どうしても取れない着物の変色やシミがある…こんな時には、着物の「染め直し」をしてみませんか?「染め直し」とは、着物の地色や柄の色を変え、新しい着物のように生まれ変わらせる技術のことです。

着るのを諦めていたシミがある着物も、染め直しをすれば新品気分!またご家族に昔の着物を譲りたい時にもピッタリです。今回は着物のシミを染め直しでカバーする方法について、種類や注意点を解説します。

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こんな着物のシミ・トラブルには染め直しがおすすめ

着物のシミには様々な種類があります。中には、クリーニング店のシミ抜きでも対応が難しいものも。「染め直し」をした方が良い着物のシミやトラブルにはどんなものがあるのでしょうか。

水濡れによる色滲み・色抜けがある

雨等による多量の「水濡れ」によって染料自体が流れ出してしまった場合、その部分の柄が滲んだり、地色が色抜けをしたように見えることがあります。

このような染料自体が流れ出したトラブルが起きたら、着物はシミ抜き等では元に戻せません。染め直しで再度色を入れていく必要があります。

黄変による変色シミがある

黄変(おうへん)とは、着物に含まれた汗・皮脂の成分(マグネシウム・アンモニア等)が着物を変色させる現象です。白色等の薄色の地色の場合、黄変はその名のとおり黄色~茶色、もしくは褐色のようなシミになります。

反対に濃色の地色の場合だと、薄い黄色っぽく色が抜けて見えたり、紫色に変色をすることも。長い時間が経った古い黄変ほど強い漂白が必要になるため、着物が傷みやすくなります。そのため染め直しがすすめられることが多いです。

保管中の褪色(色あせ)がある

染料の種類や色によっては、まったく着ていない着物でも保管中に褪色(色あせ)を起こしてしまうことがあります。特に緑色や紫色等の着物は、長期保管中に変質して色あせを起こしやすいです。

全体が色褪せればまだ着用はできるのですが…残念ながら、「畳んである端の部分だけ」といった一部が色あせるケースがほとんど。そのため着物にスレやシミがあるように見えます。この場合も染め直しをした方が良いでしょう。

日焼けによる色ムラがある

着用後のアフターケアの失敗、ご自宅での着物のシミ抜きの失敗等で色ムラができてしまうケースもあります。特に多いのは「日焼け」による色ムラの発生です。

「室内で干していれば着物は日焼けしない」ということはありません。直射日光がさす窓際等に干してあれば着物はすぐに日焼けしますし、カーテンの隙間から差し込む日光だけで色ムラができるケースもあります。

特に赤色の着物は日光で色が抜けやすいです。また黒留袖等も色が薄くなります。日光による日焼けで着物に色ムラ・変色シミができた場合も、染め直しによる対応が必要です。

シミの数が多い・シミの範囲が広い

シミの数が非常に多かったり範囲がとても広い場合、すべてのシミを完全に取ろうとすると着物の生地が傷んでしまうことがあります。このような場合にも、着物のシミ抜きではなく、染め直しをすすめられるケースが多く見られます。

地色が古い・色が年齢に合わない

「若い頃に着ていた着物の色がもう合わない」「シミ抜きをしてもハデな着物だからもう着ないかも」…こんな理由でシミ有りの着物を保管したままにしていませんか?

こんな時こそ、染め直しで着物の地色を落ち着いた色にしてみましょう。今の時代や気分にピッタリ合う色を選べば、着物が活躍する回数も増えます。

どの方法で染める?着物の染め直しの種類

着物のシミもカバーできる「染め直し」。でも一口に染め直し(染色補正)といっても、実はその方法には様々なものがあります。代表的な方法を見ていきましょう。

サイズ調整もできる「染め替え」

染め替え(そめかえ)とは、着物をほどいて反物の状態に戻し、洗い張り(あらいはり:水洗い)をしてから染め直しを行う方法です。最後に着物への再仕立て(仕立て直し)を行います。

一般的に「着物全体の染め直し(染め替え)」というと、この方法が取られることが多いです。着物を仕立て直すので、現在の自分の体型に合わせたり、着物を譲る方のサイズに合わせてサイズ調整を行うこともできます。

着物のシミの種類によっては「洗い張り」でシミが薄くなり、やや淡い色の染め直しでもシミが目立たなくなるケースもあります。

リーズナブルな「丸染め」

丸染め(まるぞめ)は、着物をほどかず、丸のままの状態で染め直しを行う方法です。洗い張り・再仕立ての工程が無いため、着物の染め直しの料金価格が安く済みます。

ただし裏地ごと一色に染めるので、胴裏(どううら)も同じ色に染まってしまいます。知識がある人がウラを見れば「丸染した」ということは一発でわかるでしょう。

なお丸染めは、染色補正の店舗によっては行っていないこともありますのでご注意ください。また着物のシミの状態・染める色によっては「丸染め」だとシミがキレイにカバーできないことがあります。

