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着物のカビ取りで悩んでいませんか?
長年放っておいたらカビ臭くなったという時のために、着物のカビ取りやカビ臭い時の自宅でできる応急処置をタイプ別に詳しく解説します。
注意点さえ守れば、着物のカビ取りは可能です。着物クリーニングにお願いする時のポイントも紹介するので、参考にしてみてくださいね。

カビ臭い着物・カビが生えた振袖の応急処置方法は?

近々に着物を着る予定がある場合には、自宅で「応急処置」をしておきたいところ。タイプ別の応急処置法を見てみましょう。

【タイプ1】

カビ臭いニオイの応急処置は「風にあてる」

・1~2ヶ月先位に振袖・着物の着用予定がある
・カビ臭いニオイの程度は鼻を近づけると軽く臭う?という位
・裏地にもカビによるシミ・カビの発生は見つからない

上記のような場合には、振袖・着物によく風をあてて乾燥させることが応急処置として有効です。カビ臭いニオイの元である「カビ菌」は湿度が高いほど繁殖しやすく、カビの臭いがキツくなります。反対に衣類の湿度を下げるとカビ菌の増加は多少収まり、臭いもある程度飛ばせるのです。

●陰干しで着物に風をあてる
直射日光のあたらない場所で着物を干すことを「陰干し(かげぼし)」と言います。干しておくだけで着物のカビ臭いニオイを抑えられるので、比較的手軽な方法です。ただしカビの程度によっては、カビ臭さが気にならなくなるまで1ヶ月以上かかることもあります。

【陰干しの手順】

1)屋外の場合には、日陰の場所を選びます。
2)屋内の場合には、直射日光が当たらない場所を選びます。
3)着物専用ハンガーもしくは物干しに着物をかけて、形を整えます。
4)屋外の場合には、1日5~6時間程度は空気にあてて、夜間には取り込みます。
5)屋内の場合には、常に窓を明けるか換気をした状態を続けます。
6)陰干しを2週間~1ヶ月程度続けます。

※アレルギーがある方・幼児・ご高齢の方がいる場合、屋内での陰干しは避けましょう。飛散したカビ菌によって体調が悪化する恐れがあります。
※湿度の高い時期には、室内ではエアコン等も使用して除湿しましょう。
※室内で扇風機の風をあてるのも有効です。ただし、必ず換気をした状態で行いましょう。

●ドライヤーで着物に風をあてる
「梅雨の時期で陰干しだけだとカビ臭いニオイが飛ばない」「もっと早くカビ臭さを飛ばしたい」という場合には、陰干しをしている合間にドライヤーの冷風をあてるのも手です。

【冷風ドライヤー乾燥の手順】

1)着物専用ハンガーに着物をかけて、室内に干します。
2)窓を開けるか換気扇を回して、よく換気します。
3)ドライヤーを着物から30センチ程度離し、冷風設定にして風をあてていきます。
3)上から下に向かって、ゆっくりと風をあてます。
4)着物を裏返して、上から下に向かって風をあてます。
5)着物の形を整えて、そのまま室内で陰干しを続けます。

※作業中にカビ菌を吸い込む恐れがあるため、マスクをすることをおすすめします。
※ドライヤーは必ず冷風を使用しましょう。温風をあてると振袖・着物を傷める恐れがあります。

【タイプ2】

すぐ着る振袖がカビ臭い時は「茶葉」で消臭

・1~2週間後には着物・振袖の着用予定がある
・着物を取り出した時点でハッキリとカビ臭いニオイがする(匂いがキツイ)

上記のような場合、風をあてる方法での応急処置ではカビ臭いニオイが取り切れない可能性が高いです。陰干しより少し手間がかかりますが、消臭・抗菌効果のある「茶葉」を使った応急処置を試してみましょう。

【用意するもの】

・お茶っ葉(緑茶用のもの。煎茶や茎茶等。粉茶はNG)
・フライパン(鉄・アルミ・鋳物等のもの)
・和紙3~4枚(お茶パックでも代用できます)
・たとう紙(着物を包んでいる紙・文庫紙)

【茶葉消臭の手順】

1)フライパンにお茶っ葉を3つかみ~4つかみ程度入れます。
2)フライパンを火にかけ、中火で煎ります。
3)茶葉が焦げ付かないように火を調節します。
4)茶色く色が変わり、乾燥した状態になったら取り出して粗熱を取ります。
5)茶葉を3つ~4つ程度に分けて、それぞれを和紙で包みます。
6)振袖等の着物を畳んで、たとう紙にしまいます。
7)和紙の包みを畳んだ着物の上に置く、二つ折りにした着物の中にも入れる等、3~4箇所に置きます。
8)たとう紙を閉じて、2~3日放置します。
9)ニオイの状態を確認し、和紙の包みの位置を少し動かして、再度2~3日放置します。

