七五三の着物は着た後のお手入れの仕方で、キレイな状態を保てるかが決まります。
七五三の着物を着た後は、汗抜きや陰干しなどを行い、できるだけ早く着物専門のクリーニング店へ。

せっかく購入した七五三の着物。
下の子どもに着せる可能性もありますし、大切な記念品としてとっておくためにも、適切なお手入れと保管方法を知り、いつまでも美しい状態を維持しませんか。

七五三の着物を着た後の自宅でのお手入れとは

七五三の行事がすべて済み、子どもの着物を脱がせたら、必ずやってほしいお手入れがあります。

着物の肩上げ·腰上げをほどく

七五三の着物の肩上げと腰上げには、子どもの寸法に着物を合わせるという意味だけでなく、「いつか肩上げや腰上げを解き、着物を大きくして着るほど成長しますように」という願いが込められています。

そのため、七五三の着物には必ず肩上げと腰上げが施されているのですが、着物を長期間保管するときには、この肩上げと腰上げをほどきます。

もしも下の子どもにも同じ着物を着せる予定であっても、一年以上も先のことですし、寸法も異なりますから、肩上げ·腰上げはほどいておいたほうがよいでしょう。

肩上げ·腰上げをほどかずに着物を保管してしまうと、着物のシワが取れにくく、縫い合わせた部分には湿気がこもりやすいため、カビやシミ、虫食いなどのトラブルが起こる可能性が高くなります。

七五三の着物をできるだけキレイに保管するためには、肩上げ·腰上げを解くことが大切なのです。

ただし、七五三が済んでも年明けのお正月にはもう一度着物を着るなど、近々着物を着る予定があるなら、肩上げ·腰上げはそのままにしておき、その予定が終わって保管するときに肩上げと腰上げをほどきましょう。

「汗抜き」をする

次に「汗抜き」を行います。

着物の汗抜きとは、付着した汗の成分をできるだけ取り除くお手入れのこと。

子どもは大人よりも体温が高いため汗をかきやすく、七五三の着物には大量の汗が付着しています。
この汚れを残したままで着物を保管すると、数年後には着物の変色の原因に。

汗の汚れは時間が経つほど取れにくくなるため、早めにお手入れすることが大切です。

【用意するもの】

·白いタオル2~3枚

·バスタオル

·着物用ハンガー

【汗抜きの手順】

  1. バスタオルなどの大きめのタオルを下に敷いておきます。
  2. 七五三の着物を裏側を上にして広げます。
  3. 柔らかいタオルを水に浸して固く絞ります。

ゆるく絞った状態だと水シミの原因になるので気をつけて。

  1. 汗をかいた部分をタオルでトントンと叩いて、汗の成分をバスタオルに移していきます。
  2. 常にタオルのキレイな面が当たるように、接触する面を替えながら叩きます。
  3. 乾いたタオルでさらに叩き、水分を吸い取ります。
  4. 陰干しをします。

「陰干し」をする

七五三の着物を着た後には欠かせない、もう一つのお手入れが「陰干し」です。

陰干しとは、直射日光の当たらない風通しのよいところに着物を干すことをいいます。

一度着用した着物には、たくさんの汗や水分が含まれています。これを陰干しでできるだけ飛ばすことで、保管中のカビや変色、虫食いといったトラブルを防ぐことができます。

【用意するもの】

·着物用ハンガー

※物干しや突っ張り棒等でも代用可能。

【陰干しの手順】

  1. 七五三の着物を着物用ハンガーにかけます。
  2. 直射日光の当たらない場所に干します。ガラス窓越しでも日の当たる場所は避けて。
  3. 湿気が少ない時期なら窓をあけて換気をします。雨の日や湿度が高い場合にはエアコンなどで除湿を。扇風機やサーキュレーターの弱風を当ててもOK。
  4. 着物の湿り具合に合わせて、1~3日程度陰干しします。

