着物にとって雨の日は厄介ですよね。
着物で雨の日に出かけると、どんなに注意していても雨に濡れて水染みができてしまうことに。
この水染みは自分で落とすのが難しく、クリーニングが必要になります。とはいえ、卒業式や結婚式等のイベントの場合、雨だからと着物で行くのをやめるわけにもいかないし……。
そこで、着物で雨の日に出かける時の対策や、着物に雨染みができてクリーニングに出す時の注意点を解説します。
目次
着物の雨の染みを防ぐ!5つの予防対策
雨や雪等の荒天は、いつ起こるかわかりません。着物に雨の染みを作ってしまわないように、まずは万全の予防対策をしておきましょう。
雨コートを準備する
着物の雨染みを防ぐ手軽な対策が「雨コート」です。雨コートとは、外出時に着物を濡らさないために着る上着のこと。着物専用のレインコートのようなものです。
雨コートは水濡れに比較的強い生地や撥水加工を施した生地、ナイロン等で作られており、色合いやデザインも様々。着物の上から羽織るだけで着物の水濡れ・雨染みを予防してくれます。
雨コートの形の種類
・対丈(ついたけ)タイプ:おはしょり無しで羽織るように着られるタイプです。最もポピュラーな形と言えます。
・二部式(にぶしき):コートが上下に分かれていて、上は道行(みちゆき)の形、下は巻スカートのような形状です。晴れてきた時には下の部分をはずして、塵除け(ちりよけ)として着ることもできます。
雨コートの素材の種類
・繻子(しゅす):光沢感があり上品なのが特徴。雨コート姿の時にも高級感が必要な時にピッタリです。価格は20,000円~40,000円位です。
・ポリエステル:自宅で洗えてお手入れがラクです。小さく折り畳めるタイプもあります。価格はカジュアルなものでは5,000円前後、シックなデザインだと15,000円~20,000円くらいになります。
・ナイロン:いかにもレインコートといった見た目になります。価格は安いものでは1,000円台からとお手軽です。
着物の雨の染みを作らないために、雨コートは裾までスッポリと隠す長さがあるものを選ぶことが大切!また振袖の場合には、袖の長さに合ったものを用意しておきましょう。
撥水加工をしておく
新しい着物を買ったばかりだったり、着用予定がまだ先で早めに着物の雨の染み対策をしておきたい時…そんな場合には、クリーニング店等の専門店で着物に撥水加工(はっすい・かこう)を施しておくのがおすすめです。
撥水加工とは、水を弾きやすいウォータープルーフ成分を着物の生地表面にかける加工のこと。フッ素系樹脂等で生地表面を覆い、水分を弾きやすくします。
お店によっては着物の撥水加工は「ガード加工」「パールトーン」といった名前で呼ばれることも。いずれにしても「撥水加工がしたいです」と相談すれば伝わるでしょう。
撥水加工をしておくと、着物の雨染みを防ぐだけでなく、その他の汚れも取りやすくなります。今後の着物のクリーニング代・シミ抜き代を抑えることにも繋がりますよ。
撥水スプレーをかける
「着物の雨の染み対策にクリーニング屋で撥水加工をしたいけど、イベントが間近で間に合わなそう…」そんな時には、着物専用の撥水スプレーを購入して使ってみるのも手です。
撥水スプレーにはフッ素樹脂等が含まれていて、水を弾きやすい生地表面にしてくれます。なお一般的な防水スプレー(皮用・布用等)だと、正絹には使えずシミを作ってしまうことも。着物専用・和服対応と推奨されたものを使いましょう。
着物専用の撥水スプレーなら、正絹の使用OKと明記してあることがほとんどです。ただし染色方法等によっては撥水スプレーが使えない着物もあるので、使用説明書をよく読んでから使ってください。
徒歩での移動は避ける
着物に撥水加工を施し、雨コートを着ても、それで着物の雨の染みが絶対にできない、クリーニング要らず!というわけではありません。撥水加工は「水を弾きやすくする」というもので、グッショリと濡れてしまったら意味が無いのです。
特に大雨・台風・雪の時等には、撥水加工+雨コートでも裾まわりの部分等が大幅に水濡れをしてしまう可能性があります。荒天の日には徒歩移動を避け、タクシーや自家用車を使うようにしましょう。