※テフロン加工のフライパンは乾煎りには不向きです。加工が剥げることがあります。
※茶葉が着物の生地に直接触らないように注意しましょう。
※ティッシュペーパー等を使った代用はしないでください。

【タイプ3】

着物の白カビには「布」でカビ取り

・振袖・着物に白っぽいカビが生えている
・カビは表面にホコリのように乗っている

上記のような場合、着物に生えているのは「白カビ」。初期の段階ではフワフワ・モコモコとした感じで振袖・着物の「表面」に生えています。この段階であれば、布等で表面のカビを取ることで一度着用するための応急処置をすることも可能です。

【用意するもの】

・布切れかガーゼ
・着物専用のハンガー(物干しでも代用可)
・綿手袋もしくは軍手
・作業用マスク
・ゴミ袋
・メガネもしくはゴーグル

【布を使った着物カビ取りの手順】

1)メガネもしくはゴーグルをかけ、マスクをして手袋を着用します。
2)屋外(ベランダ・庭等)に着物を干します。
3)白カビが生えている部分を、布で優しくなでるようにして落とします。
4)内側から軽く叩くようにして、さらにカビを落とします。
5)カビが取り切れたら、使用した布や手袋をすぐにゴミ袋に入れます。
6)タイプ1.もしくはタイプ2.の方法で、生地に残ったカビ臭さを取ります。

※作業は湿度の低い日に行うのが理想的です。
※直射日光のあたる場所での作業は避けましょう。
※布で強く振袖・着物の生地をこすらないようにしましょう。カビが繊維の奥に入り込んで取れなくなります。
※着物の表面のカビをとっても繊維に白い斑点が残る場合、カビの繁殖が進んで自宅ではカビが取り切れなくなっています。カビ取り作業はその時点で中止しましょう。

必読!着物カビ取りの応急処置をする時の注意点

自宅での着物のカビ取り・カビ臭いニオイ対策をする時には、以下の点に注意しましょう。

絶対ダメ!振袖・着物のカビの臭い取りNG編

振袖・着物の自宅でのカビ取り応急処置方法を読んで「いつもの洋服向けの方法と違う」「もっと手軽に早く着物のカビのニオイを取りたい」と思った人も多いのではないでしょうか?

でも残念ながら、素早く消臭できる洋服向けの消臭法はデリケートな着物には使えません。特に以下のような方法を取ると、振袖等がダメになってしまうこともあるのです。

●消臭スプレーをかける→×
『ファブリーズ』『リセッシュ』等の消臭スプレーは水をベースとしているため、水洗い・手洗いNGの着物にスプレーをすると水濡れによる「輪ジミ」「水シミ」を作ってしまいます。

代表的な消臭スプレー製品の取扱説明書でも、着物・帯等の和装品には使用不可であることが明記されているのです。特に振袖等に使われる正絹(シルク100%の生地)の場合、消臭スプレーの使用が「取れないシミ」を作る可能性大!消臭スプレーを使うのは絶対に止めましょう。

●アルコールで拭く/スプレーする→×
エタノール等のアルコール類は殺菌力が強いので、フキンや丈夫な衣類等のカビ取り等には向いています。しかし洗えない振袖等の着物にアルコールを使うのはNG!染色や繊維の種類によっては、アルコールによる変色や色抜け、色あせ等が起きることがあります。

●スチームアイロンをかける→×
動物・汗・タバコのニオイ等の臭い取りには、スチームアイロンは有効です。しかしガンコな「カビ」の臭いは、家庭用のスチームアイロンではなかなか取ることができません。

また着物の取扱いに慣れない人がスチームアイロンをあてると、着物の生地を縮ませてしまい、元に戻らなくなる恐れがあります。さらに蒸気をあてすぎたことでカビが増殖し、臭いが悪化する可能性も。ご自宅での振袖・着物のカビ取りの応急処置にはおすすめできません。

着用後には本格的な振袖・着物のカビ取りを

上記でご紹介した着物のカビ取り・カビ臭い場合の対処法は、あくまでもカビ発見直後の着用に間に合わせるための「応急処置」でしかありません。

一度でも「カビ臭い」と感じた着物には、カビ菌の根が繊維の奥にまで張っています。白カビの表面やその時のニオイを飛ばしても、繊維の奥のカビ菌が再度繁殖し、時間が経てばニオイは元に戻ってしまうのです。

また保管状態が悪ければカビの繁殖の勢いはさらに増し、カビによるシミ・変色等が起きてしまう可能性も。応急処置後に一度着用したら、早めに専門店に本格的な着物・振袖のカビ取りを依頼することをおすすめします。

自宅で着物のカビ取り応急処置ができないこともある?