シンプルに染める「色揚げ」

色揚げ(いろあげ)は、元の色を抜かず、そのまま上から同系色の濃色、もしくは暗色をかけて染める方法です。着物に柄がある場合でも柄の上から色をかけるので、柄の色合いも変わります。

シンプルな染め直しの方法なので、着物の染め直しの料金は比較的安めです。

脱色してから色付する「抜染め」

抜染(ぬきぞめ)は、着物を脱色してから他の色を付ける染色方法です。色の傾向を大きく違うものにしたい場合や、できるだけ明るい・淡い色合いに染め直しをしたい場合に行います。

ただし着物のシミの状態によっては、抜染めによる染め直しではシミが隠しにくいことも。また脱色から再染色という工程の多さがあるため、色揚げ等よりは染め直しの料金は高くなります。

柄を活かして染める「柄染め」

柄染め(がらぞめ)とは、着物の柄の部分を染めずに地色だけを染め直す方法です。柄の部分には糊等をかけて、染色を防ぎます。

柄の部分には着物のシミが無く、柄を活かしたい場合の染め直しに向いている方法です。地色を濃いめの色にすることで、柄が一層華やかに引き立つというメリットもあります。

落ち着いた色合いにする「目引き」

目引き(めびき)とは、色合いが華やかな着物の全体に色を加え、渋く落ち着いた色合いにする染色補正の方法です。「柄染め」とは異なり柄部分にもすべて濃いめの色をかけるため、全体的に色合いが暗くなります。

着物のシミをカバーするのには向いている染め直しの方法です。また年齢に合わせて着物の色合いを変えたい場合にも向いています。

柄を足してカバーする「柄付け」

柄付け(がらつけ)とは、着物に新たに絵柄・模様を付け足す方法です。基本的には地色には染色補正を行わず、柄の部分のみで対応します。

落としきれない着物のシミが小さい場合や、柄の周辺にシミがある場合等に向いた染め直しの方法です。

シミのある着物を染め直しする時の注意点

着物の染め直しをする場合、以下のような点には十分に注意しましょう。

「丸染め」だと染めムラができることも

「丸染め」は洗い張りを行わない分、安くシミのある着物の染め直しができるのが魅力です。しかし手垢や油汚れ等が多く残っている着物の場合、丸染めだとそれらの汚れが染料を弾き、色ムラができることがあります。

汚れが多い着物の場合「洗い張り」をして、生地の汚れを取り除いておいた方が仕上がりがキレイになりやすいです。

「スレ」が目立つことがある

着物のシミは、染め直しを上手に行えばまったく目立たなくなることも多いです。しかし着物の「毛羽立ち」や「スレ(すりきれ)」等は、染め直し等の染色補正では目立たなくすることができません。

特に生地のスレは、濃い色に染め直すことでかえって目立ってしまうことがあります。

素材によっては染め直しできない

使われている素材や加工によっては、着物全体、もしくは着物の一部が染め直しできないことがあります。

染色補正できない素材・加工の例

・ポリエステル(ポリエステル生地、ポリエステル糸)
・金糸・銀糸
・金箔・銀箔
・刺繍(ししゅう)
・皮革
・胡粉(ごふん:貝殻を使った白色顔料)
・螺鈿(らでん:貝を使った細工)
・ガラス玉
・スパンコール等

例えば「刺繍がある部分にシミができてしまっている」という場合だと、着物のシミを染め直しでカバーするのは難しいです。

染め直し以外の料金がかかるので要注意

一般的な着物の染め直し(丸染め以外)では、「反物に戻してから水洗いし、染め直して、再仕立てをする」という工程が必要になります。そのため「染め代(染め直しの料金)」以外に、以下のような工程のための料金が別途発生します。

染め直し以外にかかる料金

・洗い張り代金(ほどき代と水洗いのための料金):平均13,000円~20,000円
・再仕立て代金(着物に再度仕立てるための料金):平均25,000円~40,000円
※料金は着物の種類や状態によっても変動します

シミのある着物の染め直し・染め替えのための「全額」がいくらかかるのか、事前にきちんと見積りを出してもらいましょう。

おわりに

着物のシミを染め直しでカバーする方法はいかがでしたか?地色を染め替えると、着物はまったく新しい製品のような印象に変わります。「シミがあるから着られない」と諦める前に、ぜひ着物クリーニング店や悉皆屋さん、染色補正店等に相談をしてみましょう!


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