の黄変直しは、着物を専門に扱うクリーニング店か悉皆屋(しっかいや)に相談をしましょう。

着物の黄変直しは料金が高い?見積もりは必須!

一般的な「シミ抜き」に比べて、着物の「黄変直し」はクリーニングの料金が高額になります。これは「1」の項目で解説したように、通常のシミ抜きよりも作業工程が複雑で、手間がたくさんかかるためです。

では着物の黄変直しの料金はいくらになるのか?というと、残念ながら一概に「いくら」と言えません。以下のような要素で、着物の黄変直しのクリーニング料金は大きく変動してしまうのです。

・黄変の箇所の大きさ
・黄変の箇所の数
・黄変してからの時間(古くなるほど料金が上がる)
・変色・色抜けの状態
・地色は何色か 等

黄変の状態がとても軽ければ、漂白作業のみで着物を元に戻せることも。しかし黄変の範囲が広かったり、変色の状態がはげしい場合ほど強い漂白が必要となり、その後の「染色補正(色掛け)」の対策が必須になります。

着物の黄変直しの料金は、どのクリーニング店舗でも「実物を見てから(黄変の状態を確認してから)」ということになるでしょう。作業に入る前に全額の見積もりを出してくれるお店を選んだ方が安心です。

黄変直しができない着物もある

着物の種類や黄変がある箇所・黄変の状態によっては、専門のクリーニング店や悉皆屋でも黄変直しができないケースがあります。

胴裏(どううら)

着物の裏地である「胴裏」は、材質が表地に比べて薄くデリケートです。そのため黄変直しのための漂白に耐えられません。

長襦袢(ながじゅばん)

着物の下に着る「長襦袢」も、胴裏と同じく生地が薄く繊細であるため、黄変直しが難しいことが多いです。正絹(綸子・縮緬)などの黄変直しは厳しいでしょう。ただし素材によっては、黄変直し可能な場合もあります。

生地がもろくなっている着物

非常に古い着物・アンティーク着物・着用回数が多くあちこちに痛みがある着物等の場合、漂白で繊維が壊れてしまう可能性が高いため、黄変直しができません。

先染織物(さきぞめおりもの)

先染め織物とは、糸を先に染めてから織り上げた生地を使った着物です。経糸(たていと)と緯糸(よこいと)にそれぞれ違う糸を組み合わせたり、織り方を変えることで独特の色味と風合いが生まれています。

先染めの着物は、漂白・脱色してしまうと「色掛け」等での修復がほとんどできません。そのため黄変が進んでいる場合、先染着物の黄変直しはできない…ということになります。

江戸小紋

江戸小紋は、地の部分にとても細かい文様が入っている着物です。そのため文様の部分の色が抜けてしまうと、修復をするのが困難になります。江戸小紋が黄変してしまった場合、程度によっては着物をクリーニングで修復するのは難しいです。

濃い茶色にまで変色した黄変

「黄変」という名前のとおり、着物の変色は最初は黄ばみ(黄色っぽいシミ)から発生します。しかし時間が経つごとに変色は徐々に進んでいき、黄色っぽいシミは薄い茶色へ、そして濃い茶褐色へと進みます。

着物のシミの色が焦げたような濃い茶褐色にまで変色してしまっている場合、クリーニングの「黄変直し」(漂白等)では着物を元に戻せないことも多いです。

ただし着物の黄変直しに慣れているクリーニング店であれば、全体を染め直す・柄を付け足す等、別の再生方法を提案してもらえることも。良心的な店なら、より安上がりな方法を提案してくれることもあります。

変色が進んだ黄変ほど「着物に強いクリーニング店」を選んだ方が良い結果を得られるでしょう。

着物の黄変直しは時間がかかりやすい

一般的な着物のシミ(食べこぼし等)であれば、シミ抜きにかかる時間(納期)は平均1週間~2週間程度です。繁忙期であっても、1ヶ月程度待てば手元にキレイな状態の着物が戻ってくることでしょう。

しかし着物の黄変直しの場合、クリーニングの工期には長い時間がかかります。前述したとおり作業工程が多いのと、場合によっては別の染色補正の専門家に色掛け・柄足し等を依頼しなくてはならないためです。

着物の黄変直しがクリーニング店で完了するまでには、平均2~3ヶ月程度を見た方が良いでしょう。ただ店舗によっては、特急仕上げを請け負ってくれる場合もあります。

着物の黄変直しをお急ぎの場合には、早めにクリーニング店舗に相談をしてみましょう。

おわりに

着物の黄変直しのためにクリーニングに出す場合の注意点はいかがでしたか?着物の黄変は、放置しておくとどんどん変色が進みます。

あまりに着物の黄変の状態が酷い場合には、クリーニングの専門店でも対処ができない場合もあるのです。少しでも黄ばみや異変を感じたら、早めにクリーニング店に相談するようにしましょう。


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