着物がファンデーションで汚れた時の落とし方を知っていますか?着物にファンデーションがつかないようにと注意を払っても、気がついた時には衿元や胸元にファンデーションが!?メイク中の粉飛びも困りものです。そこで、着物がファンデーションで汚れた時のシミ抜きの方法や、やってはいけない応急処置などを詳しく解説していきます。
目次
ファンデーションは「応急処置」で取れなくなる?
振袖等の着物のファンデーションの汚れについて、外出先の鏡の中で「衿の縁がなんだか白っぽい!」と気づくケースは珍しくありません。また外出先でのメイク直しの際にファンデーションのお粉を飛ばしてしまった…という失敗のケースも多く見られます。
特に地色が濃い着物だとファンデーションの汚れは目立つため、なんとか応急処置をしたくなるところ。でもファンデーションのシミの場合、以下のような応急処置は絶対にNGなんです。
ファンデーションの応急処置のNG例
・濡らしたハンカチやタオル・おしぼりで拭く
・石鹸水等を含ませる
・ウェットティッシュ・除菌ティッシュで拭く
・乾いたティッシュやハンカチで強く拭く
上記のような間違った応急処置を行うと、振袖についたファンデーション汚れがなかなか落ちにくいガンコなシミとなることもあります。
ファンデーション汚れは外では落としにくい
ファンデーションには「リキッドファンデーション」「クリームファンデーション」「パウダリーファンデーション」の3種類がありますが、どれにも「油分」が多く含まれています。特に汗で崩れないウォータープルーフタイプのファンデーションは、水を弾く成分の配合率が高いです。
このような特性から、ファンデーションの汚れは「水・水分」では落とせません。中でもパウダリーファンデの成分は、水分を含むと強く繊維と密着してしまいがち。「汚れを取ろう」と水分を含んだおしぼり等で拭くほど、汚れが取れなくなります。
またファンデーションは、肌にピッタリと密着させるために粒子が細かいのも特徴です。そのため乾いたティッシュで拭いただけでも、汚れを繊維の奥にさらに押し込んでしまいます。
汚れがひどい場合だけティッシュでオフ
衿元等にファンデーション汚れがごく軽く付いたという場合、外出先では汚れ部分をできるだけ触らずに帰宅した方が無難。ただメイク直しの時に誤ってファンデーションをドップリと付けてしまった…という場合には、表面の汚れだけを軽くティッシュで拭い取りましょう。
ファンデーションにオイルはダメ!NGな汚れの落とし方
Tシャツ等の洋服についたファンデーション汚れの場合、以下のような汚れの落とし方がインターネットでもよく紹介されています。「やったことがある」という人も多いのではないでしょうか。
洋服の場合のファンデーション汚れの落とし方
・クレンジングオイルを使う方法
・オリーブオイルを使う方法
でも残念ながら、上記のような汚れ落としの方法は「着物・振袖」には原則として使えません。クレンジングオイルやオリーブオイルはファンデーションを溶かすことはできますが、今度はオイルの成分(油汚れ)が繊維に残ってしまうのです。
オイル成分を洗い流すためには、強力な洗濯用洗剤やお湯での洗浄が必要。正絹(シルク)等の繊細な生地で作られている振袖等の礼装用着物は、洗剤での洗濯・お湯洗い等ができません。そのためご家庭にある食用・化粧落とし用等の「オイル」は、汚れ落としに使えないのです。
着物のファンデ汚れは「ベンジン」or「アルコール」で対処
では家庭では着物のファンデーション汚れを落とせないの?--そんなことはありません!「ベンジン」や「アルコール」を使えば、油溶性であるファンデーションを分解してシミを落とすことができます。
「ベンジン」は油の一種ですが、空気に蒸発するという「揮発性(きはつせい)」を持つのが特徴。また「アルコール」も同様に空気に蒸散しやすい特徴を持っています。
ベンジンやアルコールはどこで買える?
ベンジンやアルコールは、薬局やドラッグストアで買うことができます。シミ抜き用のベンジンは、洗濯用洗剤コーナーで取り扱われていることがほとんど。またシミ抜き用のアルコールとしては、消毒用・医療用として発売されている「エタノール」を使えばOKです。
振袖・着物についたファンデーション汚れの落とし方
用意するもの
・ベンジンもしくはアルコール(エタノール)
・ガーゼ(アルコールの場合はコットンでもOK)
・白いタオル(汚れても良いもの)
・マスク(ベンジン等の吸引防止)
・作業用ゴム手袋(手荒れ防止)
・和装用ハンガー
※作業をはじめる前に、必ず下の注意事項をチェックしましょう。
作業の手順
1)振袖・着物を広げて、ファンデーション汚れがある部分の裏側にタオルをあてておきます。
2)ガーゼにベンジンもしくはアルコールを染み込ませます。
3)汚れのある部分を2)のガーゼで軽くトントンと叩き、汚れを移し取ります。
4)常にガーゼのキレイな面が布地にあたるように、ガーゼを動かしていきます。
5)汚れが目立たなくなったら、新しいガーゼにベンジンかアルコールを含ませ、濡れた部分と濡れていない部分の境目部分をよく叩いて、輪郭(りんかく)をぼかします。
5)和装ハンガーに振袖・着物をかけて、よく乾かします。
作業の注意点
・ベンジン・アルコールは、着物を変色・色落ち・褪色させることがあります。必ず裏面等の目立たない場所に付けて事前にテストをしてください。
・ガーゼやコットンでシミを強く叩く・こするのは厳禁です。生地が毛羽立ったり、色が抜ける原因になります。
・ファンデーションの汚れがとれた後では、輪郭(りんかく)をぼかす作業をていねいに行いましょう。ベンジンによる「輪ジミ」ができることがあります。
・空気中に飛散したベンジン・アルコールの成分を吸い込むと危険です。作業中はかならず窓を明けて、よく換気をしましょう。
・ベンジンは引火性です。作業中には調理器具・ストーブ・湯沸かし器・ライター等は一切使わないでください。火事や爆発を招く恐れがあります。
着物の汚れ落としの作業が難しい時は専門店へ
振袖や着物のファンデーション汚れを落とすには、ご紹介したように「ベンジン」や「アルコール」等を使う必要があります。しかしガンコなファンデ汚れが落とせるベンジンやアルコール類は、「強力で扱いにくい溶剤」でもあるのです。
例えばベンジンの作業に失敗して「輪ジミ」ができてしまった場合、これを自分で直すのはとても難しいところ。また万一アルコールで着物が変色してしまうと、着物を元に戻すのはプロの手でも難しくなります。
作業に不安がある場合、ファンデーションの汚れ落としはクリーニング店に依頼をした方が無難です。
ファンデーション汚れは「きもの丸洗い」で落とせる?
ファンデーションの汚れは油溶性なので、油剤を使う「きもの丸洗い(ドライクリーニング)」でも比較的落としやすいです。ただし汚れの範囲が広かったり、油分がタップリ染み付いている場合には、「着物丸洗い」では汚れが取り切れないことも。
また汚れが付いてから時間が経っている場合には、丸洗いではシミが残ることがあります。着物の扱いに詳しい専門のクリーニング店に、「着物丸洗い」でOKか「シミ抜き」をした方が良いかを相談することをおすすめします。
おわりに
振袖や着物に付いたファンデーション汚れの落とし方はいかがでしたか?ファンデーションに含まれる油が酸化すると、着物の「テカリ」や「変色」等の原因となってしまうこともあります。「ほんの少しの汚れだから…」と甘く見ずに、早めにキチンとした汚れ対策をしましょう!