カビの種類や程度、着物の種類等によっては、自宅で振袖等の着物のカビ取り・カビの臭い対策等が一切できないこともあります。

【着物カビ取り応急処置ができない例】

・青っぽい斑点・緑色の斑点がある(青カビが生えている)
・黒っぽい斑点がある(黒カビが生えている)
・茶色・オレンジ色の小さな斑点が散らばっている(カビが変色している)
・広い範囲が変色している(黄変が見られる)
・着物の地色・柄部分が変色している
・帯(袋帯等)がカビ臭い、カビによる変色がある

上記のような場合には、カビの部分にできるだけ触れないようにして、なるべく早く専門店に相談をしましょう。また専門店に持ち込むまでの間には、他の衣類とカビの生えた着物を離しておくことも大切です。

クリーニングに振袖・着物のカビ取り依頼する時のポイント

振袖等の着物に生えたカビは、一般的な汚れに比べてかなり厄介な汚れです。キレイに着物カビ取りができるように、クリーニングに出す場合には以下のような点をしっかり確認しておきましょう。

「着物丸洗い」では振袖のカビが落ちない?

「着物クリーニング」で一般的に選ばれるメニュー「着物丸洗い」では、振袖・着物のカビ臭いニオイやカビによるシミ・変色等は落とすことができません。

この「着物丸洗い」とは、洋服で言うところの「ドライクリーニング」のような洗濯方法のこと。着物をほどかずに石油溶剤を使って洗うこの方法は、皮脂汚れ等の油汚れを落とすのは得意なのですが、カビ汚れを落としきることは苦手なのです。

振袖等の着物のカビ取りをするには、職人の手仕事による「カビ取り」「シミ抜き」の工程が必要になります。着物のカビ取りを依頼する場合には、必ず「カビ取り」「シミ抜き」等のメニューがある店舗(着物のクリーニングを専門に扱う店舗)を選ぶようにしましょう。

重度のカビは「染色補正」の必要も?

「着物がカビ臭い」と感じるニオイの程度が軽い、シミの範囲がとても小さい…というような「軽いカビ被害」の場合であれば、「カビ取り」の工程だけでカビ菌をスッキリとキレイに落とすことができます。

しかし以下のような場合は、カビ取りだけでは着物を元の状態に戻せないこともあるのです。

【重度のカビによる被害の例】

・カビの繁殖範囲が広い(変色範囲が広い)
・地色が色抜けを起こしている
・柄の部分が変色している 等

このような場合には、地色に再度色をかけたり、柄に色をつけ直すような「染色補正」の対応が必要となることもあります。振袖・着物の状態を見て、染色補正の対応も含めて「見積もり」を出してくれるような専門店を選ぶことをおすすめします。

帯のカビには「洗い張り」メニューがあるか確認!

振袖等の「着物」にカビ臭さやカビの発生を見つけたら、一緒に保管している「帯」の状態も確認しておきたいところ。袋帯(ふくろおび)・名古屋帯(なごやおび)等の「帯」がカビ臭い場合、クリーニングの「カビ取り」ではニオイが取れない場合があります。

これは「芯材(しんざい)」にカビが生えている可能性が高いため。芯材とは帯の形を整えるために中に入っている厚手の生地で、綿・絹等で作られています。外側からカビを取ろうとしても「芯」の部分には届かないので、帯にはカビが再度繁殖しやすいのです。

帯のカビ取りをするには、一度帯をほどいて布の状態に戻し、芯材を取り替える必要があります。クリーニング店を選ぶ時には着物・帯等をほどいて洗う「洗い張り(あらいはり)」のメニューがあるかどうかを確認し、「帯のカビ取りができるか」を相談した方が良いでしょう。

<<おわりに>>
振袖等の着物のカビ取りや、カビ臭いニオイの取り方はいかがでしたか?押し入れやクローゼットの湿度の状態によっては、カビ菌は短期間でも一気に増えてしまうことがあります。「この程度のカビ臭さならまだ大丈夫では…」と甘く見ずに、早めに本格的なカビ取りをしましょう。