七五三の着物に汚れを見つけたら「染み抜き」を

肩上げや腰上げを解くときに、着物に汚れがないかをしっかりと確認します。

もしも七五三の着物にシミや汚れを見つけたら、できるだけ早く対処しましょう。

汚れやシミの原因を確認

七五三の着物の染み抜きが可能かどうかを判断するためには、シミの原因と特徴を知ることが大切です。

1.水溶性のシミや汚れ

水溶性のシミや汚れとは、水には溶けるが、油には溶けない汚れのこと。

汗やお茶、ジュースなどの水溶性の汚れを自宅で落とすには水洗いが必要です。

洗える着物で、シミが新しいものならば自宅でも染み抜きができます。

自宅で洗えない着物の場合には染み抜きはできませんから、すぐに着物専門のクリーニング店に持ち込みましょう。

2.油溶性のシミや汚れ

油溶性のシミや汚れとは、油(溶剤等)には溶けるが、水には溶けにくい汚れのこと。

皮脂やファンデーション、オイルなどが原因で、汚れの範囲が小さく、新しい汚れであれば、ベンジンなどの溶剤で汚れを取り除くことができるものもあります。

ただし、広範囲に汚れていたり、古い汚れの場合は自宅用の溶剤では落ちないため、クリーニングに出すことをオススメします。

3.混合性のシミや汚れ

混合性とは、水溶性と油溶性の両方の性質を持つ汚れのこと。

スープやラーメン、母乳や牛乳のシミなどの混合性汚れを自宅で落とすには、油(溶剤等)で油溶性の汚れを落としたあと、水洗いなどで水溶性の汚れを落とします。

そのため、自宅で洗える着物なら対処できますが、自宅で水洗いできない着物の場合には対処できませんので、できるだけ早く着物専門のクリーニング店にお願いしましょう。

4.不溶性のシミや汚れ

不溶性のシミや汚れとは、水にも油(溶剤)にも溶けない汚れのこと。

泥はねやボールペンのインク、墨や墨汁、ペンキの汚れなどの不溶性の汚れは自宅での対処は不可能です。また、一般的なクリーニング店では断られることも。

七五三の着物に不溶性の汚れが付着した場合には、できるだけ早く着物専門のクリーニング店に相談しましょう。

七五三の着物の素材を確認

七五三の着物を着用した後、シミや汚れが見つかった場合、自宅で染み抜きなどのお手入れができるかどうかは、着物の素材によっても異なります。

正絹(シルク)の場合は、水洗いなどの水を使ったお手入れをすると、その部分が縮んで元に戻らなくなるため、自宅での処置はNG。クリーニングに出しましょう。

ポリエステルの着物の場合は、水洗いでのお手入れは可能です。

ただし刺繍や縫い付け、プリーツなどの加工がある場合、ポリエステルの着物でも自宅では洗えない可能性があるので、洗濯表示を確認しましょう。

ウォッシャブル加工の着物の場合、自宅で洗濯することを前提にした加工が施されているため、自宅での洗濯や水を使った染み抜きを行うことができます。

中には洗濯表示や素材表示がない七五三の着物もあります。

七五三の着物は正絹(シルク)の可能性がもっとも高いので、素材がわからない場合には自宅では処理せず、クリーニングに出すことをオススメします。

型崩れしやすい被布はクリーニングへ

三歳の七五三の衣裳には、被布着や被布コートと呼ばれる、ベストのように袖のない衿付きの羽織物が欠かせません。

着物の上から羽織る被布にはシミや汚れがつきやすいのですが、被布には綿が入っているため、汚れを落とそうと水に濡らしてしまうと綿が縮んでしまい、型崩れしやすくなります。