応急処置用の白ガーゼハンカチを持ち歩く
出先で着物に雨の染みができてしまった場合、できる応急処置は「とにかく水分を取る」ということのみです。ただしこの時、以下のような布類で着物を拭いてはいけません。
着物の雨染み:応急処置のNG例
・おしぼり:おしぼりに含まれる香料・薬液等によって着物が変色する恐れがあります
・色物の手ぬぐい:水濡れが激しい場合、色物のタオルや手ぬぐいは色落ちし、着物に色が移る可能性があります
・使い古したタオル:繊維が固くなっているタオルや布で強く拭くと、着物の生地の毛羽立ち・スレや色ハゲの原因になります
着物を傷めずに優しく水分を取れるように、白のガーゼハンカチを数枚持ち歩くようにしましょう。少しでも濡れたら即時でトントンと軽く抑えてしっかりと水分を取っておけば、着物の雨の染みの被害を軽くすることに繋がります。
着物に雨の染みが!クリーニングに出す時の注意点
「予防対策をしたつもりだったけれど、それでも着物に雨の染みができた」…こんな時には、クリーニング店にできるだけ早く持ち込んで対処をしてもらいましょう。
特に以下のような場合、着物の雨の染みを自分で処理するのは厳禁です。自己判断でアイロン等をかけた結果、専門店でも着物の状態が元に戻らなくなることがあります。
着物の雨染み・速攻クリーニングが必要なケース例
・グッショリと着物が濡れた
・手で触ると水濡れがわかる
・雨に濡れた範囲が広い
・地色の色・柄の色が変化している
・生地が縮んだ・膨れたように見える
・柄がぼやけたように見える
また雨染みで着物をクリーニングに出す場合、お店選び等の以下のような点にも注意しましょう。
着物専用または着物に強いクリーニング店を選ぶ
着物の雨の染みは、一般的なドライクリーニング(きもの丸洗い)では直せません。「シミ抜き」や、場合によっては「洗い張り(あらいはり)」、「色掛け(染色の補正)」等、着物の状態に合わせた専門的な対応が必要になります。
そのため、洋服向けの普通のクリーニング店に雨の染みができた着物を持っていくのはNG!着物向けの技術が無い可能性が高い上、そもそも「どんなクリーニングが必要なのか」をスタッフさんが判断できない恐れがあります。
雨の染みができた着物をクリーニング店に持ち込む場合には、「着物専用」「和装向け」の店舗を選ぶか、呉服店等が推奨する悉皆屋(しっかいや)を選ぶのが理想的です。
見積もりを事前に出すお店か確認しておく
上でも触れましたが、着物の雨の染みを直すためのクリーニングのメニューはひとつとは限りません。着物の濡れ方・染みの範囲等によっては、着物を反物の状態に戻して洗う「洗い張り」が必要になることもあります。
また雨濡れによって染料が流れ出た場合、地色の補正や、柄の書き直し等も求められます。これらはいずれも高度な専門技術と時間・手間がかかる対策で、その分、料金も高額になりがちです。
作業が終了してから予想外の料金を提示された…ということでは困りますよね。着物を元の状態に直すためにどのような工程が必要なのか?料金がいくらになるのか?作業前にキチンと見積りを出してくれるクリーニング店を選ぶようにしましょう。
持ち込みは着物を乾かしてから?濡れたままでOK?
着物の雨の染みができたら、クリーニング店にできるだけ早く持ち込んだ方が良いと言われています。実店舗があるクリーニング店であれば、着物が乾ききっていない状態でも早めに持ち込んで、相談をした方が良いでしょう。
ただし宅配型の着物クリーニング店の場合、配送中に着物が濡れていると、カビが発生する恐れがあります。事前にクリーニング店に連絡をして乾燥までの救急処置をレクチャーしてもらい、乾いてから着物を送りましょう。
おわりに
着物の雨濡れによる染みの予防対策とクリーニングに出す際の注意点はいかがでしたか?着物に雨の染みができると、程度によっては一般的なクリーニングだけでは着物を元に戻せないこともあります。
万一染色補正等が必要になる場合、着物の雨染みのクリーニング料金は総額数万円以上にもなることも。着物の雨の染みを作らないための「予防対策」にしっかりと手間をかけた方が得策と言えそうです。