さらに被布には被布飾りという綿入りの細工物や繊細なつまみ細工、長い房などが付いているため、自宅でお手入れしようとすると壊れたり、色落ちする可能性も高くなります。

そのため被布の場合は、汚れの種類や生地の素材に関わりなく、クリーニングに出すことをオススメしています。

洗えない着物の染み抜き方法

自宅では洗えない七五三の着物の場合でも、次の条件に当てはまる汚れなら、自宅で染み抜きができる可能性があります。

·汚れが水をほぼ含まない油溶性の汚れ

·付着してから1週間以内の汚れ

·汚れの範囲が1cm以下の小さなシミ

·色が広がる恐れのある色素汚れではない

【用意するもの】

·ベンジン(クリーニング用)

·ガーゼ または やわらかい布

·白いタオル(捨ててもよいもの)

·着物用ハンガー

【準備と注意事項】

·揮発性のベンジンは吸い込むと有害なため、作業中は窓を開けるか、換気扇で換気します。

·ベンジンは引火性のため、ストーブ、コンロ、ライター等の火器類の使用は厳禁。

·着物の生地や染料の種類によってはベンジンの影響で色落ちや変色が起きる可能性があるため、着物の裏側など見えない部分で事前テストを行い、問題がある場合は自宅でのお手入れは中止を。

【染み抜きの手順】

  1. 床やテーブルなどにタオルを敷きます。
  2. タオルの上に着物の汚れやシミがある部分を広げます。
  3. ガーゼややわらかい布にベンジンをたっぷりと染み込ませ、汚れの部分を軽く叩きます。
  4. 叩いた汚れはタオルに落ちるため、下のタオルと上のガーゼの面を動かし、常時キレイな面が当たるように作業を続けます。
  5. 汚れが取れたら、もう一度ベンジンをたっぷりガーゼに染み込ませます。
  6. ベンジンで濡れた境目をぼかすように軽く叩いて広げ、輪郭がわからないようにします。
  7. 着物用ハンガーに着物をかけて干します。

ベンジンの染み抜きでは強くこすったり叩いたりするのはNG。着物の表面の毛羽立ち、色落ち、変色の原因になります。ベンジンのぼかしが不十分だと輪染みができてしまうことも。

汚れが落ちきらない場合には、無理に染み抜きを続けずに、すみやかに専門店に相談しましょう。

洗える着物の染み抜き方法

自宅で洗える素材の七五三の着物なら、自分で対処できるシミの種類と範囲が広がります。

汚れが水溶性、油溶性、混合性のいずれかで、汚してから3~4日以内、色素が比較的少ないものなら自宅での対処が可能です。

ただし、ぶどうなどのフルーツジュースやコーヒー、赤ワインなどの色素の多いシミの場合は対処が難しいため、できるだけ早くクリーニングに出しましょう。

【用意するもの】

·中性タイプの液体洗濯洗剤

·大きめの洗面器

·バスタオル2枚

·着物用ハンガー

·安全ピンまたは針·糸

·アイロン

·アイロン台

·霧吹き

·あて布

【準備】

自宅で着物を洗う場合、衿元が型くずれしやすいため針と糸で縫い止めておきます。

縫うのが難しい場合には、安全ピンを使うといいでしょう。

【染み抜きの手順】

  1. 油溶性や混合性の汚れの場合は前述した「洗えない着物の染み抜きの手順」でベンジンでの染み抜きを行い、事前に油汚れを溶かしておきます。
  2. シミや汚れがある部分が表になるように、七五三の着物を畳みます。
  3. 大きめの洗面器に水を張り、中性洗剤を適量入れて溶かし、七五三の着物を浸します。
  4. 汚れが気になる部分には洗剤を直接、少量だけつけて、優しく振り洗いをします。
  5. シミや汚れが取れたら、全体を上から押すようにして洗います。
  6. 水を2回ほど取り替えて、しっかりとすすぎます。
  7. バスタオル2枚で着物を挟み、軽く叩くようにして水分を吸い取ります。
  8. 着物ハンガーに着物をかけて形を整えたら、陰干しをして乾かします。
  9. アイロンで着物の形を整えます。

七五三の着物をクリーニングに出す場合

自宅で染み抜きが出来たからといって、クリーニングに出さなくてもよいわけではありません。

染み抜きができなかった七五三の着物も、できた着物も、必ず保管前にはクリーニングに出すことが大切です。

では、着終わったあとの七五三の着物は、どんなタイミングで、どのようなクリーニングをお願いすればよいのでしょうか。

今後の着用予定がないなら「丸洗い」+「汗抜き」を

七五三の着物は今後の着用予定がない場合、数年以上、もしかしたら数十年も自宅で保管することになります。

そんなときには「丸洗い」+「汗抜き」で、着物全体の汚れと汗汚れをしっかり落としておくと安心です。

とくに汗汚れは長期保管中のカビや変色の原因になります。

自宅で汗抜きしたから大丈夫と思うかもしれませんが、自宅での処置はあくまで応急処置です。クリーニング店でしっかりお手入れしてもらうことで、カビやシミなどのトラブルを予防することが出来ます。

自分で対処できないシミなら「染み抜き」もプラス

もしも、自分で対処できない汚れやシミが付着している場合には、 「丸洗い」+「汗抜き」に「染み抜き」もプラスしましょう。

とくに、いつ付着したシミかわからない、シミの範囲が広い、シミの原因がわからないなど、自分では手に負えないシミは触らずにそのままクリーニング店にお願いするのが得策です。

また、着物に付着した汚れをすっきりと落とすには、できるだけ早くクリーニングに出すことが大切です。自宅で慣れないお手入れを無理して行うよりも、さっさとクリーニングに出してしまったほうが汚れがキレイに落ちる可能性が高まります。

きものトトノエのような着物専門のクリーニング店を選ぶ

一般のクリーニング店でも着物の「丸洗い」なら受けてもらえるかもしれませんが、熟練の職人技がものを言う「汗抜き」や「染み抜き」などは、着物専門のクリーニング店に依頼したほうが安心です。

とくに、着物の状態をしっかり診断してくれる「匠診断」を行っているきものトトノエならば、こちらが見逃してしまったシミや汚れもしっかりと落としてくれます。

できるだけ長くキレイな状態で七五三の着物を維持したいのなら、専門店を利用しましょう。

七五三の着物を保管するには

クリーニングから戻って来た着物は、保管中にトラブルが起きないように大切に保管しましょう。

たとう紙に入れて平らに保管を

七五三の着物はたとう紙に包んで、平らな状態で保管するのが基本。

ハンガーで吊るした状態で長期間保管すると縫い目が傷むのでやめましょう。

「きものキーパー」を利用する

七五三の着物は風通しの良い状態で保管することで、カビやシミの予防になります。

そのため桐の箪笥や和箪笥が良いといわれていますが、最近は箪笥自体を置いていないご家庭も多いため、たとう紙ごと着物を入れることができる保存袋が人気を集めています。

中でも、カビやニオイ、害虫、変色などの大敵から守ってくれる着物専用の保存袋「きものキーパー」なら、大切な着物を美しい状態のまま長く保管することが出来ます。

防虫剤と防湿剤は定期的に交換を

きものキーパーのような高性能の保存袋を使用せずに保管する場合は、着物をカビや虫食いから守ってくれる防虫剤と防湿剤(湿気取り)を必ず入れて、定期的に交換しましょう。

年に2回の虫干しを忘れずに

普通に保管しているだけでも、着物には湿気が少しずつ溜まってカビや変色の原因になります。年に2回は着物を虫干しして、繊維の中に溜まった湿気を取り除きましょう。

まとめ

七五三の着物を着た後は自宅で陰干しと汗抜きを行い、できるだけ早く着物専門のクリーニング店に出しましょう。

出番を終えた七五三の着物は長期間保管することになるため、クリーニング店では「丸洗い」と「汗抜き」をお願いするのが一般的です。

シミや汚れをつけてしまうことも多い七五三の着物。

着物の素材と汚れの種類によっては自宅で落とすこともできますが、無理して自宅で染み抜きを試すよりも、できるだけ早くクリーニング店で「染み抜き」をしてもらうことをオススメします。